ペドロ・アルモドバル監督作品レビュー一覧(旧ブログより)

新宿2丁目原理主義!
『バッド・エデュケーション』(2005/04/16)

画像観る者を心地好く酔わせる絶妙のストーリーテリングと、
映画としての完成度の高さは充分に理解できるものの、
どうしても肝心の主人公ベニグノに感情移入できなかったため
個人的にはもうひとつの印象だった前作『トーク・トゥ・ハー』。
もともと濃厚変態テイストとキッチュな色彩バクハツの作風で、
スペインのイロモノ監督と目されていたペドロ・アルモドバル監督だが、
『私の秘密の花』(1995)あたりから
奇抜な映像よりも琴線に触れるドラマ性に重点を置くようになり、
『オール・アバウト・マイ・マザー』と『トーク・トゥ・ハー』、
そして“同胞”おすぎの涙の大絶賛で見事良識派映画ファンの支持を獲得した。
ボク個人としてはやはり、かなり昔の 『バチ当たり修道院の最期』(1983)や、
欲望剥き出しの三角、四角、五角関係が笑えて面白い 『欲望の法則』(1987)、
あと足フェチ・マニア御用達の 『ハイヒール』(1991)なんかが好みなんだけれど、
もとよりこの監督の作品は、映像の奇抜さだけで映画自体は退屈なものも意外と多い。
それが最近になってドラマを中心に物語を語り出したらこれが思いのほか巧くて、
あれよあれよという間に世界の誰もが認める大作家になってしまった。
そんなアルモドバル監督待望の最新作『バッド・エデュケーション』を、
新宿高島屋にあるテアトルタイムズスクエアで。
名前のとおりここも東京テアトル系なので、水曜は入場料金一律1,000円だ。大いに利用しよう。
この劇場は、単館としては都内随一のスクリーンの大きさを誇るいい映画館なんだけど、
ただ一点座席の前後の間隔が若干キツくて、
肘掛けのカップホルダーの位置がやけに手前すぎるのが難点と言えば難点。
(また映画館にケチをつけてしまった。でもホントだもん)

映画監督エンリケのもとに、初恋の男性イグナシオが16年ぶりに現れる。
俳優と自称するイグナシオは、ふたりの寄宿学校時代の体験をもとにした脚本を持参していた。
しかし、その脚本を読み進めるうちイグナシオの素性に疑問を抱き始めたエンリケは、
脚本に隠された悲劇と衝撃の真実を知ることになる…。
今回のこの映画の一番の見どころは、なんと言ってもミステリーとしての面白さ。
話を辿ればなんのことはない2時間ドラマや昼の連ドラのような物語が、
観る者をグイグイとスクリーンに引き込む緻密でしかもわかりやすい構成と、
監督の、彼自身の自伝的要素がかなり濃い脚本に対する強い思い入れ、そして、
あまりの濃厚さに思わず吹き出しそうになるほど分厚く描かれる男同士の愛の描写によって、
感情移入できるかどうかはともかく観応え充分の愛にまつわるミステリーとして仕上がっている。
書いたとおり、登場人物の心情に共感できるかできないかは観る人それぞれだと思うけど、
熟練の域に達したドラマ運びの妙は彼の作品群のなかでも随一だとボクは思う。
原点回帰とばかりに監督面目躍如の変態テイストも随所に炸裂していて面白い。観て損はない。
やはり、男たるもの下着は真っ白なブリーフで左斜め上が基本である!(ボクはトランクス派ですが)

主演は、
主演作が次々と公開されるわりには日本での人気はコリン・ファレル級にイマイチな
ガエル・ガルシア・ベルナル。そんな、
役者魂を懸けてガンバっている彼の“ゲイ達者”ぶり(うまい!)を楽しみながら観るのも一興だ。

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 オカンとワタシと、全然、オトン
『ボルベール〈帰郷〉』(2007/07/12)

今は帰省先が名古屋の方なので、
奥飛騨の生家に足を向けることはないんだけど、
(家自体は残してあって軒先を人に貸している。“ガラクタ屋”)
数年前まで盆暮れのたびに飛騨の方へ帰っていた頃は、
やっぱり、他界してから何年が経過しても家の中に、
親父が“いる”ような気がしたモンだった……。

何かの拍子に天井がミシッと鳴ったりすると(古い家なので)、
酒呑んで上の部屋で寝ていた親父が起きる時のような感覚がしたし、
実際、死んでしばらくの間は、お袋の元を親父は何度か“訪れて”いたらしい。
それはまぁ姿を“見た”とかじゃなく気配を感じたってだけの話なんだけど、
朝、お袋が御手洗の方で顔を洗っていると、そうそう忘れるワケはない、
自分の亭主の酒&オヤジ臭い“匂い”がかなり強く漂っていたという。
言えばそれだけの話とは言え、しかし当のお袋は無性に腹が立ったらしく、
部屋に戻ると、「散々苦労させておいて、今度は化けて出るつもりか!」
と仏壇に向かってそれこそ散々、悪態をついたそうだ(仏様、大迷惑)。
その話を聞いた兄貴は「ヘンな話するな」と少々ビビッっていたけど、
ボクはなんか「それ、いい話だな」とじ~んとしたことを憶えている。

だけど、今、もしも本当に死んだ親父がボクの元を訪ねてきたら、
ボクはいったい、親父に向かってどんな話がしたいだろうか?
何か親父に聞いてほしいような胸の内ってあるだろうか?
何を考えながら、毎日毎日、あれだけの量の酒を呑んでいたのか?
まぁそれ以前に照れ臭すぎて話しかけることさえできない気がするけど(親父はシャイだった)、
30代半ばになり、最近、酒呑んでる時くらいしか人生楽しいと思えなくなってきたボクに、
先人(?)として親父は何か、適切なアドバイスでもしてくれたりするんだろうか…?

『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』『バッド・エデュケーション』で知られる、
スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督の最新作、『ボルベール〈帰郷〉』を観ていて、
ボクは母親じゃなくて(生きてるし)、けっきょく大人の男同士の会話もすることなく、
20歳の時に死んでしまった親父のことをほんの少しだけ想い出した……。
ま、上に書いた話は本篇とは関係ないと言えばまったく関係ない話なんだけど?

10代の頃、母親を火事で失くしたライムンダ(ペネロペ・クルス)は故郷を離れ、
失業中の夫と15歳の娘パウラ(ヨアンナ・コバ)のために毎日忙しく働いていた。
ところがある日、肉体関係を迫ってきた父親をパウラが誤って刺し殺してしまう。
ライムンダは死体の処理に奔走するが、
同じ頃、近所に暮らす姉のもとには、火事で死んだはずの母親が現れて……。

働けど働けど日々の暮らしは一向に楽にはならず、
かつて熱烈に愛し合った男も今やダメ亭主になり下がり、
挙句、年頃になった娘の体をいやらしい目で見るようになって、
果ては本気で手を出そうとし抵抗した娘に刺されて死んでしまうという、
そんなどんより気が滅入りそうなエピソードで始まる三代の母娘の物語を、
スペインの名匠は決して湿気っぽくは描かず、燦々と降るラテンの陽光の下、
時にユーモアさえ散りばめながらいつものようになめらかな語り口で描いてゆく。

ほとんど観ているワリにそれほどフェイバリットというワケじゃないんだけど、
やはりアルモドバルの映画はどこかミディアムな楽しさでついつい観てしまう。
基本、楽しいから臭くないし嫌じゃないし切なさもわかって時には胸にグッとくる。
なんでも最初から泣かせればいいと狙っている一部の日本映画とはえらい違いだ。

そんな、よどみのない演出、キャストの人間味、鮮やかな色彩設計、心くすぐる音楽と、
鉄板のアルモドバル・テイストで掴み出される大地に生きる女たちの生き様で、
今回も監督はモノの見事に女性客のハートをグイグイ捉えて離さない。
だけど、映画がたくましく生きる女性の歓びや悲しみを巧く描けば描くほど、
独りで観ているコチラ、男としてはそのウチなんだか申し訳ない気になってきて、
すべての女性に対し土下座して謝りたいような気にさえなってくる(謝らないけど♪)。
けっきょくみんな男が悪い。郵便ポストが赤いのも電信柱が長いのもみんな男のせいなんだ。
ボクもいつの間にか親父と中身がソックリになってきたし、恋した女を泣かせるのは嫌だから、
ボクはまだまだ結婚できないし結婚したいなんて思わないんだ(ウソ。まだまだ遊びたいだけ)

あたかも上質なミステリーのように小気味好いドラマの果てで、
やがて目の前に現れた母が愛する娘に明かす“女の秘密”とは…?
クッキングペーパーに血がジュワ~と滲んでゆく様子を捉えるあたりなど、
悪趣味をアートに見せるワクワクするようなショットもいくつかあるものの、
かつての変態性はすっかりなりを潜めアルモドバルもマトモになってしまったが、
とにかく手堅く楽しめる、本作はペドロ・アルモドバル版“独占!女の120分”的な佳作。

ただ、下世話な男目線としては物語そのものよりなによりも、
大きくて真っ黒な瞳に思わず吸いつきたくなるようなエッチな唇、
そしてお願いだから埋もれてそのまま窒息死したいほど豊かな胸元も露わに色気全開の、
ペネロペ・クルスのセクシーさにウットリするだけでも入場料を払う価値はゼッタイに大アリだ!

volver

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O型の血に響くラテン映画二本立!
『抱擁のかけら』(2010/02/27)

よくA型は農耕民族の血、B型は遊牧民の血、そしてO型は確か戦士の血だなんて風に言われ(AB型は何?)、
日本人にイチバン多いのがA型というのは知られた話なんだけど、たかが血液型で…という意見も確かながら、
しかし日本人にA型が多いというのはなんか納得できる話だし、B型が遊牧民というのも実にいい喩えだと思う。
で、なぜ○○民から急に戦士なのかはともかく、Oが戦士というのは要は“血の気が多い”という意かと思われ、
そこでボクはO型なんだけど、一見穏やかそうな人間に見られながらその実確かに、ボクは元々血の気が多い。
まぁそれは裏を返せば単純て意味なんだろうけどなるほどボクは単純だしそれは映画の嗜好を見ても明らかで、
そして単純だから、たとえばA型の人と話していると「そんな細けぇコトどーでもいいじゃんよ」と思うことは多いし、
逆にBの人は考え方が広くて(ツッコミやすいけど)面白ぇな、と思うことが多い。そらAとBは合わんて言われるワ。

で、次にO型男性から血液型で異性を見ると…って話で、まぁ性格が云々なんて話は面白くないからいいとして、
ボクはここ何年ずっとカノジョもいないから独り身の侘しさを紛らわすためにタマ~にエッチなお店にイク時があり、
なかなか人に理解はされないものの、ボクはそんな遊びだって映画や音楽と同じ基本はライヴと思っているから、
コチラが“コール&レスポンス”の精神で臨めばいかな相手でも楽しめる、楽しみ合えるものだと思ってるんだけど、
しかしそういう一期一会の相手でも、時々いやァ~このコは打てば響くな、今日はホントに“いい試合”だった!と、
握手さえしたくなるような人に当たる時がありそしてそんなコに限って訊くとフシギなほどO型だったりする(ホント)。
前に何かで、O型は割り切り上手なら、エッチをスポーツ感覚で捉える傾向があるなんて読んだことあるんだけど、
確かに腑に落ちるところがあり、まぁ割り切り上手は…だけどエッチなんて基本はスポーツみたいなモンだと思う。

…と、冒頭から16行も費やしてけっきょく何が言いたいかといえば、O型女性とはエッチの相性がいいという話で、
だからこんなA型の多い日本より、イッソO型ばかりの南米に生まれれば楽しい人生だったかもしれないなぁ~と、
もちろんそんなこと本気で思っているワケはないんだけど、独り身が長くて毎日毎日があんまり寂しいモンだから、
O型の多いラテン圏の映画をつづけて観たついでにこんな切り口でその寂しさを嘆いてみたかったっていうしだい。
だけど、その内の1本、スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督の『抱擁のかけら』(なんだこの邦題?)を観たら、
開巻いきなり盲目の男性が大~きなオッパイのブロンド美女とラテン系の情熱的なエッチをするという場面があり、
どんな関係なんだろ…?と思っていれば、道案内をしてもらったついでにソッチの案内もしてもらったという話らしく、
そんな簡単に事が運ぶのか!?と、やっぱラテンだよなぁ~と憧れてしまった(でもスペインはA型が最も多いんだと)。

というワケで『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール』のアルモドバル監督最新作は、
上にも書いた通り盲目の男性が主人公のドラマなんだけど、ハリー・ケインという名で脚本家をしている彼の元に、
ある日、記憶から消したハズの人物の息子が現れたモンだから、彼は一度は封印した過去と向き合うことになる。
14年前、彼は、マテオっていう本名で映画監督として活躍していたんだが、新作映画のオーディションで出逢った、
ペネロペ演じる女優志願のレナと激しい恋に落ち、ところがレナには70を過ぎて嫉妬深い上に超が付く絶倫という、
じじぃのパトロンがいたために散々恋路を邪魔されて、挙句2人の愛は、悲劇的な結末を迎えていたのだった……。
かつて、視力とともに大きな愛を失った1人の映画人が、その苦しみや過去から解き放たれるまでを描いた物語で、
正直、話はどーでもよかったんだけど、そこがこの監督の名匠たる由で、見せ方が巧いからソツなく楽しめてしまう。

マドリードを舞台にした2008年と1994年、それぞれのドラマを巧く絡ませながら映画はあたかもサスペンスの体で、
監督自身が今までに手掛けてきた女性映画を思わせる劇中劇をラストでまんまと活かして絶妙な余韻を残すなど、
ガッツリ腹持のする愛憎劇と映画にまつわるアレコレが1本で同時に楽しめてしまう本作は映画と愛に関する寓話。
その、ラテンチックで密度の濃ぃ~愛憎劇は滑稽でもあり、とくに、絶倫じじぃのレナに対する執着ぶりは奇々怪々、
読唇術の件は笑わせようとしているとしか思えずだけどそのコミカルとシリアスのメリハリが相変わらず抜群だから、
コチラには縁のなさそうなどーでもいい話でもつい乗せられるし、フツーに、「いい映画を観たなぁ~」と思えてしまう。
冒頭のブロンド美女も素晴らしいけどペネロペのまさに垂れを知らぬ美乳はもう国宝級で、彼女を観に行くだけでも、
充分に元は取れるし、隅から隅まで行き届いたその映画的サービス精神こそまさにラテンの真髄。監督何型かな?

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アルモドバル×イグレシアで今年はグラシアス!
『私が、生きる肌』@「第8回 ラテンビート映画祭」!(2011/09/20)

去年の「ラテンビート映画祭」に行った時のブログを読み返したら「来年からも行こう!」とか書いてあったワリには、
直前までまるで行く気はなかったんだけど(ど~にもバルト9が苦手で…)、気なしに、スケジュールをチェックしたら、
ワリと都合のよい日時に「オォ、これは観たい!」と思う映画の上映が組まれていたため急遽、観に行くことにした、
今年の「第8回 ラテンビート映画祭」。2作品観て1本目はティーチイン付きだったから大いに賑わっていたんだけど、
ツブラな瞳の映画祭ディレクター、アルベルトさんをまたまた見られてよかったよかった。映画配給ワークショップの、
ゲスト講師として氏の話を聞いたことが本映画祭に興味を持つキッカケだったんだが、彼の独特のキャラクターこそ、
ボクは映画祭の色としてもっとフィーチャーされるべきではないかと思う。そしてキャラといえば↑の絵の女のコこそ、
おなじみ映画祭のマスコット“ドニータ”で、今年は日本の復興を祈り美空ひばりを意識したんだという(わからねー)。

というワケで初日に観た1本目が、これまたワークショップでアップリンクの浅井さんが今年のカンヌで観たっていう、
そして権利を買おうか迷うほど面白かったよと言っていた、日本でも根強い人気を誇るスペインの世界的映画作家、
ペドロ・アルモドバル監督の新作『THE SKIN I LIVE IN』(英題)。確か浅井さんがぜ~んぶネタバレしたハズだけど、
ほとんど憶えてなかったのでガッツリ楽しむことができた。ネタバレに過敏な人いるけど人の記憶などそんなモンよ。
ただ、そんなモンとはいえさすがに一般公開もまだ先だし、確かにこれは要の部分をネタバレしちゃうとマズいんで、
細かいストーリーについてはいっさい触れない。ただ本作は公開されたら賛否両論も必至の問題作にはなると思う。
個人的にはズバリ、面白かった。予告篇だけでもその片鱗がわかる通り本作の内容を簡単に言うとしたら、これは、
殺人、凌辱、監禁、皮膚移植に性転換とあらゆる過激な要素をギッチギチに詰め込んだアートな変態怪作スリラー。

アントニオ・バンデラスが久々のアルモドバル作品出演というのも話題だけど(『アタメ 私をしばって!』以来か?)、
それよりもここ最近ずっと“女性映画の巨匠”として女性の映画ファンから絶大な支持を受けていたアルモドバルが、
まさしく原点回帰とばかりに“バチ当たり”なバッド・テイストのオンパレードを披露してくれているのが実にうれしい!
近頃のスペイン映画はなんといってもホラーが元気だし、アルモドバルもようやっとそうしたエクストリームな方向に、
今後は舵を切ってゆくということなんだろうか? もちろん、そんなエクストリームな中にも絶妙なるユーモアがあるし、
ユーモアというよりも感動すればいいのか笑えばいいのか日本人的には少々戸惑うようなラストもかなりブラックで、
とにかく、いつもみたいなドラマ的感動を期待すると大ヤケドしかねない映画だけどその分観る価値は大きいと思う。

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まさに賛否を蛇行のキノドライヴ!
『アイム・ソー・エキサイテッド!』(2014/01/30)

ひたすらマジメな映画を撮り続けた巨匠の遺作の後に超不マジメで下品なコメディを観るというのもアレなんだけど、
お次はまだまだこれからのスペインが誇る巨匠ペドロ・アルモドバル監督最新作『アイム・ソー・エキサイテッド!』。
ただ印象から今回はさすがに観なくてもいいかなぁ…と思いつつ、でもやっぱりこの監督の映画もずっと観ているし、
なにより前作の『私が、生きる肌』がかなりいい感じに頭オカしかったのでこれも印象より凄ぇ映画かもしれないと、
気を取り直して観に行ったんだけど…まぁ結果的には、やっぱりわざわざ劇場で観るほどじゃなかなったかなぁ、と。
そりゃまぁ確かにおネエの客室乗務員とキ○ガイ客らがこぞって繰り広げる飛行機コメディはかなり頭狂っているし、
それをアルモドバルの原点回帰と言おうと思えば言えなくもないんだけど、しかし反面これもやはり小手先というか、
巨匠の軽いお遊びくらいにしか思えずそれこそ飛行機に乗った時に小さいモニターで観れば充分ってな感じだった。

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でもブランカ・スアレスは好き!

文化の日に観るにぴったりの“ルーヴル美術館幻想”! 『フランコフォニア ルーヴルの記憶』短評

ロシアの巨匠アレクサンドル・ソクーロフ監督の映画を劇場で観るのは久々。
そして美術館が舞台といえば想い出すのは当然ロシアのエルミタージュ美術館
を舞台にした“90分ワンカット”に度肝を抜かれる『エルミタージュ幻想』!
だからこれももしかしてワンカットなのかとワクワクしていたら全然違った。
本作は、やはり一生訪ねることはきっとないであろうルーヴル美術館を主役に
建物が“見てきた”人類の芸術と戦争の歴史を3つの物語から紡ぐアート大作!

なんと今回はソクーロフ監督自ら出てきて(後姿だけ)ナレーションを務めるワ
狂言廻しとしてナポレオンや共和国の象徴たるマリアンヌの幽霊が出てくるワ
展示品をめぐる館長とナチ将校との友情まで描かれるワで実に意欲的な創り。
互いに殺し合いをしてるのに美術品は協力して守るだなんてなんという皮肉!
『エルミタージュ幻想』に較べてインパクトに欠ける分テーマはわかりやすい
まさに文化の日に相応しい映画だった…けどすいません実はちょっと寝てた!

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だって映像に吸い込まれるんだもの。

『フランコフォニア ルーヴルの記憶』(2015年・フランス=ドイツ=オランダ/カラー/5.1ch/ビスタサイズ/88分)
【監督】アレクサンドル・ソクーロフ(『マリア』『孤独な声』『ヒトラーのためのソナタ』『日陽はしづかに発酵し…』『セカンド・サークル』『ストーン/クリミアの亡霊』『静かなる一頁』『ロシアン・エレジー』『精神(こころ)の声』『マザー、サン』『モレク神』『牡牛座 レーニンの肖像』『エルミタージュ幻想』『ファザー、サン』『太陽』『チェチェンへ アレクサンドラの旅』『ボヴァリー夫人』)
【出演】ルイ=ド・ドゥ・ランクザン、ベンヤミン・ウッツェラート、ヴィンセント・ネメス、ジョアンナ・コータルス・アルテ
【配給】キノフィルムズ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,200円(会員)

なんだかんだ頑張れTIFF! 「第29回東京国際映画祭」

tiff2016

「第29回東京国際映画祭」
[2016年10月25日(火)‐11月3日(木・祝)]
TOHOシネマズ六本木ヒルズEXシアター六本木

①『ラブリー・マン』

今年の1本目はインドネシア映画―。小品らしくしみじみといい映画だった。
敬虔なムスリムの少女が4歳の時に別れた父親に逢うためジャカルタに行く。
でも、父親はヤクザのもと男娼として都会の混沌の中を孤独に生きていた…。
性的マイノリティやイスラームとジェンダーなどテーマ自体はかなりヘビー。
しかし映画は題材の内面には深く踏み込まず一風変わった父娘の一夜の物語を
ただ静かに見つめ続ける。ちょっと感傷的で口当たりがよすぎな気もするけど
ジャカルタの夜の風情が実に生々しく寂しげで、心優しい都会の童話みたいに
なっている。個人的にはドビュッシーよりアザーンの響きに心くすぐられた。

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『ラブリー・マン』(2011年・インドネシア/カラー/76分)
【監督】テディ・スリアアトマジャ
【出演】ドニー・ダマラ、ライハアヌン・スリアアトマジャ、ヤユ・アウ・ウンル
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ六本木ヒルズ3
【鑑賞料金】1,300円(前売一般)

②『舟の上、だれかの妻、だれかの夫』

2本目もインドネシア映画。でもコチラは『ラブリー・マン』とは少々異なり
やや作家映画的な短篇作品2本立。まずは海の美しいインドネシア東部の島に
1世紀前の不倫ドラマについて調べに来た女性とそこで出逢う青年との物語。
正直ただなんとなく観てるだけじゃ何を語っているのか全然よくわからない。
というより、ヒロイン役のマリアナ・レナタの黒ビキニの上にYシャツという
最強コンボが鬼のようにセクシーすぎて話がほとんど頭に入ってこなかった!
あれはズルい。何かのトラウマがあるワケじゃないけど監督は海が怖いらしく
そう言われるとストレートに自然の驚異を感じさせるそんな映画ではあった。

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『舟の上、だれかの妻、だれかの夫』(2013年・韓国=インドネシア/カラー/58分)
【監督】エドウィン
【出演】マリアナ・レナタ、ニコラス・サプトラ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】同上
【鑑賞料金】同上

③『ディアナを見つめて』

つづいては『鏡は嘘をつかない』(TIFFでも岩波ホールでも未見)の監督作。
そして『ラブリー・マン』では娘を演じていたライハアヌンが一児の母親役。
ある日突然夫が第二夫人を娶りたいと言い出して戸惑う女性の深い葛藤を描き
そんな慣習に真っ向から異を唱えた物静かだけど意思のくっきりとした作品。
でも第二夫人を娶るからには男は二つの家庭に100%責任を負わねばならず
最後はけっきょく喰い詰めグチばかり言うこの夫にそんな資格実はないワケで
そういう意味じゃラストは奥さんの方が実は上に立っているようにも思えた。
実物の彼女は大変美しくあんな人が妻だったらコッチこそ第二夫にされそう!

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『ディアナを見つめて』(2015年・インドネシア/カラー/42分)
【監督】カミラ・アンディニ
【出演】ライハアヌン、タンタ・ギンティン、パンジ・ラフェンダ・プトラ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】同上(上記作品と2本立)
【鑑賞料金】同上(上記作品と2本立)

④『ブルカの中の口紅』

『PK』のジャグーの妹がいつの間にやら大人の女性になっていてびっくり!
そしてコーンクナー・セーン・シャルマーがボクのいちばん好きなインド映画
『Mr.& Mrs.アイヤル』(2002)の頃とまるで変わらないことに二度びっくり!
基本的には艶笑コメディで語り口が軽快ゆえ時に吹き出しながら愉しめたけど
男としてはいたたまれない4人の女性の息苦しい日常を描くヘビーなドラマ。
タイトルに“ブルカ”と付くからにはもっとイスラーム的な話かと思っていたが
映画はより広く普遍的な女性の抑圧を描き、ブルカはその象徴的な意味合い。
タイプの違う4女性ということでレバノン映画の『キャラメル』も連想した。

なにしろ男がロクなもんじゃないんだけどかと言って男を貶めるワケではなく
4人がそれぞれ魅力的だから男でもしっかり感情移入できるのが素晴らしい!
彼女らの葛藤を自身の問題として捉える女性監督の視線はどこまでも誠実だ。
それぞれに苦難が降りかかるラストも一見重くいかにも救いがなさそうだけど
しかし“男で”幸せになったってそれを真の女性の解放とは言わないと思うので
ラストに4人集まって煙草をふかし笑い合い“何か”を共有するようなシーンは
この映画が誠の女性映画であることを示す切なくも力強い場面だったと思う。
ただインド全体の男尊女卑をブルカに集約してまた軋轢を生まないかが心配。

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『ブルカの中の口紅』(2016年・インド/カラー/117分)
【監督】アランクリター・シュリーワースタウ
【出演】ラトナー・パータク・シャー、コーンクナー・セーン・シャルマー、アハナー・クムラー
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ六本木ヒルズ9
【鑑賞料金】同上

⑤『ダイアモンド・アイランド』

これもいい映画だった。確かに全体的にはもう一歩!ってところはあるけれど
それでもついにこういう青春映画がカンボジアでも創られるようになったか…
という台湾や中国映画のニューウェーヴを観た時と同じうれしい驚きがある。
急激な経済発展の影で燻ぶるやり場なき、でも穏やかなカンボジア的青春像は
ホウ・シャオシェンやジャ・ジャンクーの初期作にも似たアジア的哀愁を醸し
元の撮影機材の問題か少し画質が悪いものの胸がキュンと鳴るよな場面満載で
リティ・パンの遺伝子を受け継ぎつつ新しい世代の息吹を感じさせてくれる。
女のコたちが妙に色っぽいのもよかった。またいつかカンボジアに往きたい!

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『ダイアモンド・アイランド』(2016年・カンボジア=フランス=ドイツ=タイ=カタール/カラー/104分)
【監督】デイヴィ・シュー
【出演】ヌオン・ソボン、ノウ・チェニック
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】同上
【鑑賞料金】1,500円(前売一般)

⑥『クラッシュ』

いわゆる“アラブの春”から2年後のカイロを舞台にした注目のエジプト映画。
2011年の革命でムバーラク政権を倒したのはいいけどイスラム主義を掲げる
次のモルシー大統領に反対する人々と支持派との軋轢で国は再び真っ二つに。
そんなデモの騒乱の中、双方の民衆が一台の護送車に次々と詰め込まれる…。
要は政治、宗教、男性、女性、様々な人が乗る護送車の中をエジプトの縮図に
その混沌をパワフルに描いた力作…ではあるんだけど正直ケレン味が強すぎて
自分たちはいつまでこんな不毛な対立をつづけるんだ!?という肝心のテーマが
少々置き去りにされていたような気がする。期待してただけにちょっと残念!

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『クラッシュ』(2016年・エジプト/カラー/98分)
【監督】モハメド・ディアーブ( 『Cairo 678』 )
【出演】ネリー・カリム、ハニ・アデル、タレク・アブデル・アジズ、アフマド・マレク、アフマド・ダッシュ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ六本木ヒルズ2
【鑑賞料金】同上

⑦『ヘヴン・ウィル・ウェイト』

素晴らしい!最後の最後にこんな傑作が観られて今年のTIFFはこれで大満足!
イスラム過激派組織の思想に“洗脳されていた”少女と“洗脳されていく”少女を
巧みに対比描きながら今やフランスのみならず世界が直面する問題を見据えた
日本も人ごとではなく今観るべき珠玉の社会派映画にして切ない青春ドラマ!
先のブルキニの話がいい例でフランスも頻発するテロを前にもはやなす術なく
結果、無意味な宗教弾圧に走るなどどんどん悪い方に傾いていっているけれど
映画は“問題はそこじゃない”と決して感情的になることなく極めて冷静沈着に
綿密なリサーチで得た少女らの体験を基にしながらその根幹を考察してゆく。

面白いのはそういう若者らの洗脳を解く活動を実際にしているムスリム女性が
本人役で出演しセラピーの過程を見せてくれること。それが実にスリリング!
そしてそこから見えるのは、問題を前にもはや無力な社会と大人たちの姿…。
最後の最後に全体像がわかるサスペンスフルな構成やゾッとする描写も見事!
社会性と娯楽性が同居していてこの監督は前の『奇跡の教室』も面白かったし
今フランスで最も注目すべき力ある作家と言ってもいいんじゃないだろうか?
こういう映画が創られる土壌がある分フランスはまだマシという気さえする。
あんな酷い政権をいまだ多くの人が盲信しているこの国の方がよっぽど心配!

というワケでチケット問題などいろいろあったが今年のTIFFは充実していた!

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『ヘヴン・ウィル・ウェイト』(2016年・フランス/カラー/105分)
【監督】マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール( 『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』 )
【出演】ノエミ・メルラン、ナオミ・アマルジェ、サンドリーヌ・ボネール、クローティルド・クロー、ジヌディーヌ・スアレム
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ六本木ヒルズ7
【鑑賞料金】同上

アトム・エゴヤン監督作品レビュー一覧(旧ブログより)

格調高く見せる今はなき“火サス”!?
『秘密のかけら』(2005/12/28)

先日、テレビ朝日で放送された「M-1グランプリ2005」。
エンタの神様」とは違って本格派だけがその出場を許されるテレ朝屈指の好番組だけど、
おそらく、ボクを含めた関西圏以外に住んでいる人たちの中で、
ブラックマヨネーズ」の優勝を予測していたという人はほとんどいないんじゃないだろうか?
ボクが彼らの漫才を見たのはまだ名古屋に住んでいる頃の話だし、
今年はこれまでの流れからいって「笑い飯」か「麒麟」のどちらかだろうと踏んでいたので、
当日外から帰ってきて、ビデオでマズ彼らの優勝を知った時には本当に驚いてしまった。
でも、面白かった。それこそ震えるほどに面白かった。
練り込まれたネタに、安定したテンポとテンション。心地好く痛快な言葉廻しに声の高低のバランス。
審査員の大竹まことが彼らを評して言った、“オーソドックスの凄さ”。
2人の漫才の面白さはまさにこのひと言に尽きるとボクも思う。
いまだに“あるある”ネタや(「レギュラー」は好きだから除外)、
飛び道具みたいなキワモノ芸人がアイドル扱いされる中で(それはそれで面白い芸人もいるけど)、
ブラックマヨネーズの言葉の面白さを煮詰めたオーソドックスな笑いが、
“笑いのプロ”たちによって最大級の評価を受けたというのは、
昨今のお笑いブームに鉄槌を喰らわすぐらい意義のあることだと思うし、
なにりそれは、お笑いばかりではなく、映画にだって言えることなんじゃないだろうか…?

凝りに凝ったMTV調の映像や、センスをひけらかそうとヒネりまくった挙句空廻りを起こす脚本とか、
もうそんな映画が“新しい才能の誕生!”だのなんだのとモテ囃されるような時代はとっくの昔に終わっている!
映像はあくまで物語を豊かにするために機能するべきであり、
シンプルにこだわった脚本こそが映画に工夫とリズムを生む。
そういう意味で、今月同日に公開された傑作2本、『愛より強い旅』と『キング・コング』は、
ジャンルとしては天と地ぐらい違えども、目指す映画的な志はまったくと言っていいほど同質である。

とまぁ、自分で書いてて相変わらず無理に感じる展開だけど、
今回の映画には2人組の人気コメディアンというのが出てくるモンだからチョット「M-1」の感想も。
でも、“オーソドックスを極める”という意味では、この映画にも同じことが言えるんじゃないだろうか?

1972年、新進気鋭の若きジャーナリストのカレン(アリソン・ローマン)が、
15年前にTVで活躍していた人気デュオ、
“ラニー(ケヴィン・ベーコン)&ヴィンス(コリン・ファース)”が解散した真の理由について探り始める。
2人に接触したカレンは、調査を進める内に彼らの意外な素顔を知り、
そのキッカケとなった、ある変死事件の真相にしだいに肉薄してゆく……。

ハッキリいって、物語の粗筋そのものは今秋ついにその長い歴史に幕を閉じた2時間ドラマ、
「火曜サスペンス劇場」、もしくは“スナック火曜サスペンス劇場”(わかったアナタは“ビバリスト”!)程度のお話で、
そんな大昔のアメリカのTVの舞台裏になんて興味もなければ、
ましてや堕ちぶれてゆく芸能人の凋落ぶりなんてコッチは知ったこっちゃない。
だけど、これを撮った監督は、
ストリップ劇場の人間模様から、雪に閉ざされた田舎町の哀しいドラマに、壮大で重厚な歴史大作、
果ては世界的チェリスト、ヨー・ヨー・マのドキュメンタリーに至るまで、
まるでカメレオンの如く変幻自在にノージャンルな題材を手掛けるカナダの鬼才、アトム・エゴヤン。
だから、一見陳腐ともとれるこんな物語も、
エゴヤン流の傑出したセンスの映像と観る者を妖しい気分にさせるまるで催眠術のような語り口で、
人間の心の暗部という“はらわた”を否が応にも引きずり出す格調高いドラマに仕上げられている。
テイスト的には、本作は監督の名を世界に知らしめた傑作 『エキゾチカ』 に最も近いと思うけれど、
いずれにせよ、どんなにノージャンルで映画を撮ったとしても、
向けられる監督の、ヘビのような視線の矛先はいつも同じ……。
そんな独特の臭気を放つエゴヤン演出に、
ベーコンとファースのネチっこい演技が相まって、なんとも言えない暗さと重さが全篇に漂っている。
だからもちろん、一方の女優からは潜在的なエロスが引き出されて、
それに応えるべくアリソン・ローマンが渾身の体当たり演技で見せてくれている“濡れ場”も本作の観どころだ。
とにかくローマンが可愛い! そしてエロい!

彼女の、どちらかといえば“ロリ顔”が不必要に醸し出すギリギリのエロさが、
ほぼ確信犯的にコチラの欲情を絶え間なく煽ってくるから、
めくるめくうちに観客はドラマの陰部に引きずり込まれ自我を失う快楽を登場人物たちと共有することになる……。
やはりエゴヤン、おそるべし!

そしてラストに感じる消化し切れないダークな後味は、
クダラナイといいながらも芸能人の離婚会見なんかを興味津々で見てさらには酒の肴にしてしまう、
ボクたちTVやスクリーンの前の観客の渇いた欲望……。

この、ハリウッドにもヨーロッパにも類を見ない、
例えばうなじをペロッと舐められてゾワッとくるような皮膚感覚のエゴヤン・テイスト。
だけど、一度味わったらやみつきだ。

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アマンダ・セイフライドがちゃんと脱いでいるだけで上出来!
『クロエ CHLOE』(2011/06/02)

そうなんですよお父さん! まぁ一方のジュリアン・ムーアはまるでカメラがないかの如く脱いでくれる女優なので、
濡れ場になれば(濡れ場じゃなくたって)今回も確実に脱ぐと安心していたものの、どーせアマンダ・セイフライドは、
現在赤丸急上昇中の若手筆頭株だし、脱ぐといったってせいぜい“下乳”か“横乳”をチラっと見せる程度だろうと、
だけどそれでもいいやと思っていたんだけどそうじゃなかったんです!(まぁムーアと較べたらやっぱ控えめだけど)
というワケで昨日の映画サービスデーに観に行ったら、もう盛りも過ぎてチ○ポも何も勃たなくなったお父さん方と、
今やすっかり乾いたゾウキンみたくなってしまった奥さん方で(メチャクチャ言ってるよね)ケッコウな盛況ぶりだった、
『スウィート ヒアアフター』『アララトの聖母』といった秀作で知られるカナダの鬼才アトム・エゴヤン監督の最新作、
『クロエ』は、ファニー・アルダンとエマニュエル・ベアールが共演した2003年のフランス映画『恍惚』のリメイクだ。

映画は、夫に浮気の疑念を抱いたある女医が、夫の雄としての本質を知るべく高級娼婦を雇ってワザと誘惑させ、
その反応を報告させるというオリジナルのプロットを踏襲しているんだけど、それ以外は、オリジナルとかなり違い、
ムーア演じる女医の静止をムシしてセイフライド演じる娼婦が夫を次々と誘惑し、彼女の日常を浸食してゆくという、
ストーカー系サイコ・スリラー風味の仕上がりになっている。で、そうしたことで話の説得力はかなり弱まっているし、
ラストも超後味が悪いので、オリジナルが好きだという人はきっとこのリメイクには怒るんじゃないかと思うんだけど、
そこはそれ。個人的には娼婦の哀しみを狂気と紙一重に描いたあたりが『エキゾチカ』の監督作っぽくて好きだし、
だいたいセイフライドを脱がした時点で「エゴヤン偉い!エゴヤン偉い!」とせんだみつお状態だった。(わかるか?)
というワケで『クロエ』は、“映画に何を求めるか”で評価がまったく違ってくるそこがエゴヤン(?)って感じの1本だ。

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とにかく、すんごいカラダなんです!

『クロエ CHLOE』(2009年・カナダ=フランス=アメリカ/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/96分)
【監督】アトム・エゴヤン
【出演】ジュリアン・ムーア、アマンダ・セイフライド、リーアム・ニーソン、マックス・シエリオット
【配給】ブロードメディア・スタジオ/ポニーキャニオン
【5段階評価】★★★1/2☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ シャンテ1(銀座)
【鑑賞料金】1,000円(映画サービスデー)

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アトム・エゴヤンのミステリ劇場へ 、ようこそ。
『デビルズ・ノット』(2014/11/20)

およそ2ヵ月に及び20本以上の映画を観てきたラピュタ阿佐ヶ谷の好評企画「ミステリ劇場へ、ようこそ。{2014}」。
ラストの1本は“戦後最大の誘拐事件”と言われた“吉展ちゃん誘拐殺人事件”が題材の(詳しくは知らないけど)、
『一万三千人の容疑者』。事件の名前を知っているのみでそれが東京五輪を挟む頃の話とまでは知らなかった。
芦田伸介が当時の主任刑事に扮し事件発生から2年3ヵ月後の最悪の結末までが重厚なタッチで描かれてゆく。
とはいえかなり昔の話だし警察の捜査があまりにも頼りないので映画としてはとくに前半ダルく観ていたものの、
映画はやがて事件より事件に人生を狂わされた人々の群像劇の態になってズッシリした余韻に浸らせてくれる。
とくに、小山明子演じる母親に事件の結末を伝えるのが最後の仕事という芦田刑事の苦渋の表情にグッときた。
というより事件の決着からたったの1年しか経っていないのにそれを映画化する東映という会社がやっぱり凄い。

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対する犯人・小原保役は井川比佐志。

一方、現在公開中の『アララトの聖母』等で知られる鬼才アトム・エゴヤン監督の最新作『デビルズ・ノット』は、
コチラは全然知らなかったんだがドキュメンタリーにもなったことがあるらしい“ウエスト・メンフィス3”と呼ばれる、
1993年、アメリカのアーカンソー州ウエスト・メンフィスで3人の児童がにわかには信じ難い残虐な手口で殺され、
挙句、およそズサンとしか言いようのない警察捜査で3人の若者が犯人にされたという事件が題材のミステリー。
本作では芦田伸介にも負けない名優のコリン・ファースが事件に疑問を抱いて独自に捜査を始める探偵に扮し、
彼が捜査を進めれば進めるほど事件が複雑怪奇さを増してゆく様子がこの監督らしい緻密なタッチで綴られる。
なにせ経緯やその後どうなったかはわかっている事件ゆえ謎解きの面白さやカタルシスとはまるで無縁なれど、
その代わり事件全体を覆う閉塞感が見事に画面に描出されてなんとも言えないダークな気分に浸らせてくれる。

なにしろ3人の死体が発見される件や裁判などで使われる写真が本物かと思うぐらいに生々しいことこの上なく、
それが煽動されやすく排他的な人ばっかりという南部の掃き溜め的な雰囲気と相まって嫌な汗が滲むこと必至。
陰惨な猟奇殺人が起きるたびにホラーやヘビメタが人間に悪影響云々と言われるのは日本もアメリカも一緒で、
それに加え『一万三千人の容疑者』の頃から30年も経っているのに警察のトロさはまるで変わらないんだから、
こうした事件そのものにもウンザリだけどそれ以上に人間ってなんなんだろう?と実にやり切れない気持になる。
エゴヤンは社会派映画みたいに誰かを糾弾するなどせずただそんな人間社会の異様さだけを突き詰めるのだ。
そして映画が終わると普段は忘れているだけでこういう事件が実はそこらにゴロゴロあることに観客は気づく…。
それが本作の核心。『スウィート ヒアアフター』などと同様アトム・エゴヤンのミステリ劇場はやはり後味が悪い。

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エゴヤンの作家性を知らないと少しキツいかも?

『デビルズ・ノット』(2013年・アメリカ/カラー/5.1ch/シネマスコープ/114分)
【監督】アトム・エゴヤン
【出演】コリン・ファース、リース・ウィザースプーン、デイン・デハーン、ブルース・グリーンウッド、ミレイユ・イーノス
【配給】キノフィルムズ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】新宿シネマカリテ1
【鑑賞料金】1,000円(映画ファンサービスデー)

「ミステリ劇場へ、ようこそ。{2014}」[9月21日(日)-11月22日(土)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
『一万三千人の容疑者』(1966年・日本/白黒/88分)
【監督】関川秀雄(『ダニ』『かも』『新 いれずみ無残 鉄火の仁義』)
【出演】芦田伸介、小山明子、市原悦子、岸輝子、村瀬幸子、井川比佐志、松本克平、織本順吉
【製作】東映東京
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞料金】招待券

映画みたいに印パの関係もきっと、うまく…いってほしい 『PK ピーケイ』

噂に違わず面白かった!…けど、今再びインドとパキスタンの関係が悪化し、
それがついに両国の映画界にまで及んでいる現状を考えると最高にハッピーなラストもちょっと複雑…。
でもまぁそれはともかくこういうインド映画がヒットするのは本当によろこばしい。
地球へやって来たものの宇宙船のリモコンを盗まれ帰れなくなってしまった宇宙人pkが、
みんなが拝んでいる神様に自分も頼んでリモコンを返してもらおうと奔走する物語。
ところがpkは無垢だから神様にもいろいろあることやそれぞれを信じる人々同士の微妙な関係などいっさい知らず、
結果ズケズケと宗教の矛盾に喰い込んでいってしまうのだ。
なにしろそんな日本人には想像もつかないストーリーがダイナミックで圧倒的!
映画はそんなpkと、留学先の海外でパキスタン人の恋人を失った傷心を抱えつつも、
pkをTVに出演させインチキ宗教家と対決させようとするインド人の女性TVマンとの交流を軸に進んでゆく。
一見はおバカなコメディを装いながら宗教のタブーに真正面から切り込む勇気はさすがインド映画!
pkがインチキ導師をねじ伏せるシーンは痛快かつ深淵の極みで、
彼が説く真の信仰のあり方は神の名の元に行われる不毛なテロをも徹底的に非難する。
その後に訪れる愛のクライマックスも他の国の映画ならえぇ~!?って感じだけど、
しかし本作の場合あの2人の関係にこそ印パ友好への願いが込められているから素直に感動。
逆にpkのジャグーに対する無償の愛はまるで古典映画のようでカセットテープのオチはちょっぴり気恥ずかしくもグッとくる。
ただ、『きっと、うまくいく』もそうなんだけどこの監督の映画はちょっと筋立が数学的すぎるというか余白に“詩”を感じないため胸をガッサガサに揺さぶられるという感じとは少し違うのが個人的にはもう一つ。
だけどこんな壮大な物語はインド映画にしか創れないしとにかく賑やかで2時間半全然厭きなかった!(800字)

pk

『PK ピーケイ』(2014年・インド/カラー/シネスコ/153分)
【監督】ラージクマール・ヒラニ(『きっと、うまくいく』)
【出演】アーミル・カーン、アヌシュカ・シャルマ、スシャント・シン・ラージプート、サンジャイ・ダット、ボーマン・イラニ
【配給】日活
【5段階評価】
【鑑賞劇場】YEBISU GARDEN CINEMA
【鑑賞料金】ポイント鑑賞い