人生、うまくいかないことばかり。だけど… 『きっと、うまくいく』(旧ブログより 2013/05/25)

いや、それでもうまくいかない場合もあると思いながら、うまくいった時のことを想像して努力をつづけることが大事。
むしろ、うまくいかなかった時にこそ、その人の人間性は決まるんだと思う。因みにボクは1つうまくいかなかったら、
すぐにみんな諦めちゃう、“人生、諦めが肝心”と思っているタイプ。だって、執着すればする分、心は苦しいじゃん?
これすなわち“色即是空空即是色”の心。ボク、仏教徒ですから。好きな女のコにメールを送って返ってこなければ、
あぁ…オレはその程度なんだな、と思ってすぐにメアドを削除します。そこでケッ、女なんてよ!とスネたりしません。
スネてる間に他の女に興味を持つ方が愉しい。それを女としては物足りないなんて言われたこともあるけど知らん!
…全然違う話になってしまった。なんかせっかくの邦題を腐すようなことを書いている感じだけど、別にそうじゃない。
ズバリ傑作だったし、昨今の流行り歌にアホみたく溢れる「自分を信じて」なんて風に訳されないでホントよかった!

まぁボリウッド応援団長の我らがオーケンによれば決め台詞の訳は最初「兄弟、すべってよーし」だったそうだけど、
現在、公開中の『きっと、うまくいく』は、インドで歴代興収ナンバー1を達成したのをはじめ、世界中で大ヒットした、
感動の友情ドラマ。最近ようやくこうしたインド映画のヒット作が日本にも素直に入ってくるようになってうれしい限り。
インドの超難関理系大学で学ぶ↓写真の3バカトリオを主人公に、過去と現在を行き来する本作のテーマはズバリ、
今の日本じゃ想像もできないインド式超学歴社会への警鐘。とはいえ説教臭さはなく映画は笑いと涙のメガ盛りで、
友情の尊さや、自分らしく生きることの大切さをストレートに訴えてくる。いつもより歌とダンスを控えめに感じたけど、
テンションはやっぱり高く3時間弱全然飽きない。「♪ア~リズウェル」って「オール・イズ・ウェル」って言ってたのネ。
うまくいく…か。もっと軽い訳の方がよかったんじゃないかな? 近江商人の「三方よし」とか?(それじゃ意味が違う)

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インド最大の競争社会は映画界じゃ?

『きっと、うまくいく』(2009年・インド/カラー/5.1ch/170分)
【監督】ラージクマール・ヒラニ
【出演】アーミル・カーン、カリーナ・カプール、R・マーダヴァン、シャルマン・ジョーシー
【配給】日活
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】シネマート新宿2
【鑑賞料金】1,000円(会員デー)

映画みたいに印パの関係もきっと、うまく…いってほしい 『PK ピーケイ』

噂に違わず面白かった!…けど、今再びインドとパキスタンの関係が悪化し、
それがついに両国の映画界にまで及んでいる現状を考えると最高にハッピーなラストもちょっと複雑…。
でもまぁそれはともかくこういうインド映画がヒットするのは本当によろこばしい。
地球へやって来たものの宇宙船のリモコンを盗まれ帰れなくなってしまった宇宙人pkが、
みんなが拝んでいる神様に自分も頼んでリモコンを返してもらおうと奔走する物語。
ところがpkは無垢だから神様にもいろいろあることやそれぞれを信じる人々同士の微妙な関係などいっさい知らず、
結果ズケズケと宗教の矛盾に喰い込んでいってしまうのだ。
なにしろそんな日本人には想像もつかないストーリーがダイナミックで圧倒的!
映画はそんなpkと、留学先の海外でパキスタン人の恋人を失った傷心を抱えつつも、
pkをTVに出演させインチキ宗教家と対決させようとするインド人の女性TVマンとの交流を軸に進んでゆく。
一見はおバカなコメディを装いながら宗教のタブーに真正面から切り込む勇気はさすがインド映画!
pkがインチキ導師をねじ伏せるシーンは痛快かつ深淵の極みで、
彼が説く真の信仰のあり方は神の名の元に行われる不毛なテロをも徹底的に非難する。
その後に訪れる愛のクライマックスも他の国の映画ならえぇ~!?って感じだけど、
しかし本作の場合あの2人の関係にこそ印パ友好への願いが込められているから素直に感動。
逆にpkのジャグーに対する無償の愛はまるで古典映画のようでカセットテープのオチはちょっぴり気恥ずかしくもグッとくる。
ただ、『きっと、うまくいく』もそうなんだけどこの監督の映画はちょっと筋立が数学的すぎるというか余白に“詩”を感じないため胸をガッサガサに揺さぶられるという感じとは少し違うのが個人的にはもう一つ。
だけどこんな壮大な物語はインド映画にしか創れないしとにかく賑やかで2時間半全然厭きなかった!(800字)

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『PK ピーケイ』(2014年・インド/カラー/シネスコ/153分)
【監督】ラージクマール・ヒラニ(『きっと、うまくいく』)
【出演】アーミル・カーン、アヌシュカ・シャルマ、スシャント・シン・ラージプート、サンジャイ・ダット、ボーマン・イラニ
【配給】日活
【5段階評価】
【鑑賞劇場】YEBISU GARDEN CINEMA
【鑑賞料金】ポイント鑑賞い

そしてキアロスタミはつづく… 『シーリーン』&『10話』@「キアロスタミ全仕事」

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「キアロスタミ全仕事」

[2016年10月19日(水)‐27日(木)]@ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,000円(会員)

『シーリーン』
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いやもう案の定寝ちゃったけどそれは夜勤明けにつき寝ていなかったからで、
聞きしに勝るとんでもない映画だった。
“シーリーン”とは12世紀のイランの詩人ニザーミーによる悲恋ものの古典叙事詩らしく、
本作はなんとその映画化を客席で鑑賞している114人の女優の顔をひたすら映すだけという究極の実験映画。
とはいえいかにもみな確かに映画を観ている風だけどどう観てもそれはそういう態(てい)でつまりは全部お芝居。
泣きの場面らしいところじゃ誰もが涙するワリに聴こえてくる台詞や音はどうにも安っぽい。
でも、そんな女優の顔だけで90分を保たそうってんだからその発想には驚くばかりだし(しかも114人てキミ!)、
イラン映画にはお国柄いろんな“縛り”があるというのは周知の話だけど、
逆にそのオカゲでこんなブッ飛んだ前衛的作品を名のある巨匠が創っちゃうんだもの創作における自由とは果たしてなんなのかを心底考えさせられる。寝たけど。

『シーリーン』(2009年・イラン/カラー/92分)
【監督】アッバス・キアロスタミ( 『トラベラー』 『友だちのうちはどこ?』 『ホームワーク』 『クローズ・アップ』 )
【出演】ニキ・カリミ、ゴルシフテ・ファラハニ、ジュリエット・ビノシュ
【5段階評価】★★★☆☆

『10話』
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凄いなぁ。これがドキュメンタリーではなく“ドラマ”だなんてそれじゃ普段観ているドラマはいったいなんなのか?
DV撮影がもたらしたフットワークの軽さがキアロスタミ監督の作風にマッチするのは当然の理だと思うけど、
なによりその映像的趣向に引っ張られることなく語られるものこそがちゃんと面白いからつい見入ってしまう。
イランの首都テヘラン。1人の女性の運転する車に(タクシーかと思ったら違った)、
彼女の息子や妹や友だち、
見ず知らずの老婆や娼婦や結婚を間近に控えて悩む女性が次々と乗り込んできては様々な会話を繰り広げる。
設定だけなら今や誰でもマネできそうだけど、
それが映画として面白くなるか否かはやはりセンスと作家性。
饒舌な会話からちゃんと人物それぞれのドラマが浮かび上がりやがてそれがイランの今へと結びつくのだ。
真っ暗な車内で交わされる娼婦との会話はまるでサスペンスの雰囲気を醸し初めて見るイランの姿…。
逆に息子(役)アミンくんのエピソードは心から愉しくこれぞイラン映画の真骨頂!
ホントに面白かった。傑作。
追悼ということもあるだろうけど平日でも満席だったし、
本当にキアロスタミ監督は偉大でした。あらためて、合掌…。

『10話』(2002年・フランス=イラン/カラー/94分)
【監督】アッバス・キアロスタミ( 『そして人生はつづく』 『オリーブの林をぬけて』 『桜桃の味』 『風が吹くまま』 )
【出演】マニア・アクバリ、アミン・マヘル
【5段階評価】★★★★☆2