2017年1月鑑賞映画メモ(13作品)

①『フィッシュマンの涙』(1/1)

新年1発目。お正月らしく奇抜で賑やかそうな映画を…と思って選んだんだけど
意外としんみりしちゃったし、オフビートなテイストゆえ賑やかでもなかった。
製薬会社の治験仕事の副作用で半魚人と化してしまった青年をめぐる騒動から
日本にも通じる韓国社会の歪みが浮かび上がる、不条理系ブラック・コメディ。
ビジュアルは映画らしく奇抜でもさすが製作総指揮イ・チャンドン監督だから
テーマは極めて社会派でフザケた感じはなく、作品自体の好感度はかなり高め。
でも、韓国映画にしてはサッパリしすぎな感もあり正直喰い足りなさは否めず。
どことなく『pk』とカブる印象もあったかな。いずれ韓国映画には今年も期待!

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シネマスコーレの元旦恒例(?)サービスで
お汁粉をいただきました!美味しかった!

『フィッシュマンの涙』(2015年・韓国/カラー/シネスコ/92分)
【監督】クォン・オグァン
【出演】イ・グァンス、パク・ボヨン、イ・チョニ
【配給】シンカ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】シネマスコーレ(名駅)
【鑑賞料金】1,000円(映画サービスデー)

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②『疾風スプリンター』(1/7)

もう満腹…。役者もスタッフも命懸け。それに較べたら自分にできることなんて
熱き彼ら映画人たちをリスペクトして2時間オシッコを我慢することぐらいだ!
自転車ロードレースの世界を舞台に若きプロ選手たちの栄光と挫折を活写した
ダンテ・ラム監督作らしく感動と昂奮おかわり無料の特盛スポ根青春ドラマ!
もうヒロインのワン・ルオダンが可愛すぎ!彼女の自転車をアシストしたい!
それがダメなら生まれ変わって彼女の自転車のサドルになりたい!(やめなさい)
年齢的に『激戦』の方が好きではあるけどレース・シーンはド迫力の一語だし
ドラマも恋と友情がテンコ盛りで気恥ずかしくも爽やかなカタルシスが満載!


東京での劇場鑑賞皮切りに相応しい
実に心が洗われる快作でありました。

『疾風スプリンター』(2015年・香港=中国/カラー/シネマスコープ/DCP/125分)
【監督】ダンテ・ラム(『ビースト・ストーカー/証人』『スナイパー:』『密告・者』『コンシェンス/裏切りの炎』『ブラッド・ウェポン』『激戦 ハート・オブ・ファイト』『クリミナル・アフェア 魔警』)
【出演】エディ・ポン、チェ・シウォン、ショーン・ドウ、ワン・ルオダン
【配給】エスパース・サロウ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】新宿武蔵野館
【鑑賞料金】1,500円(クーポン使用)

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③『人魚姫』(1/8)

リン・ユンかーわーいーいー。キティ・チャンえーろーいー。もう女優が完璧!
凄い…凄すぎる…めちゃくちゃ愉しかった!チャウ・シンチーにハズレなし!
よくも毎度毎度ここまでバカバカしい、だけど、最っ高の映画が創れるもんだ!
お腹いっぱい。七草粥でせっかく休めた胃もまるで元通りな(喰ってないけど)
笑いと涙の波状攻撃でこれ以上ムリってほど満腹必至な中華娯楽おせち映画!
もうオープニングの選曲からしてやりたい放題! 笑えるしキモイし可愛いし、
エロいしクライマックスはいきなり残酷だしだけどラストはマジで泣けるしで
なにしろあらゆる感情を心地好くくすぐられる内に94分なんてアッという間!

環境破壊や共存共栄など喜劇だからこそマジメなテーマを謳うところも好き!
中国マネーを湯水の如く使い中国を揶揄するなんてシンチーにしかできない!
まだ観ていないけどきっと話題沸騰の『ラ・ラ・ランド』を観ても自分は絶対
コッチの方が好きだって言うと思うな。それぐらい2人が歌う場面もよかった!
新春早々こんな景気のいい映画が観られるとは、こいつぁ春から縁起がいいや。
てかシンチーとダンテ・ラムとジョニー・トーの最新作がまとめていっぺんに
しかも全部新宿でやっているってよく考えたらスゲぇ景気のいい話だなオイ!
とにかく面白かった!可愛くてエロかった!早く『西遊記』の続篇が観たい!


シンチーの女優審美眼は相変わらず。

『人魚姫』(2016年・中国=香港/カラー/94分)
【監督】チャウ・シンチー(『0061/北京より愛をこめて!?』『008(ゼロ・ゼロ・パー)皇帝ミッション』『食神』『喜劇王』『少林サッカー』『カンフーハッスル』『ミラクル7号』『西遊記 ~はじまりのはじまり~』)
【出演】ダン・チャオ、リン・ユン、キティ・チャン、ショウ・ルオ
【配給】ツイン
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】シネマート新宿
【鑑賞料金】1,300円(TCG会員)

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④『壊れた心』(1/10)

主演が浅野忠信で撮影がクリストファー・ドイルでMVみたいな映像ってそれ、
90年代ミニシアター・ブーム全盛期のレイトショーか! みたいな映画でした。


浅野忠信はすっかり再全盛期ですね。

『壊れた心』(2014年・フィリピン=ドイツ/カラー/73分)
【監督】ケヴィン・デ・ラ・クルス
【出演】浅野忠信、ナタリア・アセベド、エレナ・カザン、アンドレ・プエルトラノ、ケヴィン、ヴィム・ナデラ
【配給】Tokyo New Cinema
【5段階評価】★★☆☆☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,200円(会員)

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⑤『ホワイト・バレット』(1/12)

病院という生と死が交錯する静謐な場所だからこそサスペンスが冴えまくる!
クライマックスは『エグザイル/絆』をも超え、映画史に残る銃撃戦! 大傑作!


こんな傑作がレイトショーだなんて。

『ホワイト・バレット』(2016年・香港=中国/カラー/88分)
【監督】ジョニー・トー(『過ぎゆく時の中で』『ファイヤーライン』『ザ・ミッション 非情の掟』『暗戦 デッドエンド』『フルタイム・キラー』『ターンレフト・ターンライト』『PTU』『マッスルモンク』『柔道龍虎房』『ブレイキング・ニュース』『イエスタデイ、ワンスモア』『エレクション』『エレクション 死の報復』『エグザイル/絆』『強奪のトライアングル』『MAD探偵 7人の容疑者』『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』『奪命金』『ドラッグ・ウォー 毒戦』『名探偵ゴッド・アイ』『華麗上班族』)
【出演】ルイス・クー、ヴィッキー・チャオ、ウォレス・チョン
【配給】ハーク
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】新宿武蔵野館
【鑑賞料金】1,500円(クーポン使用)

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⑥『トッド・ソロンズの子犬物語』(1/24)

トッド・ソロンズ好きにはだいたいどんな話かタイトルだけでちゃんと伝わり
知らない人は可愛い動物ものかと思わせまんまと騙す、なかなか技アリの邦題。


それにしてもいよいよアメリカもソロンズ
の映画そのまんまの救いようのない国に…。

『トッド・ソロンズの子犬物語』(2015年・アメリカ/カラー/アメリカンビスタサイズ/88分)
【監督】トッド・ソロンズ(『ウェルカム・ドールハウス』『ハピネス』『ストーリーテリング』『おわらない物語 アビバの場合』『ダークホース ~リア獣エイブの恋~』)
【出演】ダニー・デヴィート、エレン・バースティン、ジュリー・デルピー、グレタ・ガーウィグ、キーラン・カルキン
【配給】ファントム・フィルム
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】ヒューマントラストシネマ渋谷
【鑑賞料金】1,000円(TCG会員ハッピーチューズデー)

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⑦『ブラインド・マッサージ』(1/24)

五感の一つが閉ざされているがゆえに、感情がヒリヒリと剥き出しの愛の世界。
ちょいと映像が凝りすぎでムダに血生臭すぎるけど、ロウ・イエらしい野心作。


この映画を観ている内に高熱が出ました…。

『ブラインド・マッサージ』(2014年・中国=フランス/カラー/1:1.85/DCP/115分)
【監督】ロウ・イエ(『ふたりの人魚』『パープル・バタフライ』『天安門、恋人たち』『スプリング・フィーバー』『パリ、ただよう花』『二重生活』)
【出演】ホアン・シュエン、チン・ハオ、グオ・シャオトン、メイ・ティン、ホアン・ルー、チャン・レイ
【配給】アップリンク
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】アップリンクX(渋谷)
【鑑賞料金】ポイント鑑賞

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⑧『ドラゴン×マッハ!』(1/28)

凄い…凄すぎる。ラスト・バトルの尋常ならざるカタルシスもさることながら
いわゆるアクション映画の文法をいっさい無視してひたすらダークな画作りと
歪なロマンチシズムにこだわるソイ・チェンの暴走暗黒演出にお腹いっぱい!
クライマックスはマジであまりの凄さに、引きつり笑いをしながら涙が出た…。
せっかく熱が下がったのにこんなの観たら違う意味でまた熱が出ちゃったよ!


なんて邦題!ちゃんとSPL2と謳え!

『ドラゴン×マッハ!』(2015年・香港=中国/カラー/120分)
【監督】ソイ・チェン(『ドッグ・バイト・ドッグ』『軍鶏 Shamo』『アクシデント』『モーターウェイ』『モンキー・マジック 孫悟空誕生』)
【出演】トニー・ジャー、ウー・ジン、サイモン・ヤム、ルイス・クー、マックス・チャン
【配給】ツイン
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】シネマート新宿
【鑑賞料金】1,300円(TCG会員)

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⑨『アンチポルノ』(1/28)

個々の作品デンデンはともかく今さら名前も地位もあるオジン監督ばかり揃え
女性監督や無名の若手監督の1人もいない今回の“ロマンポルノ・リブート”を、
全然支持する気にはなれないんだけどそれでも本作を観に行ったのはもちろん
2016年の“人妻・オブ・ザ・イヤー”筒井真理子さんが脱いでおられるからだ!
で、今年もブレそうにない己の熟女好きをあらためて確認できたのはともかく
映画的には案の定観なくてもよかったかなと思いつつ途中まで観ていたものの
しかし、ロマンポルノといったら70年代の作品ばかりがモテ囃されがちな中で、
おそらく1人気を吐くように80年代風の狂騒的作品を撮っている園子温監督は、
実はこの企画を最も理解しているようにも思われ官能だの繊細な心理描写だの
んなもん知るか!と言わんばかりの傍若無人なやりたい放題ぶりに最後はもう
「わかったわかった降参!」という感じで、拍手したい気持になってしまった。
まぁ、基本的にはこの監督らしく露悪的かつ幼稚な内容でつまんなかったけど。
真理子さんも素晴らしかったが主演の子もい~体をしていらっしゃいました♪


美魔女なんて安っぽい言葉もフッ飛びます。

『アンチポルノ』(2016年・日本/カラー/5.1CH/ビスタ/78分)
【監督】園子温(『俺は園子温だ!』『自転車吐息』『性戯の達人 女体壺さぐり』『自殺サークル』『Strange Circus 奇妙なサーカス』『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』『恋の罪』『地獄でなぜ悪い』)
【出演】冨手麻妙、筒井真理子、不二子、小谷早弥花、吉牟田眞奈、麻美、下村愛、福田愛美、貴山侑哉
【配給】日活
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】新宿武蔵野館
【鑑賞料金】1,500円(クーポン使用)

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⑩『沈黙-サイレンス-』(1/29)

もうぐったり。キリスト教の話なのに描かれるのは無間地獄とはこれいかに?
真の信仰やそれに基づく愛とは何か? 人間や社会っていったいなんだ…?と、
深々考えさせられるとともにお上の徹底したキリシタン弾圧の用意周到ぶりと
残酷絵巻にド肝を抜かれるスコセッシ監督面目躍如の拷問映画の金字塔にして
これぞホントの「日本スゴイ」映画!? 2時間半ひたすら地獄だった…。疲れた。


俳優・塚本晋也ここに極まれりの感。

『沈黙-サイレンス-』(2016年・アメリカ/カラー/162分)
【監督】マーティン・スコセッシ(『アリスの恋』『タクシードライバー』『ラスト・ワルツ』『レイジング・ブル』『グッドフェローズ』『ケープ・フィアー』『カジノ』『クンドゥン』『救命士』『ギャング・オブ・ニューヨーク』『アビエイター』『ディパーテッド』『シャッター アイランド』『ヒューゴの不思議な発明』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』)
【出演】アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライヴァー、浅野忠信、窪塚洋介、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ、リーアム・ニーソン
【配給】KADOKAWA
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズスカラ座(日比谷)
【鑑賞料金】ポイント鑑賞

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⑪『感じるつちんこ ヤリ放題!』(1/31)

小袋良男です! 誰だよあの役演じた新劇の役者みたいな人? あー面白かった!
『ロブスター』や『マジカル・ガール』よりよほどシュールで人を喰っていて
ロジャー・コーマンよりチープなキテレツ珍獣艶笑喜劇。(どんなジャンルだ?)
予測も深読みもいっさい拒否して、観る者を心地好く諦めの境地に誘う怪快作。
ヘタな作家風情が撮ればそれこそシュールでしょ?みたいな狙いが透けて見え
イライラしそうなところをまんまとスリ抜ける、これぞいまおか演出の真骨頂。
涼川絢音の浮世離れした雰囲気も作品の世界観とマッチしていて配役の勝利!
テーマなんてきっと何もないけど窮屈な世を生き抜くヒントが本作にはある!?


今やピンク映画に必要不可欠です。

『感じるつちんこ ヤリ放題!』(2016年・日本/カラー/70分)
【監督】いまおかしんじ(『たまもの』(原題:熟女・発情 タマしゃぶり)『かえるのうた』(原題:援助交際物語 したがるオンナたち)『おじさん天国』(原題:絶倫絶女)『白日夢』『ゴーストキス』『若きロッテちゃんの悩み』『UNDERWATER LOVE おんなの河童』『川下さんは何度もやってくる』『つぐない 新宿ゴールデン街の女』『妻が恋した夏』『帰れない三人 快感は終わらない』)
【出演】涼川絢音、安野由美、月本愛、伊藤清美、櫻井拓也、二ノ宮隆太郎、守屋文雄、松永祐樹、松原正隆、岡田智宏、川瀬陽太、佐藤宏、内藤忠司
【配給】OP映画
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】上野オークラ劇場
【鑑賞料金】1,600円(3本勃)

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⑫『いくつになってもやりたい男と女』(1/31)

これは、ポレポレ東中野で2008年に『たそがれ』の題で観て以来。泣けたぁ~。
ロマンポルノ・リブートもいいけれどやっぱりボクは今やメインストリームの
ロマポより“この映画の世界の片隅に”細々と咲くピンク映画のペーソスが好き。
この味わいが、リブートには感じられないピンク映画独特の世界観なんだよな。
昨年の『夢の女』にも並ぶ老いらくの恋を絶妙なユーモアと粋で描いた傑作!
主人公のフナやんが「お○こ触って」という病床の奥さんの最期の女の望みを、
唇を噛みながら叶えてあげるシーンに涙々…。最近はこういうのにホント弱い。
これこそ上野オークラ劇場のお客さんたちにぴったりのピンク映画だと思う!


ピンク版『人生フルーツ』!(ウソ)

『いくつになってもやりたい男と女』(2007年・日本/カラー/64分)
【監督】いまおかしんじ
【出演】多賀勝一、並木橋靖子、速水今日子、吉岡研治、小谷可南子、福田善晴、高見国一
【配給】新東宝映画
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】同上
【鑑賞料金】同上

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⑬『昼下がりの教室 教壇に立つ女(原題:高校牝教師-汚された性-)』(1/31)

突飛な設定やユーモアがまるでない分、監督の基本的な巧さがよくわかる佳作。
というワケで今回のいまおかしんじ監督特集は実に見事な3本勃でありました。


こういう女優さん今は何してるんだろう?

『昼下がりの教室 教壇に立つ女』(2001年・日本/カラー/60分)
【監督】今岡信治
【出演】仲西さやか、鈴木敦子、武田まこ、河合誠、田島英治、藤木誠人、伊藤猛
【配給】エクセス
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】同上
【鑑賞料金】同上

極私的・2016年鑑賞映画ベスト10

『インサイダーズ/内部者たち』

す、すごい…面白すぎる!!! ビョン様最高! いや、これからは敬意を込め“ビョン兄貴”と呼ばせてください!
昨年末に 『ベテラン』 を観て以来今年は年初から三隅研次にかまけ久しく韓国映画のことなど忘れていたけど、
2016年も世界でいちばん熱く燃え滾るような面白い娯楽映画を見せてくれるのはやっぱり隣の国かもしれない!
方やなり上がり、方や復讐を狙うドン底の検事とヤクザが手を組み巨悪に立ち向かうなんてなんと最高な物語!
最後の最後までハラハラする精度の高い脚本、顔の脂汗がコチラへ飛んできそうなほどギラギラした登場人物、
そして、過激ながらも抑制の利いたバイオレンスと突然炸裂するユーモアと生唾を呑むお色気の絶妙な匙加減。
ウ・ミンホなんて監督今回初めて聞いたけど、この緩急自在かつ腰の据わった天才的語り口はただ者じゃない!
イ・ビョンホン(いや!ビョン兄貴!)が名優なのはわかっていたがここまで彼の芝居に惚れ惚れしたのは初めて。
現実的にはどうにもならない歪んだ社会に対する熱い怒りを胸のスカッとするエンタメに昇華する、これゾ映画!
ついに現れた今年のベスト10候補! なにしろ傑作! 『生き残るための3つの取引』 『新しき世界』 の次はこれ!
あのヘドが出るなんて生易しいレベルじゃない権力者ドモの“チ○コ酒ゴルフ”は園子温監督が絶対マネしそう?
でも、ちょっとやってみたい。(よしなさい!) はぁ~ホント面白かったぁ~。(虚脱感…) 韓国映画はやっぱいいゼ。

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『ソング・オブ・ラホール』

もう最高! ボクがその昔、インドはシク教の聖地アムリトサルからワガ・ボーダーを越えラホールを訪れた時は、
とにかく、あの街は旅行者を狙った泥棒が多いらしいから気をつけろ!というのがバックパッカー間の約束事で、
しかし実際は決してそんなことはなかったんだけど、それよりもっと芸術の街だということを教えてほしかったな!
これはまさしくパキスタン版 『アンヴィル』! 伝統音楽に愛と人生を捧げてきた夢を諦め切れないおじさんたち!
本作は、“音楽は罪”と解釈する極端なイスラーム主義政権や、タリバンの影響で身の拠り所をなくしてしまった、
パキスタンの古典音楽の音楽家たちが、もはや瀕死寸前の伝統音楽を守るべくそれなら世界へ打って出ようと、
音楽的共通点の多いジャズに挑み奇蹟のNY公演を果たすまでの軌跡を追った音楽ドキュメンタリーの大傑作!
彼らがYouTubeに挙げたジャズの名曲「テイク・ファイブ」のカバーを聴いてしまったらもう、この映画の虜も同然。

それにインド、パキスタンを知る身としちゃシタールやタブラの音色を聴いただけでうれしくなってしまうんだけど、
どこを切ってもスーパーテクニシャンとは思えない“サッチャル・ジャズ・アンサンブル”の面々の味のある風貌と、
聴いた瞬間、目が点になる超絶的演奏とのギャップが最高でゆえにその不遇な音楽人生にも感情移入しまくり。
そしてそんな彼らがNYに往ったはいいもののビッグバンドとのリハが少しもうまくいかず(とてもシビアな舞台裏)、
さァどうなるのかと思ったら…もう“神が降りる”とはこんな時にいうんだとしか言いようのない、完璧な大団円…。
プロだねぇ~。さらには公演を大成功させ故郷へ帰ってからの彼らの姿がまた地味でいじらしくて涙ポロポロ…。
世界中が「分断」に向かいつつある今だからこそ、異なる音楽が愛し合い奏でるメロディには大きな意味がある。
とにかく必見! しかも9月にはサッチャルが初来日! 東京にいながらラホールへ往けるとはなんと贅沢なんだ。

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『歌声にのった少年』

ムリだ…堪えられなかった。劇場でこんなに泣いたのは久しぶり。お客さんが少なくてよかった。(よくねぇだろ!)
「世界は醜いけどあなたの声は美しい」 ホントに世界は醜いけどこういう映画を観ると希望はまだ棄てられない。
2013年にエジプトで人気の勝ち抜き歌番組で優勝し、アラブの希望の星となったパレスチナはガザ出身の歌手、
ムハンマド・アッサーフの実話を描いた、珠玉の子供映画にして胸が熱くなる青春ドラマにして最高の音楽映画。
これほど希望の星という言葉が似合う人もいないってぐらい、その物語はガザの現実が酷すぎるだけに感動的。
ハニ・アブ・アサド監督の奇をてらわない演出もストレートに胸を打ち、随所に彼の地の苦難を感じさせながらも、
そこをことさらには強めずそれだけはホントのアッサーフの歌声に平和への普遍的な願いを込めて説得力抜群。
クライマックスはわかっちゃいるものの当時の映像の効果も相まり実に比類なきカタルシスを体感させてくれる!
音楽で世界は変えられないかもしれないけどしかし文化は醜い現実と闘う最も強く美しい手段だと教えてくれる、
まさしく音楽つながりで 『ソング・オブ・ラホール』 と並ぶ本年ベスト入りの傑作! もう予告篇だけで涙が出る…。

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『淵に立つ』

凄い…凄すぎる。非の打ちどころがないだなんて容易に言うもんじゃないけどホントにないんだもの仕方がない。
こんな淡々としてるのに昂奮しすぎて息切れがしばらく止まらなくなるなんてとんでもない映画を観てしまった…。
ある平凡な家族の前に1人の男が現れたことでそれまでの日常が歪んでゆくというヘタをしたら退屈そうな話が、
こんなストレートに面白い超一級のサスペンスにして、胸を揺さぶられる超緻密な人間ドラマになってしまうとは。
今日びの赤裸々な映画よろしく過激な性愛描写や血がドバドバ流れるような暴力描写があるワケでもないのに、
一つ一つの場面に尋常ならざる緊張感が張り詰め、映画的磁力に溢れて一瞬たりとも目を離すことができない。
まるでカラーなんだけど昔の白黒の北欧映画や、『狩人の夜』 でも観たかと思うような後味悪くも抗い難い余韻。
今年の日本映画は確かに好調だけどここまでの映画的快感に酔える作品はまったく久しぶりという気がする…。

『クリーピー』 の香川照之さえ越える浅野忠信がなにしろ怪演で前半は彼の一挙手一投足に心を掴まれっ放し。
そして一気に時間が経つ後半も彼演じる八坂の“影”が物語を支配するかのような雰囲気で進むのがまた凄い。
ほかの役者も概ね好演ながら筒井真理子はとくによく彼女演じる章江は個人的に“人妻オブ・ザ・イヤー”決定!
とにかく、『クリーピー』 や 『葛城事件』 や 『ヒメアノ~ル』 以上にヘビーな話をある種の寓話性を漂わせながら、
赤裸々な場面をなしに描いて“何にすがればいいのかわからない”この社会の絶望感を表現しているのが偉い。
深田晃司監督の映画は初めて観たがこの人はきっと映画を徹底的に勉強した努力型の天才ではないかと思う。
ギャーギャー叫んでワンワン泣いてそれで“怒○”とか言ってるどこゾの邦画はこれを前に顔を赤らめるがよい!
単に面白い上に“業”について考えさせられるこれをベストに入れないなどもはや考えられないレベルの傑作だ。

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『この世界の片隅に』

よく大切な何かを表現する時に「かけがえのない」という言い方をするけれど
それをここまで真綿に水が沁み込むように感じさせてくれる映画は初めて…。
と言いつつ最近本作と同じ印象を得たのが山形ドキュメンタリー映画祭で観た
イラク戦争開戦前の市井の人々の素朴な日常を描いた『祖国―イラク零年』。
この映画でもかけがえのない日々が戦争に蝕まれてゆく過程が痛ましかった。
そんな風にドキュメンタリー映画を連想したのもそれだけ本作が普遍的な証。

とにかく戦争中の庶民の暮らしを肌理細かい丁寧なタッチで素晴らしく描いた
要は“それだけ”の映画かと思っていたら何もかもがそれ以上に面白くて驚き!
映画としてまずは存分に笑わせ驚かせながら日常が戦争に侵されてゆく感覚を
ここまでリアルに体感させるんだものもう本当に凄いとしか言いようがない。
のんの演技も完璧のひと言で苛酷な現実を生きる役柄との違和感が微塵もなく
もはやその声をずっと聴いていたいと思うほど映画を包み込んでいて圧倒的!

いろいろ悲しかったと思うけど、あの若さで早くもTVドラマと映画の双方に
後まで語り継がれる代表作を持っている女優なんて彼女以外に今誰がいよう?
何気ない日常の描写にこそ涙腺を刺激され、生きている実感をかみしめる…。
昨今の世界を取り巻く状況にまったく希望を感じられなくなっていたんだけど
ようやく自分にもまだできることがあるかもしれない…とそんな気になれた。
ありがとう。この歪んだ世界の片隅にこんな素晴らしい映画を届けてくれて。

しかし、昨年の『野火』も然りで、こういう映画がクラウドファンディングや
自主製作でしか創れず、またメジャーなメディアで紹介すらされないこの国が
この国の映画を取り巻く状況が悲しくて悲しくてボクはとてもやりきれない…

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『栄光のランナー 1936ベルリン』

何がオリンピック開催のメリットは国威発揚だそんな言葉今ドキ聞くとは思わなかったよオマエはナチスかボケ!
この映画でもオリンピック憲章が何を謳ってるかちゃんと言っとるだろうが豆腐の角で頭ぶつけて死んでしまえ!
もう腹立つ! …とまぁそんな気持もあったゆえかめちゃくちゃいい映画だった! 今年のベスト入り確実の傑作!
そして劇中にも登場するレニ・リーフェンシュタールのドキュメンタリー 『レニ』(これも大名作!)と一緒に観たい!
本作はナチス政権下で開かれた1936年のベルリンオリンピックで4つの金メダルを取るという偉業を成し遂げた、
アメリカ人陸上選手ジェシー・オーエンス(初めて知った)の雄姿を綴った今こそ観るべき胸アツ必至の伝記映画。
当時の緊張感漲る国際情勢と、レースの間だけは人種や地位から解放されるつまりは“10秒の自由”のために、
来る日も来る日も走り続けた彼の人生が見事相まった、まさに金メダル級のカタルシスを得られる人間ドラマだ。

映画はオーエンスと彼を支え続けた白人コーチとの友情を軸に進んでゆくんだけど、それ以上にグッとくるのが、
後半で描かれるナチズムに抵抗したがためのちに前線に送られたというドイツの走り幅跳びの選手との友情で、
そこじゃ最近話題となった“優生思想”もきちんと批判されているし、しかも最後もアメリカ万歳にはなっておらず、
80年前の話が差別や分断が当たり前と化しつつある“今”の世界の状況に向けて語られているのが素晴らしい。
正直「酷い!」っていうラストなんだけど少年との小さなやりとりがそれをわずかに救いもう涙腺は弛みっ放し…。
そして創り手が同じ映画作家としてレニに温かい共感を寄せているところも実によかった!(ぜひ 『レニ』 を観て)
そらスポーツだから1等賞目指してやるのは当然だけどそれ以上に大切なことがあるから4年に1回やるんだろ?
ホント、国威発揚なんてそんなもん掲げてやるくらいなら今からでも遅くはないオリンピックなんかやめてしまえ!

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『緑はよみがえる』

さ、寒そう…。いっそモノクロの方がよほど暖かみを感じられそうな、だけど、息を呑むほどに凄まじい映像美…。
第一次世界大戦下の北イタリア・アジアーゴ高原を舞台にイタリア軍兵士たちの苛酷な運命を描いた戦争映画。
その孤高の作家性においてまさに塚本晋也監督の 『野火』 と対をなす巨匠エルマンノ・オルミ監督の最新作だ。
直接的な戦闘シーンこそないが戦争の“地獄”とは本当にこういうものなのだろうと思わせる漆黒の静寂の中で、
ただいつ死ぬかわからない恐怖に怯える兵士たちの絶望だけが生々しく伝わってくるこんな映画は滅多にない。
先の見えない戦況に昂揚感などとっくに失せ、神も未来ももはや信じられず日に日に募るのは悔悟の念ばかり。
そして目の前の雄大な自然を見て人はようやく気づくのだ。自分たちはなんて愚かなことをやっているのか…と。

もちろん、彼らにそんな愚かなことをやらせているのは自分では決して戦場に行かない卑劣極まる権力者たち!
上映時間が76分と短めだからといって侮るなかれ。アンジェイ・ワイダと並ぶヨーロッパ最大の巨匠が醜い戦争、
そして過ちをすぐに忘れ去って同じことを繰り返す人間の愚かさに熱く静かな怒りを叩きつける途轍もない傑作。
最後に若き中尉が母への手紙にしたためる「人が人を赦せなければ人間とはなんなのでしょうか」という一文と、
監督がかつて出逢った羊飼いの「戦争とは休む事なく大地をさまよう醜い獣である―」という言葉が胸を打つ…。
本作を観た日はそのまま 『レヴェナント』 を観に行くつもりだったけどもう無理だった…。完全に打ちのめされた。
戦争に行かなくてもすむ時代に生まれて本当によかったと思う。そんな時代が決して終わらないように…。必見。

torneranno-i-prati

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『ソニータ』

ホント今年の音楽ものは傑作だらけだな。本作もまた 『ソング・オブ・ラホール』 や 『歌声にのった少年』 と並び、
音楽で世界は変えられないかもしれないけど、揺さぶることなら確実にできると心の底から思わせてくる大傑作。
ラッパーを夢見るイランに暮らすアフガニスタンの難民の少女が、女性が音楽を創ることに厳しい慣習を越えて、
自作の曲を世界に発信、ついにはアメリカへ渡るまでを追ったヘビーな話だけど希望に充ちたドキュメンタリー!
もはや生まれながらのラッパー顔に見えるその少女ソニータがスプーンをマイク代わりに自作のラップを披露し、
それに合わせてヒジャーブ姿の幼い女のコたちが愉しそうに踊るオープニングからもう心をつかまれること必定。
実はこの映画は8月の頭にNHKのBSで50分の短縮版が放送されているんだけど、そのカットされていた40分に、
世界の理不尽さや彼女がどれだけの困難と幸運を得て向こうにたどり着いたかが描かれ、何度も胸が熱くなる。

なにより本作がいいのはソニータのラップが純粋かつ抜群にカッコいいこと!(プロのアレンジを受けたとはいえ)
こんな世界の理不尽に対する怒りと祈りに充ちたラップを聴くのは初めて。(まぁ普段はラップに興味ないけど…)
ソニータの親兄弟や、イラン人の女性監督ほか彼女を支える周りの人たちとのドラマにもいろいろ考えさせられ、
排外主義が再び世界を覆いつつある今、いかにわかり合える者同士で手を取り合うことが大切かを教えられる。
ソニータの歌自体も泣けるけど、彼女の妹が姉の渡米期間が思いのほか長いと知って泣く件なんてもうムリだ!
ただ逆に彼女の存在がアフガニスタンにも知れ渡って家族が嫌がらせされないかとそれが少し心配にもなるが。
とにかく短縮版を観た時もめちゃくちゃ感動したけど全長版はもちろんそれ以上の感動! すごく勇気をもらえる。
ソニータが里帰りする件で映るアフガニスタンの風情も廃れているとはいえ旅情を煽られた。いつか旅がしたい。

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『エクス・マキナ』

90年代ミニシアター全盛期の頃だったら確実に今はなきシネマライズで半年はロングランしていたであろう映画。
いやぁーこれは面白いワ! 文句なしの傑作! どころか、久々に今年のベスト10に喰い込みそうな映画を観た!
もう、『スター・ウォーズ』 のようなタイプの作品に全然興味のないボクみたいな輩でも充分愉しめるSF映画だし、
知的だとか哲学的とかいうフレコミに身構えずとも難解さなどは皆無で“上品にいかがわしい”から絶対面白い!
ド派手な戦闘シーンもアクションもないただ人間とAIのカケヒキを描いただけの映画がこんなに面白いなんて…。
なにより、仄かな緊張感とともに全篇に漂う“エロチシズム”が素晴らしいし、スリラーとしての牽引力も確かなら、
人間の実存や感情の根源とは何か?という古典的なテーマも現代の重要な問題として深々と考えさせてくれる。
精緻な映像も無機質なものを美しく…というよりは産毛の1本1本までリアルに撮るような質感でしっとり艶かしく、
観客の安易な予想など裏切りつつも決して突き放すことなく様々な解釈を呼び起こすこういう終わり方も大好き。
娯楽性と芸術性をバランスよく併せ持った真に見事なSF映画としか表現のしようがない。本当に面白かった…!
あーボクも人里離れた山の中でエッチな体したAIと暮らしたい!(どちらかといえば痴女っぽいキョウコさん指名)
そして触んないけど“表情より下心を読み取ってもらってそれを言葉に出してもらうプレイ”を毎日したい!(変態)

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『夢の女 ユメノヒト』

40年間、精神病院に入院していたものの震災で避難している内にとっくに完治していたことがわかった男・永野。
浦島太郎状態の彼はしかしただ1人忘れずにいた“初めての女性”に逢うため彼女の避難先の東京に向かう…。
『バット・オンリー・ラヴ』 で奇蹟の監督復帰を遂げた佐野和宏監督、もう1本の作品は大人の官能ラ“ヴ”ロマン。
もう大当たり…。『乃梨子の場合』 の監督なのである程度信頼はしていたけどよもやこれほど素晴らしいとは…。
なんとロマンチックで、人生の侘しさ、やるせなさに充ち、しかし切なく胸の温まる珠玉のラヴストーリーだろう…。
原発事故云々がストーリーに込められているのでそこがネックかと思っていたがそんなのはまったく杞憂だった。
むしろ、震災以降のこの国に漂うどこかオカしな空気をこんなに巧く物語に託した映画は稀なんじゃなかろうか?

もうファースト・ショットから胸がキュンとしてヤバイと思っていたけど、永野と西山真来が彼の駅で別れるシーン、
そして、初めての女性と再会してからの故・伊藤猛が“特別出演”を果たすカラオケのシーンでもう涙ボロっボロ。
2人がラブホテルの1室で想い出を作り変えるシーンの長回しは、マジで邦画史に残る屈指の名場面だと思う…。
どこか諦めを湛えながらもそれでも「人生は悪くない」と静かにしめ括るラストにコチラこそ心から「ありがとう」だ。
なにしろ一つ一つのシーンが愛おしくてたまらない、これゾ映画に人生を懸けている(きた)者たちの“愛”の結晶。
くしくも今ネットで日本映画について話題だけどどうかこういう小品を観ずに邦画はレベル云々と言うことなかれ。
間違いなく今年のベスト10選出は確実の傑作。ボクはこんな映画に出逢いたくて日本映画を観続けているのだ。

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創り手の情熱と観客のエールと劇場の真心で映画はここまで壮大になる! でも… 『この世界の片隅に』短評

よく大切な何かを表現する時に「かけがえのない」という言い方をするけれど
それをここまで真綿に水が沁み込むように感じさせてくれる映画は初めて…。
と言いつつ最近本作と同じ印象を得たのが山形ドキュメンタリー映画祭で観た
イラク戦争開戦前の市井の人々の素朴な日常を描いた『祖国―イラク零年』。
この映画でもかけがえのない日々が戦争に蝕まれてゆく過程が痛ましかった。
そんな風にドキュメンタリー映画を連想したのもそれだけ本作が普遍的な証。

とにかく戦争中の庶民の暮らしを肌理細かい丁寧なタッチで素晴らしく描いた
要は“それだけ”の映画かと思っていたら何もかもがそれ以上に面白くて驚き!
映画としてまずは存分に笑わせ驚かせながら日常が戦争に侵されてゆく感覚を
ここまでリアルに体感させるんだものもう本当に凄いとしか言いようがない。
のんの演技も完璧のひと言で苛酷な現実を生きる役柄との違和感が微塵もなく
もはやその声をずっと聴いていたいと思うほど映画を包み込んでいて圧倒的!

いろいろ悲しかったと思うけど、あの若さで早くもTVドラマと映画の双方に
後まで語り継がれる代表作を持っている女優なんて彼女以外に今誰がいよう?
何気ない日常の描写にこそ涙腺を刺激され、生きている実感をかみしめる…。
昨今の世界を取り巻く状況にまったく希望を感じられなくなっていたんだけど
ようやく自分にもまだできることがあるかもしれない…とそんな気になれた。
ありがとう。この歪んだ世界の片隅にこんな素晴らしい映画を届けてくれて。

しかし、昨年の『野火』も然りで、こういう映画がクラウドファンディングや
自主製作でしか創れず、またメジャーなメディアで紹介すらされないこの国が
この国の映画を取り巻く状況が悲しくて悲しくてボクはとてもやりきれない…

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そして本作は女性にとても“色気”を感じる。

『この世界の片隅に』(2016年・日本/カラー/126分)
【監督】片渕須直
【出演】のん、細谷佳正、尾身美詞、稲葉菜月、牛山茂、新谷真弓、小野大輔、岩井七世、潘めぐみ、小山剛志、津田真澄、京田尚子、佐々木望、塩田朋子、瀬田ひろ美、たちばなことね、世弥きくよ、澁谷天外
【配給】東京テアトル
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】テアトル新宿
【鑑賞料金】1,300円(日曜夜割)

「芹明香は芹明香である!」関連レビュー一覧(旧ブログより)

男と女にゃあれしかないよ、芹明香バンザイ!
『狂棲時代』(2014/05/01)

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映画評論家の町山智浩さんは、ミシェル・ロドリゲスをして「あたい」という一人称が最も似合う女と仰っていたけど、
日本でこの一人称が最もしっくり来る女優といったら(元から日本語だし)やっぱり彼女、芹明香じゃないかと思う―。
そして「男と女にゃあれしかないんよ」なんて明け透けな科白を呟いてカッコよく様になるのも芹明香ぐらいだと思う。
とはいえ彼女がどの作品かで自分のことを「あたい」と呼んでたかについては憶えてないし(呼んでたと思うけど…)、
だいたいボクはこの頃の女優といったらやはり彼女よりも片桐夕子とか山内絵美子が好きなら(要するに巨乳好き)、
なにより何を隠そうボクはつい最近まで彼女の名前を“めいか”ではなしに“あすか”だとばかり思ってたクチなので、
つまりそんなには個人的に思い入れのある女優じゃないんだけど、しかし彼女の出演作にロマンポルノを語る上で、
欠かせない傑作や名作が多いのは周知の事実。どうしてボクは彼女の名を“あすか”だと思い込んでいたのだろう。

それはともかく、久々に始まったラピュタのレイト企画「わたしたちの芹明香」は、チラシのアートワークが素晴らしく、
いつもより気合の入った見開きチラシということでボクも負けじとコチラの特集にも岸田森以上に足繁く通うつもり―。
というワケで1発目に観てきたのは『狂棲時代』。日々有り余る性欲に悶々としている風間杜夫扮する予備校生が、
山科ゆりという可愛いカノジョがいながら最後までうまくやれず、父親の愛人たる司美智子や、街で逆ナンしてきた、
絵沢萠子ら熟女にハマり(気持わかる)、それでも悶々が癒されずナンパした田舎娘を無理矢理青姦しちゃうって話。
傷つき傷つけながら、でも最後はゆりとうまく行くボクにしたら羨ましい青春性長物語。明香嬢が本作で演じるのは、
主人公の友だちの同棲相手。まだロマンポルノに出始めの頃だからか、初々しさがあり、キッチンに立つ姿が新鮮。
子供を産むと言い張る時の表情がいい。娼婦やソープ嬢やストリッパー役の彼女しか知らないから実に貴重な1本。

「わたしたちの芹明香」
[2014年4月19日(土)-7月11日(金)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
『狂棲時代』(1973年・日活/カラー/69分)
【監督】白鳥信一
【出演】風間杜夫、山科ゆり、司美智子、絵沢萠子、芹明香、長弘、堺美紀子
清水国雄、しまさより、加納愛子
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞料金】800円(会員)

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まさに特出し芹明香!
『濡れた欲情 特出し21人』(2014/05/14)

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渋谷、新宿、池袋。渋谷は駅からヴェーラやユーロに行く途中、池袋は同じく駅から文芸坐に行く途中、そして、
新宿は区役所通を1本入ったあずま通の中といった具合に東京にはいまだストリップ劇場がポチポチあるけど、
今ドキのストリップっていったいどんな感じなんだろう? やっぱりここだけは昔ながらといった感じなんだろうか。
ま、昔ながらといってもボク自身はストリップなんてそれこそこの映画にも出てくる浅草の創業60年以上の老舗、
“ロック座”へたった1度行ったことがあるくらいで、あとはやはり、映画の中でしかなじみのない世界なんだけど、
AV女優をやっている方のブログを読むと時々「先日新宿のニューアートで踊りましたー」なんて書いてあるから、
もしかすればストリップ界もキャスティングだなんだにいろいろ工夫を凝らして、永続を図っているのかもしれん。
夜勤明けに早朝割引使って行ってみたいんだけどな。けっきょくもっと即物的な快楽を得られる方に走っちゃう。

というワケで高田宏治特集につづきしはコチラも連夜大入りの芹明香特集で、名匠・神代辰巳監督のレアもの、
『濡れた欲情 特出し21人』を観てきた。大入りにケして嘘偽りあらず行ったその日は初日ということもあり満席。
客席を見渡したところ若い女性も多く、このテの特集じゃ今や見慣れた光景とはいえやっぱり少しフシギだった。
今回の明香嬢は、スケコマシにコマされて東北くんだりまでストリップをやりに行く女のコ。同じく男にコマされた、
片桐夕子りんとレズコンビを組んだりお芝居しなくちゃなんないのに本気で感じてお芝居できなくなっちゃったり。
とりたてて起伏はないし劇中の夕子りん同様オシッコがしたくなって途中から映画に集中できなかったんだけど、
やっぱりこういうストリップや廓(くるわ)を舞台にした話はそれだけで風情というか今にはない情緒があってよい。
あータマにはストリップ行ってOPP(おっぱいパブ)行ってシメに風俗行くっていう豪勢な遊びがしたいもんよのォ。

「わたしたちの芹明香」
[2016年4月19日(土)-7月11日(金)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
『濡れた欲情 特出し21人』(1974年・日活/カラー/77分)
【監督】神代辰巳
【出演】片桐夕子、芹明香、絵沢萠子、古川義範、外波山文明、高橋明、粟津
號、吉野あい、宝由加里、東八千代
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞料金】招待券

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男のイキ方(逝き方)入門…
『赤線玉の井 ぬけられます』@「官能の帝国 ロマンポルノ再入門」(2007/06/07)

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日本を代表する社会派ドキュメンタリーの巨匠、
羽田澄子監督の最新作『終りよければすべてよし』は、
観た人すべてに人間の“死に方”について考えさせてくれるけど、
それとはまた別に、ボクには10代、それこそ中学生の頃から、
秘かに憧れている“死に方”というのがあったりする……。

往年のTV時代劇シリーズ、『必殺!』シリーズの中でも、
「必殺仕置人」というかなり人気の高い名作中の名作があり、
それには名優、山崎努が演じる“念仏の鉄”という男が出てくる。
破戒僧のような身なりに、表の稼業は骨接ぎ師、要は今の接骨院。
その技術を活かし、悪人の背骨を外すというのが彼の必殺技で、
それをレントゲン写真を使って表現するという発想は今見ても斬新。
そんな殺し技も相まって、鉄はシリーズ屈指の名キャラクターだった。

だけど、そんな念仏の鉄も続篇でありこれまた屈指の名作、
「新・必殺仕置人」の最終回にてまさしく壮絶な最期を遂げる。
仕置人グループの壊滅を目論む暗殺者集団に捕えられた鉄は、
肝心の右手を青く燃え盛る炎で焼かれてしまうのだ。
(そんな敵役を演じたのがこれまた名脇役の佐藤慶!)
しかし、クライマックス、鉄はその焼け爛れた右手を使い、
腹に佐藤慶のドスを喰らいながらもその背骨を外して最後の仕置をすませる。

仕置をすませた鉄はひとり、右手を懐に隠し、
隠した手で傷口を覆いながらそのまま遊郭へと赴く。
(鉄は下半身の滅法強い遊び人というキャラクターだった…)
言葉もなく、左手だけで女郎とイチャつく鉄。
彼はシリーズ通して、女は女郎しか抱かなかった。
布団の上でイチャつく鉄と女郎をカメラは天井から捉える。
やがて鉄は女を懐に抱いたまま静かに絶命し、
異変に気づいた女が叫び飛び退くところで画面はストップ。
そして無音のまま、天井からの3段階アップで鉄の死に顔が映される。

そんな鉄の壮絶な絶命シーンを平日の真夜中に独り、
TVの前で口を半開きにして見入っていた14歳のボクは、
まるで天啓を授かるように涙を流しながらこう思ったのだ。
「こ、これだ……。これが男の“死に方”だ……」と。
当然その頃はまだ童貞だったし、チ○コの皮も剥けてなかった。

もしも一度だけタイムスリップができるとすれば、
ボクは絶対、江戸時代の“遊郭(ゆうかく)”に行ってみたい。
「チョイとそこのお兄さん、寄っていっておくれよ! 安くしとくからさ!」
の声とともに格子から伸びる女郎たちの手を払いながら通りをひやかして歩く、
あれを一度でいいからやってみたいのだ。それこそがボクにとっての男の“粋”である。

ボクがチョイチョイとそのテの夜の店に行きたがるのはスケベ根性以上に、
↑に書き連ねたような憧れが原点として今も胸の内にあるからだし、
だからボクはそのテの店には十中八九単身でしか行かない。
とは言えそのテの店に行くことを自分の中で否定していた時代も20代前半の頃にはあったし、
行き始めた当初も友人連れでというパターンが多く何かとハンパじゃあるんだけど、
やはりそのテの店は男が身ひとつで出かけてナンボというのが今は常。
“何者でもない”自分を抱え街の虚空にポッカリ空いた穴蔵に吸い込まれるように、
出迎えてくれる名前も知らない女と束の間肌と肌を合わせて一期一会の交感を楽しむ……。
何があるのかわからないからこそ闇の奥に憧れる気持は男なら絶対あるハズだし、
だからそんな場所に複数で出かけるなんざ男の美学として“粋”じゃない。
まぁいくら口角泡飛ばしてこんな話をおっぴろげたところで、
ロマンもねぇ無粋な男女や映画オタクになんざ理解できねぇ話でさぁ(べらんめぇ口調で)。

ということで、ボクは映画でも“遊郭”や“赤線”を舞台にした物語が好きで、
そんな世界に男の粋や弱さ、女の哀しみや強さを見て胸がウズウズ疼くんだけど、
だからと言って女目線でそのテの世界を描いた(多分)“さく○ん”にはまったく興味がない。
名匠・神代(くましろ)辰巳のロマンポルノ時代の1本、『赤線玉の井 ぬけられます』(’74)は、
昭和33年の売春防止法の施行により廃止直前の赤線、東京の“玉の井”(東向島)を舞台に、
タフな女たちの哀歓を独特のユーモアとペーソスで粋に心地好く描いた胸に沁み入る傑作だ。

とくにここ最近、都内の単館を中心にこのテの企画が催され、
まぁボクとてもともとはこうした一般劇場で往年のロマンポルノや、
現代のピンク映画の数々に触れるようになったクチではあるんだけど、
しかし、ワリと客入りのいいこのテの企画に足繁く通うなかで、
ふと劇場の片隅でヘンな違和感を覚える瞬間がある。
それをこうして言葉で説明するのはなかなかに難しいことなんだけれど、
要は自分と他の客人とでは、スクリーンに求める“何か”に差があるような気がするのだ。

けっきょくはボクにしても人のことは言えないワケだけど、
なんかこのテの特集に通う人の中には、ロマンポルノやピンクに、
過分に“映画的なる何か”や、カルト的たる要素、
そして、“通好みな笑い”を求めて来ているタイプがやたらと多い気がするってこと。
それを悪いとは決して言わないし否定する立場にもボクはないんだけど、
しかしそれはこうした映画が放つ独特の“匂い”の本質とは若干ズレがあるんじゃないのか?

ボクはやっぱり、“エロ”が目的でポルノやピンクを観る。
手頃に女を口説くテクもなくそう何度も女を抱きに行く余裕もなく、
だけどそりゃ10代ほどじゃないにせよ30歳過ぎても悶々とすることはあり、
そんな悶々を昇華したくて女の裸や男女のカラミを見て勃起したいからエロを観る。
悶々としてるところに映像だけ観たら余計、悶々とするじゃないかと思うかもしれないが、
そこではじめて悶々を“ヌく”のに巧く機能してくれるのが映画のカタルシスというヤツなのだ。
モンモンモンモンとしつこいけどそう考えればやっぱりポルノやピンクは、
ポルノやピンクの今後のためにも専門の成人館で観るべきなのかもしれない……。
(最初からそうすりゃいいのは自分自身重々わかっているつもりなんだけど、
けっきょくナンダカンダと“いいとこ取り”のこのテの企画に頼りたがる自分も否定できず、
それに今はAVなど、セックスが世に氾濫しまくっているから、
逆説的にポルノやピンクが“映画”として認識されるようになったという背景もあるんだけど)

冒頭とは話がかなり逸れてしまったけど、
とにかく今、強く思うのは、60年代やとくに70年代には、
男のイキ方(生き方、逝き方)を教えてくれる映画やドラマが多かった。

(今やもらえるのかもらえないのかわからない)年金を当てに、
勃つモノも勃たずヨボヨボと老衰してそれでもなお生きてゆくぐらいなら、
まだまだ勃つ間に名前も知らないだけどベラ棒にイイ女抱きながら死にたい……。

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風俗のフの字もわかっていない橋下氏にこそ観てほしい!
『赤線本牧 チャブヤの女』(2013/06/01)

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くしくも橋下徹氏による一連の発言を想起させるタイムリーな映画だった。でまぁ、思うことはイロイロあるんだけど、
とりあえず従軍慰安婦云々の件はここじゃあ置いといて、ボクが彼の発言に対し、いちばんカチンと頭に来たのは、
やはりその後の米兵に“風俗を活用してほしい”と進言した件。なんかまるで、性犯罪に走るぐらいなら金を払って、
好きなことしろと言わんばかりの風俗で働く女の人を見下すような発言だし(まぁ、そんなつもりじゃないだろうけど)、
だいたいそれじゃ風俗にイク男はみんな性欲を持て余した性犯罪者予備軍と言われているみたいでホント腹立つ!
アメリカになんか謝らなくてもいいんだよ! それより全国1千万の風俗嬢に土下座して謝れ!そしてオレにも謝れ!
それはボクが時々風俗へイクのは単にどスケベだからだけど、でもそれは性欲のハケ口を求めているというのとは、
同じなようでまったく違う。ボクはあの風俗独特の空間にしか薫らない男と女の“情緒”に惹かれて風俗へイクんだ。

その情緒について説明し出すとまた長くなるから割礼モトイ割愛するけど、とにかくそんな情緒もわからないクセに、
風俗を活用しろだぁ? 北方謙三先生! 橋下徹にいつもの科白、お願いします! 貴様こそ「ソープに行け!」
そして女を学んで来い! だからあんな正真正銘のくそビ○チに昔の話を週刊誌にバラされたりするんだよ! ボケ!
ふぅ。というワケでこの、『赤線本牧 チャブヤの女』は、まさにそんな男と女の独特の情緒に胸しめつけられる一篇。
チャブヤと呼ばれる、横浜・本牧の娼館を舞台に、そこに生き、そして消えていった女たちの哀しみを綴る群像劇だ。
貧しい田舎娘からしだいに床上手の売れっ子になってゆくヒロイン・アキを演じたひろみ麻耶が素晴らしい。(体も!)
心を通わせる女按摩の助手に言う、「おっぱい見たい?」という科白につい“いつもの習慣”で大きく頷いてしまった。
橋下くんにこの情緒がわかるかな? ま、情緒だナンダと、けっきょく目クソ鼻クソにしか思われないかもしれないが。

「戦争と六人の女」
[2013年5月11日(土)-6月28日(金)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
『赤線本牧 チャブヤの女』(1975年・日活/カラー/69分)
【監督】白鳥信一
【出演】ひろみ麻耶、片桐夕子、あべ聖、芹明香、山科ゆり、二條朱美、坂本長利、小泉郁之助、絵沢萠子
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞料金】800円(会員)

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自由でも不自由でも愛は牢獄…
『白子屋駒子』&『実録おんな鑑別所 性地獄』(2013/11/26)

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9.11が起き、タリバンといわゆるイスラム原理主義が掲げる女性差別的な考えが一般にも知られるようになった頃、
当時勤めていたバイト先の女のコがチョッピリ勘違いをして「私も女は家にいればいいと思う!」などと、あまつさえ、
タリバンを擁護するようなことを言い出したもんだから、「マリちゃん(実名)は自由恋愛を前提で言っているんだろ?」
というあたりから始め、恋愛はもとより女には教育の自由すら認めないというイスラム原理がいかに誤っているかを、
ちょっと歳上だと思って高飛車に諭したなんてことがあった。ま、そのマリちゃんは美人で巨乳で人気者だったので、
そんなコが古風な女性観を持っているということは一方じゃチョッピリうれしかったんだけど(書いてるオレが差別的)。
しかし自由恋愛とはよく申しますが、自由がすぎると今度は昨今みたく、やれデートDVだのリベンジポルノだなどと、
行きすぎた話も多くなってこと“色恋”ってヤツぁけっきょく自由、不自由関係なく厄介なもんだと思うワケであります。

ということでラピュタで新たに始まった昼企画、「千客万来 にっぽん暖簾物語」の1本目、『白子屋駒子』の舞台は、
まだまだ恋愛自由度など低く、不義密通(つまり浮気)なんて見つかりゃ即死罪だった封建的思想根強い江戸時代。
本作は、江戸いちばんの材木問屋の美しき箱入り娘と幼なじみの番頭との禁じられた恋を綴った悲恋物の大傑作。
当代一の美女と言われ引く手数多ながら自分の夫は番頭・忠八のほかにない決めている駒子と、身分をわきまえ、
駒子の猛烈アプローチを必死で我慢する忠八の相思相愛ぶりがとにかく白眉で、そんな2人が、ついに一つになる、
蚊帳の件はさすが名匠・三隅研次だけあり、上品なのにエロさ抜群! もう駒子の“濡れ”具合まで伝わるかのよう。
けっきょく、不運の連鎖で駒子と忠八は引き廻しの上獄門となってしまうんだけど、それでも自分の意志を貫き通し、
惚れた男と死ねるなら…と馬上で微笑む駒子に胸は張り裂けんばかり。自分もこんな恋がしたい!と思うこと必定。

ま、ボクだったらとりあえず駒子を連れて逃げられるところまで逃げるけど。とにかく、前のめるほどいい映画だった。
一方、コチラは長らくつづいたレイト企画のラストの1本、『実録おんな鑑別所 性地獄』も、まさしく大トリに相応しい、
愛を逃れられぬ“業”と捉えたという意味じゃ上記作にも引けを取らない(いや、引けは取るかも)珠玉の傑作だった!
男のため殺人を犯したにもかかわらず、裏切られて鑑別所送りとなった梢ひとみ。力で女たちをまとめちゃいるけど、
心には今も愛した男がいる純なひろみ麻耶。そして、ゴマを擂るのが巧くズルいんだけどなぜか憎めない芹明香と、
インの3人がなにしろ魅力。梢は脱走して男にキッチリ復讐を果たし、ひろみは復讐できず男と一緒に女に刺され、
芹は2人を売ってちゃっかりと鑑別所を出所、男と腕を組み去ってゆくという、それぞれのラストの描き分けも最高だ。
くに刺されても男と死ねて本望みたいな恍惚の表情を浮かべて死ぬひろみの最期は『白子屋~』の駒子と同じ。
男たるもの、一度ぐらいこれほど女に愛されてみたいもんですな。ふぅ。というワケで、ボクはその後そのバイト先で、
トンデモない被害妄想女と付き合いまさに牢獄につながれたかのような地獄の日々を体験することになるのである。
職場にも迷惑かけて、マリちゃんにも思いっくそ不潔な目で見られたなぁ。ホント恋愛って自由でも不自由でも厄介。

「Prisoner ♀(メス) 残酷!おんな刑務所」
[9月21日(土)-11月29日(金)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
『実録おんな鑑別所 性地獄』』(1975年・日活/カラー/72分)
【監督】小原宏裕
【出演】梢ひとみ、ひろみ麻耶、芹明香、青木真知子、水沢リエ、美鈴エミ、太田洋子、高橋明、八代康二、浜口竜哉
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞料金】800円(会員)

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女教師(日活)VS.ソープ嬢(東映)!
『女教師 甘い生活』『札幌・横浜・雄琴・博多 トルコ渡り鳥』(2014/07/01)

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んー…甲乙付け難い…。女教師とソープ嬢、どちらがお好みですか?なんて訊かれたら悩みすぎて吐きそう。
それほどにボクは人妻と同じぐらい女教師という響きに弱いし、ソープ嬢(風俗嬢)はプロレスラーと同じぐらい、
この世で最も尊敬されるべき職種の一つだとマジで思っている(裸一貫で人を愉しませるという意味において)。
というワケで女教師イメクラ73分コース(電マ付き)とソープ82分コース(マットプレイ込み)を贅沢にハシゴすべく、
信じられないような豪雨の余韻で雨がシャーシャーと降りしきる中、職場からエッチラオッチラ自転車にて40分、
途中あんな雨の中を傘もなく同じく自転車で走る女性のずぶ濡れスケスケTシャツに欲情しながら阿佐ヶ谷へ。
髪もぐしゃぐしゃになる頃ようやく劇場に着き、整理券を2本分取るとどちらも同じ番号。考えることはみな同じ?
やーネー男ってみんな頭ん中が同じで! 1本目はまさしくスケベな社長さんだらけの中での鑑賞であったとさ。

ただ、特集「白鳥あかねスクリプター人生」2本目の、『女教師 甘い生活』。残念ながら、そんな面白くなかった。
身持ちの堅い1人の女教師が教頭先生に迫られたりオ○ニー盛りな3バカ生徒にオモチャにされたりする内に、
封じ込めていた女の悦びを萌芽させてしまうという、その後AVに継承される典型的シチュエーションはともかく、
いったいどんな性根はエロい女教師が出てくるのかと思ってれば、主演の女優さんがあまりに好みとは違う上、
脱げばまるでアスリートみたいに引き締まった筋肉質ボディで、ポッチャリ巨乳好きとしてはまずそこでがっくり。
それでもそこは映画なので話が面白けりゃノるんだけどさすがの小沼勝監督の演出も最後までノらずじまいか、
完全に消化不良。途中、5人の男女が「わたしの彼は左きき」をバックにオ○ニー合戦をする件は面白かったし、
主演の市川亜矢子も最後の方じゃ魅力的に見えたけど…んーこれなら、50分コースでよかったかな、って感じ。

その代わり、レアもの観たさというだけで内容自体はそれほど期待していなかった芹明香特集個人的3本目の、
『札幌・横浜・雄琴・博多 トルコ渡り鳥』は、長い間観たいと思っていたものが観られた上に予想以上に秀逸な、
まさにこれこそ青天の霹靂と言うべき1本だった。内容は芹明香演ずるソープ嬢とそのヒモの腐れ縁カップルが、
各地の色街を転々とするドラマに実演映像や本物の嬢のインタビューを絡めるドキュ・ドラマ仕立てなんだけど、
もっとこう、ソープの(秘)テクニックを山城新伍が面白オカしく紹介してゆく軽いノリの映画なのかと思っていたら、
意外とドラマ部分が女の哀感をヘビーに描いていてびっくり。しかもそれ以上にびっくりなのが当の芹明香嬢で、
ハッキリいって本企画の中でも『(秘)色情めす市場』と並べていいんじゃないかってほどのさすがのハマりよう。
こんなにソープ嬢が様になる女もいないんじゃないというぐらい絵になっていてまさに彼女の面目躍如って感じ。

観てるみなが思ったに違いない、『津軽じょんがら節』みたいなシーンからラストの列車放尿シーンにかけては、
これぞ芹明香!と拍手したくなるほど素晴らしくホントに見事な女優映画となっている。さすがは関本郁夫監督。
正直、もうちょっぴりぐらいは昭和のソープの世界に関して彫り下げてくれてもよかったような気はするんだけど、
ああした世界に生きる、または生きざるをえない女性たちへの慈しみも感じられて、いやぁー本当に傑作だった。
ただ、チラシやサイトにはタイトルに“名古屋”も入っているんだけどどうやら何かの手違いだった模様。どうりで。
そういえば名古屋のソープなんて行ったことないなー。つーかソープ自体実は数えるほどしか行ったことがない。
池袋と吉原しか知らない。なんてことを書いていたら、ローションが恋しくなってきた。面白い映画とローションは、
嫌なことをすべて忘れさせてくれる!(これ真理) 泡とローションを駆使するすべての性の天使たちに幸多かれ!

「わたしたちの芹明香」
[2014年4月19日(土)-7月11日(金)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
『札幌・横浜・雄琴・博多 トルコ渡り鳥』(1975年・東映東京/カラー/82分)
【監督】関本郁夫
【出演】芹明香、東龍明、山城新伍(ナレーター)
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞料金】800円(会員)

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nudeになれる女優原理主義!
『喜劇 特出しヒモ天国』@「銀幕ストリップ☆かぶりつかNight」(2010/10/07)

himo-tengoku

まだ名古屋でサラリーマンをやっていた若かりし頃、友人を頼って東京を訪れ、その時に浅草の老舗ストリップ、
「ロック座」へ遊びに行ったのがボクの人生初にして唯一のストリップ体験なんだけど、せっかく乏しい財布から、
小札6枚も出したんだからと、そこは恥ずかしがらず浅草は俺の庭みたいな風体のオッサンたちと仲良く並んで、
友人とほぼ最前列にて老舗らしい艶やかなショーをガッツリと堪能。ショーの細かい内容まで憶えちゃいないが、
踊り子さんと目が合うとニッコリ笑い返してくれるなど、事前に想像していたよりずっとライヴ感と親近感があって、
ひと括りに○○○とはいってもこうして観るとまさに“十人十色”ねと感心しながら心より楽しんだのを憶えている。
エロいはエロいけど基本はやっぱショーだから、観終わってモヤモヤするというよりはムシロ「面白かったァ~」と、
初めてだったし自分がチョッピリ大人になったような充実感があってその後は友人と1杯呑んで帰っただけだった。

で、話は飛んでつい先日まで、阿佐ヶ谷のラピュタでそんなストリップを題材にした映画の特集をやっていたから、
ボクは大トリだった森崎東監督の『喜劇 特出しヒモ天国』(’75)1本だけをなんとか駆け込みで観てきたんだけど、
そうしたらこれがストリップという特殊な世界に流れては消えてゆく男たち女たちの哀歓を実に見事に描いていて、
子供を作るためにストリップで稼ぎたいという聾唖夫婦の話は泣けるし、池玲子はカブりつきたいようなイイ女だし、
火事で死んだヒモじいさんの葬式の場面や芹明香のラストの表情には鳥肌が立つしで、ホント“粋な”映画だった。
ひょんな経緯から劇場の支配人になる山城新伍が後半、池玲子のヒモになるんだけど、ホテルで雪を眺めながら、
「寒いなぁ」(男)「ウん、寒いなぁ。あっためて」(女)と抱き合うシーンがことのほかよく、ホント、イイ女の裸が拝めて、
日陰に生きる男と女のアレやコレやが出てくる映画はいいよなぁ…と、あらためてウットリするような気分だった―。