2017年2月鑑賞映画メモ(新作8作品)

①『グリーンルーム』(2/11)

ひたすら真面目な『フロム・ダスク・ティル・ドーン』チックな映画だな…と
ちょっとだけ思った。途中まではもの凄くドキドキしながら観ていたんだけど、
敵のネオナチの数がやたら多い上に頭悪すぎなもんだから(だからネオナチ?)
後半の展開は一転安心しながら観てしまい、けっきょくカタルシスは今一つ…。
最近の自分の傾向なんだけどこういうテイストであまりに人がポコポコ死ぬと
逆にリアリティを感じず遠目になってしまうんだよな。グロにも厭きてきたし。
映像が凝ってるワリには悪夢感も稀薄で自分ももう歳なんだろうか?(歳です)
愉しみにしていただけに少し残念。そしてアントン・イェルチンは本当に無念。


ホント残酷映画にも厭きてきました。

『グリーンルーム』(2015年・アメリカ/カラー/シネスコ/DCP/95分)
【監督】ジェレミー・ソルニエ(『ブルー・リベンジ』)
【出演】アントン・イェルチン、イモージェン・プーツ、パトリック・スチュワート、カラム・ターナー、メイコン・ブレア、ジョー・コール、アリア・ショウカット
【配給】トランスフォーマー
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】新宿シネマカリテ
【鑑賞料金】1,500円(クーポン割引)

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②『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』(2/12)

距離的にはチュニジアよりもイタリアに近く移民や難民の玄関口となっている
小さな島を舞台にした昨年のベルリン国際映画祭、最高賞のドキュメンタリー。
難民たちの苦境と島民の平穏な暮らしという一見相容れない二極を描きながら
それを異世界同士の対峙とはしない作風に世界の“境目”について考えさせられ、
差別や分断を煽る声に社会が押し流されがちな今、本作の何をも声高に叫ばぬ
落ち着き払った姿勢には、そんな風潮への静かな抵抗を感じて頼もしいばかり。
社会派色より叙情性が胸を打つ完璧な構図や吸い込まれるような映像美も凄い
まさしく今観るべき傑作! 寝不足だったけど観ている内にどんどん覚醒した。


残酷映画より世界はもっと残酷だ…。

『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』(2016年・イタリア=フランス/カラー/114分)
【監督】ジャンフランコ・ロージ(『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』)
【配給】ビターズ・エンド
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ル・シネマ(渋谷)
【鑑賞料金】1,100円(日曜日最終回割引)

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③『サバイバルファミリー』(2/16)

酷いなこれは。前作が快作だっただけに矢口史靖復活かと思い期待したけど…。
あの未曾有の震災からもうすぐ6年という時期にこんな呑気な映画が創られる、
この国の情けなさ。「諷刺はなしの最後は家族愛で!」と釘でも刺されたのか、
話はひたすらつまらず適当にゴミを散らかし適当なサバイバルネタを散りばめ
後はなんの装備もなくキャンプに出かけた家族が農家体験してハイ、おしまい。
もう何が赦せないといってコメディを逃げ道にしているところがホント最悪!
最初はこの設定でゾンビや未知のウィルスに頼らないのがいいと思ってたけど
こんなならゾンビが出てきて一家が喰われてハイ終わりの方が面白かったよ!


今こういうネタで映画を創るのなら
何かもっと訴えることがあるだろ!

『サバイバルファミリー』(2017年・日本/カラー/117分)
【監督】矢口史靖(『裸足のピクニック』『ひみつの花園』『アドレナリン・ドライブ』『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』『歌謡曲だよ、人生は』『ハッピーフライト』『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』)
【出演】小日向文世、泉澤祐希、葵わかな、深津絵里、時任三郎、藤原紀香、大野拓朗、志尊淳、渡辺えり、宅麻伸、柄本明、大地康雄、菅原大吉、徳井優、桂雀々、森下能幸、田中要次、有福正志、左時枝、ミッキー・カーチス
【配給】東宝
【5段階評価】★☆☆☆☆
【鑑賞劇場】ユナイテッド・シネマとしまえん(豊島園)
【鑑賞料金】ポイント鑑賞

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④『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フランメンコ~』(2/18)

ショーアップされたステレオタイプなフラメンコのイメージがガラリと変わり
カルロス・サウラよりトニー・ガトリフが観たくなる秀作ドキュメンタリー!
スペインはアンダルシア地方のサクロモンテがフラメンコの聖地であるという
事実のほか、その成立にイスラームの文化が影響しているなんて初めて知った。
老若男女関係ないロマの生活や人生観に根差した歌詞の数々も面白く、中でも、
「信仰さえも君への愛のために質に入れた」という一節には心からシビレた!
こんな敬虔さと愛と生活苦を同時に感じさせる歌詞は今まで聴いたことない!
世界は広く、歴史は深く、文化は豊かであると実感できる旅に出たくなる1本だ


一つ部屋に集いし人々が順に踊る構成も◎。

『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フラメンコ』(2014年・スペイン/カラー/16:9/ステレオ/94分)
【監督】チュス・グティエレス
【出演】クーロ・アルバイシン、ラ・モナ、ライムンド・エレディア、ラ・ポロナ、マノレーテ、ペペ・アビチュエラ、マリキージャ、クキ、ハイメ・エル・パロン、フアン・アンドレス・マジャ、チョンチ・エレディア
【配給】アップリンク
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】有楽町スバル座
【鑑賞料金】1,400円(劇場鑑賞券)

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⑤『SYNCHRONIZER』(2/19)

偉い!何が偉いって最後キレイなおっぱい出してたあの若い女優さんが偉い!
いやぁー面白いといったら予測不能かつ大胆な展開で充分面白かったんだけど
それ以上にそこはかとない低予算映画の悲しみというか、こういう映画はもう、
自主製作でしか創られえないという日本映画の現実(?)に胸をしめつけられた。
むしろ監督がもっと若くて借金してでもこういう映画が撮りたかった!という
情熱でも感じられたなら印象もまた違ったんだろうけどそういうワケではなく
無難に隅々まで巧いから逆に物足りないという…。いや充分面白かったけど!
だからいっそ共同脚本だけでなく、『みちていく』の監督に撮ってほしかった。


頑張ってるけど如何せん安っぽいというか。

『SYNCHRONIZER』(2015年・日本/カラー/アメリカン・ビスタ/83分)
【監督】万田邦敏(『Unloved』『ありがとう』『接吻』)
【出演】万田祐介、宮本なつ、古川博巳、中原翔子、大塚怜央奈、美谷和枝
【配給】SYNCHRONIZER
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,200円(会員)

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⑥『エリザのために』(2/21)

ルーマニアの絶望感が凄い…。少し前にTVで、ルーマニアが五輪で輝いていた
ナディア・コマネチの時代を目指そうにも優秀なコーチがみないい給料を求め
海外に出て行ってしまうという話をやっていたが、本作でそれがよくわかった。
でも…好きなんだよな。ルーマニアや隣のブルガリアのどんよりした雰囲気が。
解説を読んでいろいろとスッキリしない苦手なタイプの映画かと思っていたら
緻密な構成の会話劇と仄かなサスペンスの風味で、ラストまで面白く観られた。
娘のためなら不正も厭わぬお父さんの愛人役のマリナ・マノヴィッチが素敵!
彼の国の暗部とともに人間心理の“グラデーション(英題)”部分を描いた傑作だ。


モヤモヤさせつつラストには微かな希望も。

『エリザのために』(2016年・ルーマニア=フランス=ベルギー/カラー/128分)
【監督】クリスティアン・ムンジウ(『4ヶ月、3週と2日』『汚れなき祈り』)
【出演】アドリアン・ティティエニ、マリア・ドラグシ、リア・ブグナル、マリナ・マノヴィッチ、ヴラド・イヴァノフ
【配給】ファインフィルムズ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】新宿シネマカリテ
【鑑賞料金】1,500円(クーポン割引)

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⑦『百日告別』(2/25)

素晴らしい。やられた。と言っても別にどんでん返しな展開があるワケじゃなく
ともに最愛の人を交通事故で亡くしたある男女の心の機微を丁寧に描いてゆく
ただそれだけの話なんだけど、それが法要本来の意味とともに語られ実に巧い。
当然だが、法要も形だけでは無意味という戒めがドラマに説得力を与えている。
とは言っても別に宗教行事を大切にしましょうなんて説教じみた映画ではなく
これはきっと“死は生に内包されている”というアジア的な死生観に基づく物語。
だいたい2人が出逢って恋をするとかいうありがちな話じゃないところが素敵。
台湾、そして台湾映画は本当に“大人”だとあらためて感じさせてくれる秀作だ。


まるで油断していたため最後は涙ポロポロ。

『百日告別』(2015年・台湾/カラー/95分)
【監督】トム・リン(『九月に降る風』)
【出演】カリーナ・ラム、シー・チンハン、チャン・シューハオ、リー・チエンナ、ツァイ・ガンユエン、アリス・クー、マー・ジーシアン
【配給】パンドラ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,200円(会員)

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⑧『トリプルX:再起動』(2/26)

す、凄い…。なんか勢いだけでめちゃくちゃだけどめちゃくちゃ面白かった!!
それにドニー・イェンが出ているといってもどれほどのものかと思っていたら
まるでヴィン・ディーゼルとのバディ・ムービーみたくなっているじゃない!
トニー・ジャーもいっぱい出てくるし『オーム・シャンティ・オーム』の美女
ディーピカー・パードゥコーンは華と色気ムンムンだしアジア色濃厚で最高!
ちょっと味が濃すぎ&猥雑すぎてワイスピのような人気とはならないだろうが、
個人的にはコッチの方が好き! こんな再起動なら大歓迎! ぜひ、新作創って!
とにかく、これだけ面白ければいい加減な脚本も演出も全然問題なし!満足!


こんなハリウッド映画を観る日が来るとは。

『トリプルX:再起動』(2017年・アメリカ/カラー/107分)
【監督】D・J・カルーソー(『テイキング・ライブス』『ディスタービア』『イーグル・アイ』)
【出演】ヴィン・ディーゼル、ドニー・イェン、ディーピカー・パードゥコーン、クリス・ウー、ルビー・ローズ、トニー・ジャー、ニーナ・ドブレフ、ロリー・マッキャン、トニ・コレット、サミュエル・L・ジャクソン、ネイマール
【配給】東和ピクチャーズ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ユナイテッド・シネマとしまえん(豊島園)
【鑑賞料金】1,300円(レイトショー割引)

2017年1月鑑賞映画メモ(13作品)

①『フィッシュマンの涙』(1/1)

新年1発目。お正月らしく奇抜で賑やかそうな映画を…と思って選んだんだけど
意外としんみりしちゃったし、オフビートなテイストゆえ賑やかでもなかった。
製薬会社の治験仕事の副作用で半魚人と化してしまった青年をめぐる騒動から
日本にも通じる韓国社会の歪みが浮かび上がる、不条理系ブラック・コメディ。
ビジュアルは映画らしく奇抜でもさすが製作総指揮イ・チャンドン監督だから
テーマは極めて社会派でフザケた感じはなく、作品自体の好感度はかなり高め。
でも、韓国映画にしてはサッパリしすぎな感もあり正直喰い足りなさは否めず。
どことなく『pk』とカブる印象もあったかな。いずれ韓国映画には今年も期待!

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シネマスコーレの元旦恒例(?)サービスで
お汁粉をいただきました!美味しかった!

『フィッシュマンの涙』(2015年・韓国/カラー/シネスコ/92分)
【監督】クォン・オグァン
【出演】イ・グァンス、パク・ボヨン、イ・チョニ
【配給】シンカ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】シネマスコーレ(名駅)
【鑑賞料金】1,000円(映画サービスデー)

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②『疾風スプリンター』(1/7)

もう満腹…。役者もスタッフも命懸け。それに較べたら自分にできることなんて
熱き彼ら映画人たちをリスペクトして2時間オシッコを我慢することぐらいだ!
自転車ロードレースの世界を舞台に若きプロ選手たちの栄光と挫折を活写した
ダンテ・ラム監督作らしく感動と昂奮おかわり無料の特盛スポ根青春ドラマ!
もうヒロインのワン・ルオダンが可愛すぎ!彼女の自転車をアシストしたい!
それがダメなら生まれ変わって彼女の自転車のサドルになりたい!(やめなさい)
年齢的に『激戦』の方が好きではあるけどレース・シーンはド迫力の一語だし
ドラマも恋と友情がテンコ盛りで気恥ずかしくも爽やかなカタルシスが満載!


東京での劇場鑑賞皮切りに相応しい
実に心が洗われる快作でありました。

『疾風スプリンター』(2015年・香港=中国/カラー/シネマスコープ/DCP/125分)
【監督】ダンテ・ラム(『ビースト・ストーカー/証人』『スナイパー:』『密告・者』『コンシェンス/裏切りの炎』『ブラッド・ウェポン』『激戦 ハート・オブ・ファイト』『クリミナル・アフェア 魔警』)
【出演】エディ・ポン、チェ・シウォン、ショーン・ドウ、ワン・ルオダン
【配給】エスパース・サロウ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】新宿武蔵野館
【鑑賞料金】1,500円(クーポン使用)

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③『人魚姫』(1/8)

リン・ユンかーわーいーいー。キティ・チャンえーろーいー。もう女優が完璧!
凄い…凄すぎる…めちゃくちゃ愉しかった!チャウ・シンチーにハズレなし!
よくも毎度毎度ここまでバカバカしい、だけど、最っ高の映画が創れるもんだ!
お腹いっぱい。七草粥でせっかく休めた胃もまるで元通りな(喰ってないけど)
笑いと涙の波状攻撃でこれ以上ムリってほど満腹必至な中華娯楽おせち映画!
もうオープニングの選曲からしてやりたい放題! 笑えるしキモイし可愛いし、
エロいしクライマックスはいきなり残酷だしだけどラストはマジで泣けるしで
なにしろあらゆる感情を心地好くくすぐられる内に94分なんてアッという間!

環境破壊や共存共栄など喜劇だからこそマジメなテーマを謳うところも好き!
中国マネーを湯水の如く使い中国を揶揄するなんてシンチーにしかできない!
まだ観ていないけどきっと話題沸騰の『ラ・ラ・ランド』を観ても自分は絶対
コッチの方が好きだって言うと思うな。それぐらい2人が歌う場面もよかった!
新春早々こんな景気のいい映画が観られるとは、こいつぁ春から縁起がいいや。
てかシンチーとダンテ・ラムとジョニー・トーの最新作がまとめていっぺんに
しかも全部新宿でやっているってよく考えたらスゲぇ景気のいい話だなオイ!
とにかく面白かった!可愛くてエロかった!早く『西遊記』の続篇が観たい!


シンチーの女優審美眼は相変わらず。

『人魚姫』(2016年・中国=香港/カラー/94分)
【監督】チャウ・シンチー(『0061/北京より愛をこめて!?』『008(ゼロ・ゼロ・パー)皇帝ミッション』『食神』『喜劇王』『少林サッカー』『カンフーハッスル』『ミラクル7号』『西遊記 ~はじまりのはじまり~』)
【出演】ダン・チャオ、リン・ユン、キティ・チャン、ショウ・ルオ
【配給】ツイン
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】シネマート新宿
【鑑賞料金】1,300円(TCG会員)

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④『壊れた心』(1/10)

主演が浅野忠信で撮影がクリストファー・ドイルでMVみたいな映像ってそれ、
90年代ミニシアター・ブーム全盛期のレイトショーか! みたいな映画でした。


浅野忠信はすっかり再全盛期ですね。

『壊れた心』(2014年・フィリピン=ドイツ/カラー/73分)
【監督】ケヴィン・デ・ラ・クルス
【出演】浅野忠信、ナタリア・アセベド、エレナ・カザン、アンドレ・プエルトラノ、ケヴィン、ヴィム・ナデラ
【配給】Tokyo New Cinema
【5段階評価】★★☆☆☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,200円(会員)

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⑤『ホワイト・バレット』(1/12)

病院という生と死が交錯する静謐な場所だからこそサスペンスが冴えまくる!
クライマックスは『エグザイル/絆』をも超え、映画史に残る銃撃戦! 大傑作!


こんな傑作がレイトショーだなんて。

『ホワイト・バレット』(2016年・香港=中国/カラー/88分)
【監督】ジョニー・トー(『過ぎゆく時の中で』『ファイヤーライン』『ザ・ミッション 非情の掟』『暗戦 デッドエンド』『フルタイム・キラー』『ターンレフト・ターンライト』『PTU』『マッスルモンク』『柔道龍虎房』『ブレイキング・ニュース』『イエスタデイ、ワンスモア』『エレクション』『エレクション 死の報復』『エグザイル/絆』『強奪のトライアングル』『MAD探偵 7人の容疑者』『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』『奪命金』『ドラッグ・ウォー 毒戦』『名探偵ゴッド・アイ』『華麗上班族』)
【出演】ルイス・クー、ヴィッキー・チャオ、ウォレス・チョン
【配給】ハーク
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】新宿武蔵野館
【鑑賞料金】1,500円(クーポン使用)

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⑥『トッド・ソロンズの子犬物語』(1/24)

トッド・ソロンズ好きにはだいたいどんな話かタイトルだけでちゃんと伝わり
知らない人は可愛い動物ものかと思わせまんまと騙す、なかなか技アリの邦題。


それにしてもいよいよアメリカもソロンズ
の映画そのまんまの救いようのない国に…。

『トッド・ソロンズの子犬物語』(2015年・アメリカ/カラー/アメリカンビスタサイズ/88分)
【監督】トッド・ソロンズ(『ウェルカム・ドールハウス』『ハピネス』『ストーリーテリング』『おわらない物語 アビバの場合』『ダークホース ~リア獣エイブの恋~』)
【出演】ダニー・デヴィート、エレン・バースティン、ジュリー・デルピー、グレタ・ガーウィグ、キーラン・カルキン
【配給】ファントム・フィルム
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】ヒューマントラストシネマ渋谷
【鑑賞料金】1,000円(TCG会員ハッピーチューズデー)

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⑦『ブラインド・マッサージ』(1/24)

五感の一つが閉ざされているがゆえに、感情がヒリヒリと剥き出しの愛の世界。
ちょいと映像が凝りすぎでムダに血生臭すぎるけど、ロウ・イエらしい野心作。


この映画を観ている内に高熱が出ました…。

『ブラインド・マッサージ』(2014年・中国=フランス/カラー/1:1.85/DCP/115分)
【監督】ロウ・イエ(『ふたりの人魚』『パープル・バタフライ』『天安門、恋人たち』『スプリング・フィーバー』『パリ、ただよう花』『二重生活』)
【出演】ホアン・シュエン、チン・ハオ、グオ・シャオトン、メイ・ティン、ホアン・ルー、チャン・レイ
【配給】アップリンク
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】アップリンクX(渋谷)
【鑑賞料金】ポイント鑑賞

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⑧『ドラゴン×マッハ!』(1/28)

凄い…凄すぎる。ラスト・バトルの尋常ならざるカタルシスもさることながら
いわゆるアクション映画の文法をいっさい無視してひたすらダークな画作りと
歪なロマンチシズムにこだわるソイ・チェンの暴走暗黒演出にお腹いっぱい!
クライマックスはマジであまりの凄さに、引きつり笑いをしながら涙が出た…。
せっかく熱が下がったのにこんなの観たら違う意味でまた熱が出ちゃったよ!


なんて邦題!ちゃんとSPL2と謳え!

『ドラゴン×マッハ!』(2015年・香港=中国/カラー/120分)
【監督】ソイ・チェン(『ドッグ・バイト・ドッグ』『軍鶏 Shamo』『アクシデント』『モーターウェイ』『モンキー・マジック 孫悟空誕生』)
【出演】トニー・ジャー、ウー・ジン、サイモン・ヤム、ルイス・クー、マックス・チャン
【配給】ツイン
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】シネマート新宿
【鑑賞料金】1,300円(TCG会員)

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⑨『アンチポルノ』(1/28)

個々の作品デンデンはともかく今さら名前も地位もあるオジン監督ばかり揃え
女性監督や無名の若手監督の1人もいない今回の“ロマンポルノ・リブート”を、
全然支持する気にはなれないんだけどそれでも本作を観に行ったのはもちろん
2016年の“人妻・オブ・ザ・イヤー”筒井真理子さんが脱いでおられるからだ!
で、今年もブレそうにない己の熟女好きをあらためて確認できたのはともかく
映画的には案の定観なくてもよかったかなと思いつつ途中まで観ていたものの
しかし、ロマンポルノといったら70年代の作品ばかりがモテ囃されがちな中で、
おそらく1人気を吐くように80年代風の狂騒的作品を撮っている園子温監督は、
実はこの企画を最も理解しているようにも思われ官能だの繊細な心理描写だの
んなもん知るか!と言わんばかりの傍若無人なやりたい放題ぶりに最後はもう
「わかったわかった降参!」という感じで、拍手したい気持になってしまった。
まぁ、基本的にはこの監督らしく露悪的かつ幼稚な内容でつまんなかったけど。
真理子さんも素晴らしかったが主演の子もい~体をしていらっしゃいました♪


美魔女なんて安っぽい言葉もフッ飛びます。

『アンチポルノ』(2016年・日本/カラー/5.1CH/ビスタ/78分)
【監督】園子温(『俺は園子温だ!』『自転車吐息』『性戯の達人 女体壺さぐり』『自殺サークル』『Strange Circus 奇妙なサーカス』『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』『恋の罪』『地獄でなぜ悪い』)
【出演】冨手麻妙、筒井真理子、不二子、小谷早弥花、吉牟田眞奈、麻美、下村愛、福田愛美、貴山侑哉
【配給】日活
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】新宿武蔵野館
【鑑賞料金】1,500円(クーポン使用)

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⑩『沈黙-サイレンス-』(1/29)

もうぐったり。キリスト教の話なのに描かれるのは無間地獄とはこれいかに?
真の信仰やそれに基づく愛とは何か? 人間や社会っていったいなんだ…?と、
深々考えさせられるとともにお上の徹底したキリシタン弾圧の用意周到ぶりと
残酷絵巻にド肝を抜かれるスコセッシ監督面目躍如の拷問映画の金字塔にして
これぞホントの「日本スゴイ」映画!? 2時間半ひたすら地獄だった…。疲れた。


俳優・塚本晋也ここに極まれりの感。

『沈黙-サイレンス-』(2016年・アメリカ/カラー/162分)
【監督】マーティン・スコセッシ(『アリスの恋』『タクシードライバー』『ラスト・ワルツ』『レイジング・ブル』『グッドフェローズ』『ケープ・フィアー』『カジノ』『クンドゥン』『救命士』『ギャング・オブ・ニューヨーク』『アビエイター』『ディパーテッド』『シャッター アイランド』『ヒューゴの不思議な発明』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』)
【出演】アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライヴァー、浅野忠信、窪塚洋介、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ、リーアム・ニーソン
【配給】KADOKAWA
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズスカラ座(日比谷)
【鑑賞料金】ポイント鑑賞

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⑪『感じるつちんこ ヤリ放題!』(1/31)

小袋良男です! 誰だよあの役演じた新劇の役者みたいな人? あー面白かった!
『ロブスター』や『マジカル・ガール』よりよほどシュールで人を喰っていて
ロジャー・コーマンよりチープなキテレツ珍獣艶笑喜劇。(どんなジャンルだ?)
予測も深読みもいっさい拒否して、観る者を心地好く諦めの境地に誘う怪快作。
ヘタな作家風情が撮ればそれこそシュールでしょ?みたいな狙いが透けて見え
イライラしそうなところをまんまとスリ抜ける、これぞいまおか演出の真骨頂。
涼川絢音の浮世離れした雰囲気も作品の世界観とマッチしていて配役の勝利!
テーマなんてきっと何もないけど窮屈な世を生き抜くヒントが本作にはある!?


今やピンク映画に必要不可欠です。

『感じるつちんこ ヤリ放題!』(2016年・日本/カラー/70分)
【監督】いまおかしんじ(『たまもの』(原題:熟女・発情 タマしゃぶり)『かえるのうた』(原題:援助交際物語 したがるオンナたち)『おじさん天国』(原題:絶倫絶女)『白日夢』『ゴーストキス』『若きロッテちゃんの悩み』『UNDERWATER LOVE おんなの河童』『川下さんは何度もやってくる』『つぐない 新宿ゴールデン街の女』『妻が恋した夏』『帰れない三人 快感は終わらない』)
【出演】涼川絢音、安野由美、月本愛、伊藤清美、櫻井拓也、二ノ宮隆太郎、守屋文雄、松永祐樹、松原正隆、岡田智宏、川瀬陽太、佐藤宏、内藤忠司
【配給】OP映画
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】上野オークラ劇場
【鑑賞料金】1,600円(3本勃)

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⑫『いくつになってもやりたい男と女』(1/31)

これは、ポレポレ東中野で2008年に『たそがれ』の題で観て以来。泣けたぁ~。
ロマンポルノ・リブートもいいけれどやっぱりボクは今やメインストリームの
ロマポより“この映画の世界の片隅に”細々と咲くピンク映画のペーソスが好き。
この味わいが、リブートには感じられないピンク映画独特の世界観なんだよな。
昨年の『夢の女』にも並ぶ老いらくの恋を絶妙なユーモアと粋で描いた傑作!
主人公のフナやんが「お○こ触って」という病床の奥さんの最期の女の望みを、
唇を噛みながら叶えてあげるシーンに涙々…。最近はこういうのにホント弱い。
これこそ上野オークラ劇場のお客さんたちにぴったりのピンク映画だと思う!


ピンク版『人生フルーツ』!(ウソ)

『いくつになってもやりたい男と女』(2007年・日本/カラー/64分)
【監督】いまおかしんじ
【出演】多賀勝一、並木橋靖子、速水今日子、吉岡研治、小谷可南子、福田善晴、高見国一
【配給】新東宝映画
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】同上
【鑑賞料金】同上

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⑬『昼下がりの教室 教壇に立つ女(原題:高校牝教師-汚された性-)』(1/31)

突飛な設定やユーモアがまるでない分、監督の基本的な巧さがよくわかる佳作。
というワケで今回のいまおかしんじ監督特集は実に見事な3本勃でありました。


こういう女優さん今は何してるんだろう?

『昼下がりの教室 教壇に立つ女』(2001年・日本/カラー/60分)
【監督】今岡信治
【出演】仲西さやか、鈴木敦子、武田まこ、河合誠、田島英治、藤木誠人、伊藤猛
【配給】エクセス
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】同上
【鑑賞料金】同上

国民の憂さを晴らしてくれる韓国映画は健康的! 『華麗なるリベンジ』短評

権力への鬱憤をスカッと晴らしてくれる韓国映画はやっぱり気持が好いなぁ!
今や韓国映画屈指の反権力顔と言ってもいい我らのファン・ジョンミン兄貴が
暴力も厭わぬあまり被疑者殺害の濡れ衣を着せられてしまった熱血検事を演じ
詐欺師カン・ドンウォンと手を組んで権力と闘う話が面白くないワケがない!
『さまよう刃』の刑事役とは全然違う悪辣イ・ソンミンも憎々しいばかりだし
掴みどころのないパク・ソンウンも妙味を出してなにしろ芝居が観応え抜群!

まるで気負わず腕慣らしでもしているかのようなイ・イルヒョン監督の演出も
複雑に込み入っている脚本を手早く捌いて2時間超えの長尺がアッという間。
正直そこがスマートすぎて逆に喰い足りないというかクライマックスに後少し
グッとくるものがほしかった気もするけどこれだけ面白ければまずは及第点!
上映前の2人の映像でもジョンミンはいかにもいい人で好感度さらにアップ!
もちろんドンウォンもいいしウゼぇ社会をブッ飛ばす韓国映画らしい快作だ!

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韓国のバディムービーはもはや鉄板!

『華麗なるリベンジ』(2016年・韓国/カラー/126分)
【監督】イ・イルヒョン
【出演】ファン・ジョンミン、カン・ドンウォン、イ・ソンミン、パク・ソンウン、シン・ソユル、ハン・ジェヨン、キム・ウォネ
【配給】ツイン
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】シネマート新宿
【鑑賞料金】ポイント鑑賞

なんだかんだ頑張れTIFF! 「第29回東京国際映画祭」

tiff2016

「第29回東京国際映画祭」
[2016年10月25日(火)‐11月3日(木・祝)]
TOHOシネマズ六本木ヒルズEXシアター六本木

①『ラブリー・マン』

今年の1本目はインドネシア映画―。小品らしくしみじみといい映画だった。
敬虔なムスリムの少女が4歳の時に別れた父親に逢うためジャカルタに行く。
でも、父親はヤクザのもと男娼として都会の混沌の中を孤独に生きていた…。
性的マイノリティやイスラームとジェンダーなどテーマ自体はかなりヘビー。
しかし映画は題材の内面には深く踏み込まず一風変わった父娘の一夜の物語を
ただ静かに見つめ続ける。ちょっと感傷的で口当たりがよすぎな気もするけど
ジャカルタの夜の風情が実に生々しく寂しげで、心優しい都会の童話みたいに
なっている。個人的にはドビュッシーよりアザーンの響きに心くすぐられた。

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『ラブリー・マン』(2011年・インドネシア/カラー/76分)
【監督】テディ・スリアアトマジャ
【出演】ドニー・ダマラ、ライハアヌン・スリアアトマジャ、ヤユ・アウ・ウンル
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ六本木ヒルズ3
【鑑賞料金】1,300円(前売一般)

②『舟の上、だれかの妻、だれかの夫』

2本目もインドネシア映画。でもコチラは『ラブリー・マン』とは少々異なり
やや作家映画的な短篇作品2本立。まずは海の美しいインドネシア東部の島に
1世紀前の不倫ドラマについて調べに来た女性とそこで出逢う青年との物語。
正直ただなんとなく観てるだけじゃ何を語っているのか全然よくわからない。
というより、ヒロイン役のマリアナ・レナタの黒ビキニの上にYシャツという
最強コンボが鬼のようにセクシーすぎて話がほとんど頭に入ってこなかった!
あれはズルい。何かのトラウマがあるワケじゃないけど監督は海が怖いらしく
そう言われるとストレートに自然の驚異を感じさせるそんな映画ではあった。

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『舟の上、だれかの妻、だれかの夫』(2013年・韓国=インドネシア/カラー/58分)
【監督】エドウィン
【出演】マリアナ・レナタ、ニコラス・サプトラ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】同上
【鑑賞料金】同上

③『ディアナを見つめて』

つづいては『鏡は嘘をつかない』(TIFFでも岩波ホールでも未見)の監督作。
そして『ラブリー・マン』では娘を演じていたライハアヌンが一児の母親役。
ある日突然夫が第二夫人を娶りたいと言い出して戸惑う女性の深い葛藤を描き
そんな慣習に真っ向から異を唱えた物静かだけど意思のくっきりとした作品。
でも第二夫人を娶るからには男は二つの家庭に100%責任を負わねばならず
最後はけっきょく喰い詰めグチばかり言うこの夫にそんな資格実はないワケで
そういう意味じゃラストは奥さんの方が実は上に立っているようにも思えた。
実物の彼女は大変美しくあんな人が妻だったらコッチこそ第二夫にされそう!

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『ディアナを見つめて』(2015年・インドネシア/カラー/42分)
【監督】カミラ・アンディニ
【出演】ライハアヌン、タンタ・ギンティン、パンジ・ラフェンダ・プトラ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】同上(上記作品と2本立)
【鑑賞料金】同上(上記作品と2本立)

④『ブルカの中の口紅』

『PK』のジャグーの妹がいつの間にやら大人の女性になっていてびっくり!
そしてコーンクナー・セーン・シャルマーがボクのいちばん好きなインド映画
『Mr.& Mrs.アイヤル』(2002)の頃とまるで変わらないことに二度びっくり!
基本的には艶笑コメディで語り口が軽快ゆえ時に吹き出しながら愉しめたけど
男としてはいたたまれない4人の女性の息苦しい日常を描くヘビーなドラマ。
タイトルに“ブルカ”と付くからにはもっとイスラーム的な話かと思っていたが
映画はより広く普遍的な女性の抑圧を描き、ブルカはその象徴的な意味合い。
タイプの違う4女性ということでレバノン映画の『キャラメル』も連想した。

なにしろ男がロクなもんじゃないんだけどかと言って男を貶めるワケではなく
4人がそれぞれ魅力的だから男でもしっかり感情移入できるのが素晴らしい!
彼女らの葛藤を自身の問題として捉える女性監督の視線はどこまでも誠実だ。
それぞれに苦難が降りかかるラストも一見重くいかにも救いがなさそうだけど
しかし“男で”幸せになったってそれを真の女性の解放とは言わないと思うので
ラストに4人集まって煙草をふかし笑い合い“何か”を共有するようなシーンは
この映画が誠の女性映画であることを示す切なくも力強い場面だったと思う。
ただインド全体の男尊女卑をブルカに集約してまた軋轢を生まないかが心配。

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『ブルカの中の口紅』(2016年・インド/カラー/117分)
【監督】アランクリター・シュリーワースタウ
【出演】ラトナー・パータク・シャー、コーンクナー・セーン・シャルマー、アハナー・クムラー
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ六本木ヒルズ9
【鑑賞料金】同上

⑤『ダイアモンド・アイランド』

これもいい映画だった。確かに全体的にはもう一歩!ってところはあるけれど
それでもついにこういう青春映画がカンボジアでも創られるようになったか…
という台湾や中国映画のニューウェーヴを観た時と同じうれしい驚きがある。
急激な経済発展の影で燻ぶるやり場なき、でも穏やかなカンボジア的青春像は
ホウ・シャオシェンやジャ・ジャンクーの初期作にも似たアジア的哀愁を醸し
元の撮影機材の問題か少し画質が悪いものの胸がキュンと鳴るよな場面満載で
リティ・パンの遺伝子を受け継ぎつつ新しい世代の息吹を感じさせてくれる。
女のコたちが妙に色っぽいのもよかった。またいつかカンボジアに往きたい!

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『ダイアモンド・アイランド』(2016年・カンボジア=フランス=ドイツ=タイ=カタール/カラー/104分)
【監督】デイヴィ・シュー
【出演】ヌオン・ソボン、ノウ・チェニック
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】同上
【鑑賞料金】1,500円(前売一般)

⑥『クラッシュ』

いわゆる“アラブの春”から2年後のカイロを舞台にした注目のエジプト映画。
2011年の革命でムバーラク政権を倒したのはいいけどイスラム主義を掲げる
次のモルシー大統領に反対する人々と支持派との軋轢で国は再び真っ二つに。
そんなデモの騒乱の中、双方の民衆が一台の護送車に次々と詰め込まれる…。
要は政治、宗教、男性、女性、様々な人が乗る護送車の中をエジプトの縮図に
その混沌をパワフルに描いた力作…ではあるんだけど正直ケレン味が強すぎて
自分たちはいつまでこんな不毛な対立をつづけるんだ!?という肝心のテーマが
少々置き去りにされていたような気がする。期待してただけにちょっと残念!

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『クラッシュ』(2016年・エジプト/カラー/98分)
【監督】モハメド・ディアーブ( 『Cairo 678』 )
【出演】ネリー・カリム、ハニ・アデル、タレク・アブデル・アジズ、アフマド・マレク、アフマド・ダッシュ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ六本木ヒルズ2
【鑑賞料金】同上

⑦『ヘヴン・ウィル・ウェイト』

素晴らしい!最後の最後にこんな傑作が観られて今年のTIFFはこれで大満足!
イスラム過激派組織の思想に“洗脳されていた”少女と“洗脳されていく”少女を
巧みに対比描きながら今やフランスのみならず世界が直面する問題を見据えた
日本も人ごとではなく今観るべき珠玉の社会派映画にして切ない青春ドラマ!
先のブルキニの話がいい例でフランスも頻発するテロを前にもはやなす術なく
結果、無意味な宗教弾圧に走るなどどんどん悪い方に傾いていっているけれど
映画は“問題はそこじゃない”と決して感情的になることなく極めて冷静沈着に
綿密なリサーチで得た少女らの体験を基にしながらその根幹を考察してゆく。

面白いのはそういう若者らの洗脳を解く活動を実際にしているムスリム女性が
本人役で出演しセラピーの過程を見せてくれること。それが実にスリリング!
そしてそこから見えるのは、問題を前にもはや無力な社会と大人たちの姿…。
最後の最後に全体像がわかるサスペンスフルな構成やゾッとする描写も見事!
社会性と娯楽性が同居していてこの監督は前の『奇跡の教室』も面白かったし
今フランスで最も注目すべき力ある作家と言ってもいいんじゃないだろうか?
こういう映画が創られる土壌がある分フランスはまだマシという気さえする。
あんな酷い政権をいまだ多くの人が盲信しているこの国の方がよっぽど心配!

というワケでチケット問題などいろいろあったが今年のTIFFは充実していた!

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『ヘヴン・ウィル・ウェイト』(2016年・フランス/カラー/105分)
【監督】マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール( 『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』 )
【出演】ノエミ・メルラン、ナオミ・アマルジェ、サンドリーヌ・ボネール、クローティルド・クロー、ジヌディーヌ・スアレム
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ六本木ヒルズ7
【鑑賞料金】同上

アトム・エゴヤン監督作品レビュー一覧(旧ブログより)

格調高く見せる今はなき“火サス”!?
『秘密のかけら』(2005/12/28)

先日、テレビ朝日で放送された「M-1グランプリ2005」。
エンタの神様」とは違って本格派だけがその出場を許されるテレ朝屈指の好番組だけど、
おそらく、ボクを含めた関西圏以外に住んでいる人たちの中で、
ブラックマヨネーズ」の優勝を予測していたという人はほとんどいないんじゃないだろうか?
ボクが彼らの漫才を見たのはまだ名古屋に住んでいる頃の話だし、
今年はこれまでの流れからいって「笑い飯」か「麒麟」のどちらかだろうと踏んでいたので、
当日外から帰ってきて、ビデオでマズ彼らの優勝を知った時には本当に驚いてしまった。
でも、面白かった。それこそ震えるほどに面白かった。
練り込まれたネタに、安定したテンポとテンション。心地好く痛快な言葉廻しに声の高低のバランス。
審査員の大竹まことが彼らを評して言った、“オーソドックスの凄さ”。
2人の漫才の面白さはまさにこのひと言に尽きるとボクも思う。
いまだに“あるある”ネタや(「レギュラー」は好きだから除外)、
飛び道具みたいなキワモノ芸人がアイドル扱いされる中で(それはそれで面白い芸人もいるけど)、
ブラックマヨネーズの言葉の面白さを煮詰めたオーソドックスな笑いが、
“笑いのプロ”たちによって最大級の評価を受けたというのは、
昨今のお笑いブームに鉄槌を喰らわすぐらい意義のあることだと思うし、
なにりそれは、お笑いばかりではなく、映画にだって言えることなんじゃないだろうか…?

凝りに凝ったMTV調の映像や、センスをひけらかそうとヒネりまくった挙句空廻りを起こす脚本とか、
もうそんな映画が“新しい才能の誕生!”だのなんだのとモテ囃されるような時代はとっくの昔に終わっている!
映像はあくまで物語を豊かにするために機能するべきであり、
シンプルにこだわった脚本こそが映画に工夫とリズムを生む。
そういう意味で、今月同日に公開された傑作2本、『愛より強い旅』と『キング・コング』は、
ジャンルとしては天と地ぐらい違えども、目指す映画的な志はまったくと言っていいほど同質である。

とまぁ、自分で書いてて相変わらず無理に感じる展開だけど、
今回の映画には2人組の人気コメディアンというのが出てくるモンだからチョット「M-1」の感想も。
でも、“オーソドックスを極める”という意味では、この映画にも同じことが言えるんじゃないだろうか?

1972年、新進気鋭の若きジャーナリストのカレン(アリソン・ローマン)が、
15年前にTVで活躍していた人気デュオ、
“ラニー(ケヴィン・ベーコン)&ヴィンス(コリン・ファース)”が解散した真の理由について探り始める。
2人に接触したカレンは、調査を進める内に彼らの意外な素顔を知り、
そのキッカケとなった、ある変死事件の真相にしだいに肉薄してゆく……。

ハッキリいって、物語の粗筋そのものは今秋ついにその長い歴史に幕を閉じた2時間ドラマ、
「火曜サスペンス劇場」、もしくは“スナック火曜サスペンス劇場”(わかったアナタは“ビバリスト”!)程度のお話で、
そんな大昔のアメリカのTVの舞台裏になんて興味もなければ、
ましてや堕ちぶれてゆく芸能人の凋落ぶりなんてコッチは知ったこっちゃない。
だけど、これを撮った監督は、
ストリップ劇場の人間模様から、雪に閉ざされた田舎町の哀しいドラマに、壮大で重厚な歴史大作、
果ては世界的チェリスト、ヨー・ヨー・マのドキュメンタリーに至るまで、
まるでカメレオンの如く変幻自在にノージャンルな題材を手掛けるカナダの鬼才、アトム・エゴヤン。
だから、一見陳腐ともとれるこんな物語も、
エゴヤン流の傑出したセンスの映像と観る者を妖しい気分にさせるまるで催眠術のような語り口で、
人間の心の暗部という“はらわた”を否が応にも引きずり出す格調高いドラマに仕上げられている。
テイスト的には、本作は監督の名を世界に知らしめた傑作 『エキゾチカ』 に最も近いと思うけれど、
いずれにせよ、どんなにノージャンルで映画を撮ったとしても、
向けられる監督の、ヘビのような視線の矛先はいつも同じ……。
そんな独特の臭気を放つエゴヤン演出に、
ベーコンとファースのネチっこい演技が相まって、なんとも言えない暗さと重さが全篇に漂っている。
だからもちろん、一方の女優からは潜在的なエロスが引き出されて、
それに応えるべくアリソン・ローマンが渾身の体当たり演技で見せてくれている“濡れ場”も本作の観どころだ。
とにかくローマンが可愛い! そしてエロい!

彼女の、どちらかといえば“ロリ顔”が不必要に醸し出すギリギリのエロさが、
ほぼ確信犯的にコチラの欲情を絶え間なく煽ってくるから、
めくるめくうちに観客はドラマの陰部に引きずり込まれ自我を失う快楽を登場人物たちと共有することになる……。
やはりエゴヤン、おそるべし!

そしてラストに感じる消化し切れないダークな後味は、
クダラナイといいながらも芸能人の離婚会見なんかを興味津々で見てさらには酒の肴にしてしまう、
ボクたちTVやスクリーンの前の観客の渇いた欲望……。

この、ハリウッドにもヨーロッパにも類を見ない、
例えばうなじをペロッと舐められてゾワッとくるような皮膚感覚のエゴヤン・テイスト。
だけど、一度味わったらやみつきだ。

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アマンダ・セイフライドがちゃんと脱いでいるだけで上出来!
『クロエ CHLOE』(2011/06/02)

そうなんですよお父さん! まぁ一方のジュリアン・ムーアはまるでカメラがないかの如く脱いでくれる女優なので、
濡れ場になれば(濡れ場じゃなくたって)今回も確実に脱ぐと安心していたものの、どーせアマンダ・セイフライドは、
現在赤丸急上昇中の若手筆頭株だし、脱ぐといったってせいぜい“下乳”か“横乳”をチラっと見せる程度だろうと、
だけどそれでもいいやと思っていたんだけどそうじゃなかったんです!(まぁムーアと較べたらやっぱ控えめだけど)
というワケで昨日の映画サービスデーに観に行ったら、もう盛りも過ぎてチ○ポも何も勃たなくなったお父さん方と、
今やすっかり乾いたゾウキンみたくなってしまった奥さん方で(メチャクチャ言ってるよね)ケッコウな盛況ぶりだった、
『スウィート ヒアアフター』『アララトの聖母』といった秀作で知られるカナダの鬼才アトム・エゴヤン監督の最新作、
『クロエ』は、ファニー・アルダンとエマニュエル・ベアールが共演した2003年のフランス映画『恍惚』のリメイクだ。

映画は、夫に浮気の疑念を抱いたある女医が、夫の雄としての本質を知るべく高級娼婦を雇ってワザと誘惑させ、
その反応を報告させるというオリジナルのプロットを踏襲しているんだけど、それ以外は、オリジナルとかなり違い、
ムーア演じる女医の静止をムシしてセイフライド演じる娼婦が夫を次々と誘惑し、彼女の日常を浸食してゆくという、
ストーカー系サイコ・スリラー風味の仕上がりになっている。で、そうしたことで話の説得力はかなり弱まっているし、
ラストも超後味が悪いので、オリジナルが好きだという人はきっとこのリメイクには怒るんじゃないかと思うんだけど、
そこはそれ。個人的には娼婦の哀しみを狂気と紙一重に描いたあたりが『エキゾチカ』の監督作っぽくて好きだし、
だいたいセイフライドを脱がした時点で「エゴヤン偉い!エゴヤン偉い!」とせんだみつお状態だった。(わかるか?)
というワケで『クロエ』は、“映画に何を求めるか”で評価がまったく違ってくるそこがエゴヤン(?)って感じの1本だ。

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とにかく、すんごいカラダなんです!

『クロエ CHLOE』(2009年・カナダ=フランス=アメリカ/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/96分)
【監督】アトム・エゴヤン
【出演】ジュリアン・ムーア、アマンダ・セイフライド、リーアム・ニーソン、マックス・シエリオット
【配給】ブロードメディア・スタジオ/ポニーキャニオン
【5段階評価】★★★1/2☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ シャンテ1(銀座)
【鑑賞料金】1,000円(映画サービスデー)

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アトム・エゴヤンのミステリ劇場へ 、ようこそ。
『デビルズ・ノット』(2014/11/20)

およそ2ヵ月に及び20本以上の映画を観てきたラピュタ阿佐ヶ谷の好評企画「ミステリ劇場へ、ようこそ。{2014}」。
ラストの1本は“戦後最大の誘拐事件”と言われた“吉展ちゃん誘拐殺人事件”が題材の(詳しくは知らないけど)、
『一万三千人の容疑者』。事件の名前を知っているのみでそれが東京五輪を挟む頃の話とまでは知らなかった。
芦田伸介が当時の主任刑事に扮し事件発生から2年3ヵ月後の最悪の結末までが重厚なタッチで描かれてゆく。
とはいえかなり昔の話だし警察の捜査があまりにも頼りないので映画としてはとくに前半ダルく観ていたものの、
映画はやがて事件より事件に人生を狂わされた人々の群像劇の態になってズッシリした余韻に浸らせてくれる。
とくに、小山明子演じる母親に事件の結末を伝えるのが最後の仕事という芦田刑事の苦渋の表情にグッときた。
というより事件の決着からたったの1年しか経っていないのにそれを映画化する東映という会社がやっぱり凄い。

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対する犯人・小原保役は井川比佐志。

一方、現在公開中の『アララトの聖母』等で知られる鬼才アトム・エゴヤン監督の最新作『デビルズ・ノット』は、
コチラは全然知らなかったんだがドキュメンタリーにもなったことがあるらしい“ウエスト・メンフィス3”と呼ばれる、
1993年、アメリカのアーカンソー州ウエスト・メンフィスで3人の児童がにわかには信じ難い残虐な手口で殺され、
挙句、およそズサンとしか言いようのない警察捜査で3人の若者が犯人にされたという事件が題材のミステリー。
本作では芦田伸介にも負けない名優のコリン・ファースが事件に疑問を抱いて独自に捜査を始める探偵に扮し、
彼が捜査を進めれば進めるほど事件が複雑怪奇さを増してゆく様子がこの監督らしい緻密なタッチで綴られる。
なにせ経緯やその後どうなったかはわかっている事件ゆえ謎解きの面白さやカタルシスとはまるで無縁なれど、
その代わり事件全体を覆う閉塞感が見事に画面に描出されてなんとも言えないダークな気分に浸らせてくれる。

なにしろ3人の死体が発見される件や裁判などで使われる写真が本物かと思うぐらいに生々しいことこの上なく、
それが煽動されやすく排他的な人ばっかりという南部の掃き溜め的な雰囲気と相まって嫌な汗が滲むこと必至。
陰惨な猟奇殺人が起きるたびにホラーやヘビメタが人間に悪影響云々と言われるのは日本もアメリカも一緒で、
それに加え『一万三千人の容疑者』の頃から30年も経っているのに警察のトロさはまるで変わらないんだから、
こうした事件そのものにもウンザリだけどそれ以上に人間ってなんなんだろう?と実にやり切れない気持になる。
エゴヤンは社会派映画みたいに誰かを糾弾するなどせずただそんな人間社会の異様さだけを突き詰めるのだ。
そして映画が終わると普段は忘れているだけでこういう事件が実はそこらにゴロゴロあることに観客は気づく…。
それが本作の核心。『スウィート ヒアアフター』などと同様アトム・エゴヤンのミステリ劇場はやはり後味が悪い。

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エゴヤンの作家性を知らないと少しキツいかも?

『デビルズ・ノット』(2013年・アメリカ/カラー/5.1ch/シネマスコープ/114分)
【監督】アトム・エゴヤン
【出演】コリン・ファース、リース・ウィザースプーン、デイン・デハーン、ブルース・グリーンウッド、ミレイユ・イーノス
【配給】キノフィルムズ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】新宿シネマカリテ1
【鑑賞料金】1,000円(映画ファンサービスデー)

「ミステリ劇場へ、ようこそ。{2014}」[9月21日(日)-11月22日(土)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
『一万三千人の容疑者』(1966年・日本/白黒/88分)
【監督】関川秀雄(『ダニ』『かも』『新 いれずみ無残 鉄火の仁義』)
【出演】芦田伸介、小山明子、市原悦子、岸輝子、村瀬幸子、井川比佐志、松本克平、織本順吉
【製作】東映東京
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞料金】招待券