2017年2月鑑賞映画メモ(新作8作品)

①『グリーンルーム』(2/11)

ひたすら真面目な『フロム・ダスク・ティル・ドーン』チックな映画だな…と
ちょっとだけ思った。途中まではもの凄くドキドキしながら観ていたんだけど、
敵のネオナチの数がやたら多い上に頭悪すぎなもんだから(だからネオナチ?)
後半の展開は一転安心しながら観てしまい、けっきょくカタルシスは今一つ…。
最近の自分の傾向なんだけどこういうテイストであまりに人がポコポコ死ぬと
逆にリアリティを感じず遠目になってしまうんだよな。グロにも厭きてきたし。
映像が凝ってるワリには悪夢感も稀薄で自分ももう歳なんだろうか?(歳です)
愉しみにしていただけに少し残念。そしてアントン・イェルチンは本当に無念。


ホント残酷映画にも厭きてきました。

『グリーンルーム』(2015年・アメリカ/カラー/シネスコ/DCP/95分)
【監督】ジェレミー・ソルニエ(『ブルー・リベンジ』)
【出演】アントン・イェルチン、イモージェン・プーツ、パトリック・スチュワート、カラム・ターナー、メイコン・ブレア、ジョー・コール、アリア・ショウカット
【配給】トランスフォーマー
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】新宿シネマカリテ
【鑑賞料金】1,500円(クーポン割引)

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②『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』(2/12)

距離的にはチュニジアよりもイタリアに近く移民や難民の玄関口となっている
小さな島を舞台にした昨年のベルリン国際映画祭、最高賞のドキュメンタリー。
難民たちの苦境と島民の平穏な暮らしという一見相容れない二極を描きながら
それを異世界同士の対峙とはしない作風に世界の“境目”について考えさせられ、
差別や分断を煽る声に社会が押し流されがちな今、本作の何をも声高に叫ばぬ
落ち着き払った姿勢には、そんな風潮への静かな抵抗を感じて頼もしいばかり。
社会派色より叙情性が胸を打つ完璧な構図や吸い込まれるような映像美も凄い
まさしく今観るべき傑作! 寝不足だったけど観ている内にどんどん覚醒した。


残酷映画より世界はもっと残酷だ…。

『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』(2016年・イタリア=フランス/カラー/114分)
【監督】ジャンフランコ・ロージ(『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』)
【配給】ビターズ・エンド
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ル・シネマ(渋谷)
【鑑賞料金】1,100円(日曜日最終回割引)

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③『サバイバルファミリー』(2/16)

酷いなこれは。前作が快作だっただけに矢口史靖復活かと思い期待したけど…。
あの未曾有の震災からもうすぐ6年という時期にこんな呑気な映画が創られる、
この国の情けなさ。「諷刺はなしの最後は家族愛で!」と釘でも刺されたのか、
話はひたすらつまらず適当にゴミを散らかし適当なサバイバルネタを散りばめ
後はなんの装備もなくキャンプに出かけた家族が農家体験してハイ、おしまい。
もう何が赦せないといってコメディを逃げ道にしているところがホント最悪!
最初はこの設定でゾンビや未知のウィルスに頼らないのがいいと思ってたけど
こんなならゾンビが出てきて一家が喰われてハイ終わりの方が面白かったよ!


今こういうネタで映画を創るのなら
何かもっと訴えることがあるだろ!

『サバイバルファミリー』(2017年・日本/カラー/117分)
【監督】矢口史靖(『裸足のピクニック』『ひみつの花園』『アドレナリン・ドライブ』『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』『歌謡曲だよ、人生は』『ハッピーフライト』『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』)
【出演】小日向文世、泉澤祐希、葵わかな、深津絵里、時任三郎、藤原紀香、大野拓朗、志尊淳、渡辺えり、宅麻伸、柄本明、大地康雄、菅原大吉、徳井優、桂雀々、森下能幸、田中要次、有福正志、左時枝、ミッキー・カーチス
【配給】東宝
【5段階評価】★☆☆☆☆
【鑑賞劇場】ユナイテッド・シネマとしまえん(豊島園)
【鑑賞料金】ポイント鑑賞

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④『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フランメンコ~』(2/18)

ショーアップされたステレオタイプなフラメンコのイメージがガラリと変わり
カルロス・サウラよりトニー・ガトリフが観たくなる秀作ドキュメンタリー!
スペインはアンダルシア地方のサクロモンテがフラメンコの聖地であるという
事実のほか、その成立にイスラームの文化が影響しているなんて初めて知った。
老若男女関係ないロマの生活や人生観に根差した歌詞の数々も面白く、中でも、
「信仰さえも君への愛のために質に入れた」という一節には心からシビレた!
こんな敬虔さと愛と生活苦を同時に感じさせる歌詞は今まで聴いたことない!
世界は広く、歴史は深く、文化は豊かであると実感できる旅に出たくなる1本だ


一つ部屋に集いし人々が順に踊る構成も◎。

『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フラメンコ』(2014年・スペイン/カラー/16:9/ステレオ/94分)
【監督】チュス・グティエレス
【出演】クーロ・アルバイシン、ラ・モナ、ライムンド・エレディア、ラ・ポロナ、マノレーテ、ペペ・アビチュエラ、マリキージャ、クキ、ハイメ・エル・パロン、フアン・アンドレス・マジャ、チョンチ・エレディア
【配給】アップリンク
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】有楽町スバル座
【鑑賞料金】1,400円(劇場鑑賞券)

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⑤『SYNCHRONIZER』(2/19)

偉い!何が偉いって最後キレイなおっぱい出してたあの若い女優さんが偉い!
いやぁー面白いといったら予測不能かつ大胆な展開で充分面白かったんだけど
それ以上にそこはかとない低予算映画の悲しみというか、こういう映画はもう、
自主製作でしか創られえないという日本映画の現実(?)に胸をしめつけられた。
むしろ監督がもっと若くて借金してでもこういう映画が撮りたかった!という
情熱でも感じられたなら印象もまた違ったんだろうけどそういうワケではなく
無難に隅々まで巧いから逆に物足りないという…。いや充分面白かったけど!
だからいっそ共同脚本だけでなく、『みちていく』の監督に撮ってほしかった。


頑張ってるけど如何せん安っぽいというか。

『SYNCHRONIZER』(2015年・日本/カラー/アメリカン・ビスタ/83分)
【監督】万田邦敏(『Unloved』『ありがとう』『接吻』)
【出演】万田祐介、宮本なつ、古川博巳、中原翔子、大塚怜央奈、美谷和枝
【配給】SYNCHRONIZER
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,200円(会員)

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⑥『エリザのために』(2/21)

ルーマニアの絶望感が凄い…。少し前にTVで、ルーマニアが五輪で輝いていた
ナディア・コマネチの時代を目指そうにも優秀なコーチがみないい給料を求め
海外に出て行ってしまうという話をやっていたが、本作でそれがよくわかった。
でも…好きなんだよな。ルーマニアや隣のブルガリアのどんよりした雰囲気が。
解説を読んでいろいろとスッキリしない苦手なタイプの映画かと思っていたら
緻密な構成の会話劇と仄かなサスペンスの風味で、ラストまで面白く観られた。
娘のためなら不正も厭わぬお父さんの愛人役のマリナ・マノヴィッチが素敵!
彼の国の暗部とともに人間心理の“グラデーション(英題)”部分を描いた傑作だ。


モヤモヤさせつつラストには微かな希望も。

『エリザのために』(2016年・ルーマニア=フランス=ベルギー/カラー/128分)
【監督】クリスティアン・ムンジウ(『4ヶ月、3週と2日』『汚れなき祈り』)
【出演】アドリアン・ティティエニ、マリア・ドラグシ、リア・ブグナル、マリナ・マノヴィッチ、ヴラド・イヴァノフ
【配給】ファインフィルムズ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】新宿シネマカリテ
【鑑賞料金】1,500円(クーポン割引)

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⑦『百日告別』(2/25)

素晴らしい。やられた。と言っても別にどんでん返しな展開があるワケじゃなく
ともに最愛の人を交通事故で亡くしたある男女の心の機微を丁寧に描いてゆく
ただそれだけの話なんだけど、それが法要本来の意味とともに語られ実に巧い。
当然だが、法要も形だけでは無意味という戒めがドラマに説得力を与えている。
とは言っても別に宗教行事を大切にしましょうなんて説教じみた映画ではなく
これはきっと“死は生に内包されている”というアジア的な死生観に基づく物語。
だいたい2人が出逢って恋をするとかいうありがちな話じゃないところが素敵。
台湾、そして台湾映画は本当に“大人”だとあらためて感じさせてくれる秀作だ。


まるで油断していたため最後は涙ポロポロ。

『百日告別』(2015年・台湾/カラー/95分)
【監督】トム・リン(『九月に降る風』)
【出演】カリーナ・ラム、シー・チンハン、チャン・シューハオ、リー・チエンナ、ツァイ・ガンユエン、アリス・クー、マー・ジーシアン
【配給】パンドラ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,200円(会員)

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⑧『トリプルX:再起動』(2/26)

す、凄い…。なんか勢いだけでめちゃくちゃだけどめちゃくちゃ面白かった!!
それにドニー・イェンが出ているといってもどれほどのものかと思っていたら
まるでヴィン・ディーゼルとのバディ・ムービーみたくなっているじゃない!
トニー・ジャーもいっぱい出てくるし『オーム・シャンティ・オーム』の美女
ディーピカー・パードゥコーンは華と色気ムンムンだしアジア色濃厚で最高!
ちょっと味が濃すぎ&猥雑すぎてワイスピのような人気とはならないだろうが、
個人的にはコッチの方が好き! こんな再起動なら大歓迎! ぜひ、新作創って!
とにかく、これだけ面白ければいい加減な脚本も演出も全然問題なし!満足!


こんなハリウッド映画を観る日が来るとは。

『トリプルX:再起動』(2017年・アメリカ/カラー/107分)
【監督】D・J・カルーソー(『テイキング・ライブス』『ディスタービア』『イーグル・アイ』)
【出演】ヴィン・ディーゼル、ドニー・イェン、ディーピカー・パードゥコーン、クリス・ウー、ルビー・ローズ、トニー・ジャー、ニーナ・ドブレフ、ロリー・マッキャン、トニ・コレット、サミュエル・L・ジャクソン、ネイマール
【配給】東和ピクチャーズ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ユナイテッド・シネマとしまえん(豊島園)
【鑑賞料金】1,300円(レイトショー割引)

極私的・2016年鑑賞映画ベスト10

『インサイダーズ/内部者たち』

す、すごい…面白すぎる!!! ビョン様最高! いや、これからは敬意を込め“ビョン兄貴”と呼ばせてください!
昨年末に 『ベテラン』 を観て以来今年は年初から三隅研次にかまけ久しく韓国映画のことなど忘れていたけど、
2016年も世界でいちばん熱く燃え滾るような面白い娯楽映画を見せてくれるのはやっぱり隣の国かもしれない!
方やなり上がり、方や復讐を狙うドン底の検事とヤクザが手を組み巨悪に立ち向かうなんてなんと最高な物語!
最後の最後までハラハラする精度の高い脚本、顔の脂汗がコチラへ飛んできそうなほどギラギラした登場人物、
そして、過激ながらも抑制の利いたバイオレンスと突然炸裂するユーモアと生唾を呑むお色気の絶妙な匙加減。
ウ・ミンホなんて監督今回初めて聞いたけど、この緩急自在かつ腰の据わった天才的語り口はただ者じゃない!
イ・ビョンホン(いや!ビョン兄貴!)が名優なのはわかっていたがここまで彼の芝居に惚れ惚れしたのは初めて。
現実的にはどうにもならない歪んだ社会に対する熱い怒りを胸のスカッとするエンタメに昇華する、これゾ映画!
ついに現れた今年のベスト10候補! なにしろ傑作! 『生き残るための3つの取引』 『新しき世界』 の次はこれ!
あのヘドが出るなんて生易しいレベルじゃない権力者ドモの“チ○コ酒ゴルフ”は園子温監督が絶対マネしそう?
でも、ちょっとやってみたい。(よしなさい!) はぁ~ホント面白かったぁ~。(虚脱感…) 韓国映画はやっぱいいゼ。

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『ソング・オブ・ラホール』

もう最高! ボクがその昔、インドはシク教の聖地アムリトサルからワガ・ボーダーを越えラホールを訪れた時は、
とにかく、あの街は旅行者を狙った泥棒が多いらしいから気をつけろ!というのがバックパッカー間の約束事で、
しかし実際は決してそんなことはなかったんだけど、それよりもっと芸術の街だということを教えてほしかったな!
これはまさしくパキスタン版 『アンヴィル』! 伝統音楽に愛と人生を捧げてきた夢を諦め切れないおじさんたち!
本作は、“音楽は罪”と解釈する極端なイスラーム主義政権や、タリバンの影響で身の拠り所をなくしてしまった、
パキスタンの古典音楽の音楽家たちが、もはや瀕死寸前の伝統音楽を守るべくそれなら世界へ打って出ようと、
音楽的共通点の多いジャズに挑み奇蹟のNY公演を果たすまでの軌跡を追った音楽ドキュメンタリーの大傑作!
彼らがYouTubeに挙げたジャズの名曲「テイク・ファイブ」のカバーを聴いてしまったらもう、この映画の虜も同然。

それにインド、パキスタンを知る身としちゃシタールやタブラの音色を聴いただけでうれしくなってしまうんだけど、
どこを切ってもスーパーテクニシャンとは思えない“サッチャル・ジャズ・アンサンブル”の面々の味のある風貌と、
聴いた瞬間、目が点になる超絶的演奏とのギャップが最高でゆえにその不遇な音楽人生にも感情移入しまくり。
そしてそんな彼らがNYに往ったはいいもののビッグバンドとのリハが少しもうまくいかず(とてもシビアな舞台裏)、
さァどうなるのかと思ったら…もう“神が降りる”とはこんな時にいうんだとしか言いようのない、完璧な大団円…。
プロだねぇ~。さらには公演を大成功させ故郷へ帰ってからの彼らの姿がまた地味でいじらしくて涙ポロポロ…。
世界中が「分断」に向かいつつある今だからこそ、異なる音楽が愛し合い奏でるメロディには大きな意味がある。
とにかく必見! しかも9月にはサッチャルが初来日! 東京にいながらラホールへ往けるとはなんと贅沢なんだ。

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『歌声にのった少年』

ムリだ…堪えられなかった。劇場でこんなに泣いたのは久しぶり。お客さんが少なくてよかった。(よくねぇだろ!)
「世界は醜いけどあなたの声は美しい」 ホントに世界は醜いけどこういう映画を観ると希望はまだ棄てられない。
2013年にエジプトで人気の勝ち抜き歌番組で優勝し、アラブの希望の星となったパレスチナはガザ出身の歌手、
ムハンマド・アッサーフの実話を描いた、珠玉の子供映画にして胸が熱くなる青春ドラマにして最高の音楽映画。
これほど希望の星という言葉が似合う人もいないってぐらい、その物語はガザの現実が酷すぎるだけに感動的。
ハニ・アブ・アサド監督の奇をてらわない演出もストレートに胸を打ち、随所に彼の地の苦難を感じさせながらも、
そこをことさらには強めずそれだけはホントのアッサーフの歌声に平和への普遍的な願いを込めて説得力抜群。
クライマックスはわかっちゃいるものの当時の映像の効果も相まり実に比類なきカタルシスを体感させてくれる!
音楽で世界は変えられないかもしれないけどしかし文化は醜い現実と闘う最も強く美しい手段だと教えてくれる、
まさしく音楽つながりで 『ソング・オブ・ラホール』 と並ぶ本年ベスト入りの傑作! もう予告篇だけで涙が出る…。

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『淵に立つ』

凄い…凄すぎる。非の打ちどころがないだなんて容易に言うもんじゃないけどホントにないんだもの仕方がない。
こんな淡々としてるのに昂奮しすぎて息切れがしばらく止まらなくなるなんてとんでもない映画を観てしまった…。
ある平凡な家族の前に1人の男が現れたことでそれまでの日常が歪んでゆくというヘタをしたら退屈そうな話が、
こんなストレートに面白い超一級のサスペンスにして、胸を揺さぶられる超緻密な人間ドラマになってしまうとは。
今日びの赤裸々な映画よろしく過激な性愛描写や血がドバドバ流れるような暴力描写があるワケでもないのに、
一つ一つの場面に尋常ならざる緊張感が張り詰め、映画的磁力に溢れて一瞬たりとも目を離すことができない。
まるでカラーなんだけど昔の白黒の北欧映画や、『狩人の夜』 でも観たかと思うような後味悪くも抗い難い余韻。
今年の日本映画は確かに好調だけどここまでの映画的快感に酔える作品はまったく久しぶりという気がする…。

『クリーピー』 の香川照之さえ越える浅野忠信がなにしろ怪演で前半は彼の一挙手一投足に心を掴まれっ放し。
そして一気に時間が経つ後半も彼演じる八坂の“影”が物語を支配するかのような雰囲気で進むのがまた凄い。
ほかの役者も概ね好演ながら筒井真理子はとくによく彼女演じる章江は個人的に“人妻オブ・ザ・イヤー”決定!
とにかく、『クリーピー』 や 『葛城事件』 や 『ヒメアノ~ル』 以上にヘビーな話をある種の寓話性を漂わせながら、
赤裸々な場面をなしに描いて“何にすがればいいのかわからない”この社会の絶望感を表現しているのが偉い。
深田晃司監督の映画は初めて観たがこの人はきっと映画を徹底的に勉強した努力型の天才ではないかと思う。
ギャーギャー叫んでワンワン泣いてそれで“怒○”とか言ってるどこゾの邦画はこれを前に顔を赤らめるがよい!
単に面白い上に“業”について考えさせられるこれをベストに入れないなどもはや考えられないレベルの傑作だ。

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『この世界の片隅に』

よく大切な何かを表現する時に「かけがえのない」という言い方をするけれど
それをここまで真綿に水が沁み込むように感じさせてくれる映画は初めて…。
と言いつつ最近本作と同じ印象を得たのが山形ドキュメンタリー映画祭で観た
イラク戦争開戦前の市井の人々の素朴な日常を描いた『祖国―イラク零年』。
この映画でもかけがえのない日々が戦争に蝕まれてゆく過程が痛ましかった。
そんな風にドキュメンタリー映画を連想したのもそれだけ本作が普遍的な証。

とにかく戦争中の庶民の暮らしを肌理細かい丁寧なタッチで素晴らしく描いた
要は“それだけ”の映画かと思っていたら何もかもがそれ以上に面白くて驚き!
映画としてまずは存分に笑わせ驚かせながら日常が戦争に侵されてゆく感覚を
ここまでリアルに体感させるんだものもう本当に凄いとしか言いようがない。
のんの演技も完璧のひと言で苛酷な現実を生きる役柄との違和感が微塵もなく
もはやその声をずっと聴いていたいと思うほど映画を包み込んでいて圧倒的!

いろいろ悲しかったと思うけど、あの若さで早くもTVドラマと映画の双方に
後まで語り継がれる代表作を持っている女優なんて彼女以外に今誰がいよう?
何気ない日常の描写にこそ涙腺を刺激され、生きている実感をかみしめる…。
昨今の世界を取り巻く状況にまったく希望を感じられなくなっていたんだけど
ようやく自分にもまだできることがあるかもしれない…とそんな気になれた。
ありがとう。この歪んだ世界の片隅にこんな素晴らしい映画を届けてくれて。

しかし、昨年の『野火』も然りで、こういう映画がクラウドファンディングや
自主製作でしか創れず、またメジャーなメディアで紹介すらされないこの国が
この国の映画を取り巻く状況が悲しくて悲しくてボクはとてもやりきれない…

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『栄光のランナー 1936ベルリン』

何がオリンピック開催のメリットは国威発揚だそんな言葉今ドキ聞くとは思わなかったよオマエはナチスかボケ!
この映画でもオリンピック憲章が何を謳ってるかちゃんと言っとるだろうが豆腐の角で頭ぶつけて死んでしまえ!
もう腹立つ! …とまぁそんな気持もあったゆえかめちゃくちゃいい映画だった! 今年のベスト入り確実の傑作!
そして劇中にも登場するレニ・リーフェンシュタールのドキュメンタリー 『レニ』(これも大名作!)と一緒に観たい!
本作はナチス政権下で開かれた1936年のベルリンオリンピックで4つの金メダルを取るという偉業を成し遂げた、
アメリカ人陸上選手ジェシー・オーエンス(初めて知った)の雄姿を綴った今こそ観るべき胸アツ必至の伝記映画。
当時の緊張感漲る国際情勢と、レースの間だけは人種や地位から解放されるつまりは“10秒の自由”のために、
来る日も来る日も走り続けた彼の人生が見事相まった、まさに金メダル級のカタルシスを得られる人間ドラマだ。

映画はオーエンスと彼を支え続けた白人コーチとの友情を軸に進んでゆくんだけど、それ以上にグッとくるのが、
後半で描かれるナチズムに抵抗したがためのちに前線に送られたというドイツの走り幅跳びの選手との友情で、
そこじゃ最近話題となった“優生思想”もきちんと批判されているし、しかも最後もアメリカ万歳にはなっておらず、
80年前の話が差別や分断が当たり前と化しつつある“今”の世界の状況に向けて語られているのが素晴らしい。
正直「酷い!」っていうラストなんだけど少年との小さなやりとりがそれをわずかに救いもう涙腺は弛みっ放し…。
そして創り手が同じ映画作家としてレニに温かい共感を寄せているところも実によかった!(ぜひ 『レニ』 を観て)
そらスポーツだから1等賞目指してやるのは当然だけどそれ以上に大切なことがあるから4年に1回やるんだろ?
ホント、国威発揚なんてそんなもん掲げてやるくらいなら今からでも遅くはないオリンピックなんかやめてしまえ!

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『緑はよみがえる』

さ、寒そう…。いっそモノクロの方がよほど暖かみを感じられそうな、だけど、息を呑むほどに凄まじい映像美…。
第一次世界大戦下の北イタリア・アジアーゴ高原を舞台にイタリア軍兵士たちの苛酷な運命を描いた戦争映画。
その孤高の作家性においてまさに塚本晋也監督の 『野火』 と対をなす巨匠エルマンノ・オルミ監督の最新作だ。
直接的な戦闘シーンこそないが戦争の“地獄”とは本当にこういうものなのだろうと思わせる漆黒の静寂の中で、
ただいつ死ぬかわからない恐怖に怯える兵士たちの絶望だけが生々しく伝わってくるこんな映画は滅多にない。
先の見えない戦況に昂揚感などとっくに失せ、神も未来ももはや信じられず日に日に募るのは悔悟の念ばかり。
そして目の前の雄大な自然を見て人はようやく気づくのだ。自分たちはなんて愚かなことをやっているのか…と。

もちろん、彼らにそんな愚かなことをやらせているのは自分では決して戦場に行かない卑劣極まる権力者たち!
上映時間が76分と短めだからといって侮るなかれ。アンジェイ・ワイダと並ぶヨーロッパ最大の巨匠が醜い戦争、
そして過ちをすぐに忘れ去って同じことを繰り返す人間の愚かさに熱く静かな怒りを叩きつける途轍もない傑作。
最後に若き中尉が母への手紙にしたためる「人が人を赦せなければ人間とはなんなのでしょうか」という一文と、
監督がかつて出逢った羊飼いの「戦争とは休む事なく大地をさまよう醜い獣である―」という言葉が胸を打つ…。
本作を観た日はそのまま 『レヴェナント』 を観に行くつもりだったけどもう無理だった…。完全に打ちのめされた。
戦争に行かなくてもすむ時代に生まれて本当によかったと思う。そんな時代が決して終わらないように…。必見。

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『ソニータ』

ホント今年の音楽ものは傑作だらけだな。本作もまた 『ソング・オブ・ラホール』 や 『歌声にのった少年』 と並び、
音楽で世界は変えられないかもしれないけど、揺さぶることなら確実にできると心の底から思わせてくる大傑作。
ラッパーを夢見るイランに暮らすアフガニスタンの難民の少女が、女性が音楽を創ることに厳しい慣習を越えて、
自作の曲を世界に発信、ついにはアメリカへ渡るまでを追ったヘビーな話だけど希望に充ちたドキュメンタリー!
もはや生まれながらのラッパー顔に見えるその少女ソニータがスプーンをマイク代わりに自作のラップを披露し、
それに合わせてヒジャーブ姿の幼い女のコたちが愉しそうに踊るオープニングからもう心をつかまれること必定。
実はこの映画は8月の頭にNHKのBSで50分の短縮版が放送されているんだけど、そのカットされていた40分に、
世界の理不尽さや彼女がどれだけの困難と幸運を得て向こうにたどり着いたかが描かれ、何度も胸が熱くなる。

なにより本作がいいのはソニータのラップが純粋かつ抜群にカッコいいこと!(プロのアレンジを受けたとはいえ)
こんな世界の理不尽に対する怒りと祈りに充ちたラップを聴くのは初めて。(まぁ普段はラップに興味ないけど…)
ソニータの親兄弟や、イラン人の女性監督ほか彼女を支える周りの人たちとのドラマにもいろいろ考えさせられ、
排外主義が再び世界を覆いつつある今、いかにわかり合える者同士で手を取り合うことが大切かを教えられる。
ソニータの歌自体も泣けるけど、彼女の妹が姉の渡米期間が思いのほか長いと知って泣く件なんてもうムリだ!
ただ逆に彼女の存在がアフガニスタンにも知れ渡って家族が嫌がらせされないかとそれが少し心配にもなるが。
とにかく短縮版を観た時もめちゃくちゃ感動したけど全長版はもちろんそれ以上の感動! すごく勇気をもらえる。
ソニータが里帰りする件で映るアフガニスタンの風情も廃れているとはいえ旅情を煽られた。いつか旅がしたい。

sonita

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『エクス・マキナ』

90年代ミニシアター全盛期の頃だったら確実に今はなきシネマライズで半年はロングランしていたであろう映画。
いやぁーこれは面白いワ! 文句なしの傑作! どころか、久々に今年のベスト10に喰い込みそうな映画を観た!
もう、『スター・ウォーズ』 のようなタイプの作品に全然興味のないボクみたいな輩でも充分愉しめるSF映画だし、
知的だとか哲学的とかいうフレコミに身構えずとも難解さなどは皆無で“上品にいかがわしい”から絶対面白い!
ド派手な戦闘シーンもアクションもないただ人間とAIのカケヒキを描いただけの映画がこんなに面白いなんて…。
なにより、仄かな緊張感とともに全篇に漂う“エロチシズム”が素晴らしいし、スリラーとしての牽引力も確かなら、
人間の実存や感情の根源とは何か?という古典的なテーマも現代の重要な問題として深々と考えさせてくれる。
精緻な映像も無機質なものを美しく…というよりは産毛の1本1本までリアルに撮るような質感でしっとり艶かしく、
観客の安易な予想など裏切りつつも決して突き放すことなく様々な解釈を呼び起こすこういう終わり方も大好き。
娯楽性と芸術性をバランスよく併せ持った真に見事なSF映画としか表現のしようがない。本当に面白かった…!
あーボクも人里離れた山の中でエッチな体したAIと暮らしたい!(どちらかといえば痴女っぽいキョウコさん指名)
そして触んないけど“表情より下心を読み取ってもらってそれを言葉に出してもらうプレイ”を毎日したい!(変態)

exmachina

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『夢の女 ユメノヒト』

40年間、精神病院に入院していたものの震災で避難している内にとっくに完治していたことがわかった男・永野。
浦島太郎状態の彼はしかしただ1人忘れずにいた“初めての女性”に逢うため彼女の避難先の東京に向かう…。
『バット・オンリー・ラヴ』 で奇蹟の監督復帰を遂げた佐野和宏監督、もう1本の作品は大人の官能ラ“ヴ”ロマン。
もう大当たり…。『乃梨子の場合』 の監督なのである程度信頼はしていたけどよもやこれほど素晴らしいとは…。
なんとロマンチックで、人生の侘しさ、やるせなさに充ち、しかし切なく胸の温まる珠玉のラヴストーリーだろう…。
原発事故云々がストーリーに込められているのでそこがネックかと思っていたがそんなのはまったく杞憂だった。
むしろ、震災以降のこの国に漂うどこかオカしな空気をこんなに巧く物語に託した映画は稀なんじゃなかろうか?

もうファースト・ショットから胸がキュンとしてヤバイと思っていたけど、永野と西山真来が彼の駅で別れるシーン、
そして、初めての女性と再会してからの故・伊藤猛が“特別出演”を果たすカラオケのシーンでもう涙ボロっボロ。
2人がラブホテルの1室で想い出を作り変えるシーンの長回しは、マジで邦画史に残る屈指の名場面だと思う…。
どこか諦めを湛えながらもそれでも「人生は悪くない」と静かにしめ括るラストにコチラこそ心から「ありがとう」だ。
なにしろ一つ一つのシーンが愛おしくてたまらない、これゾ映画に人生を懸けている(きた)者たちの“愛”の結晶。
くしくも今ネットで日本映画について話題だけどどうかこういう小品を観ずに邦画はレベル云々と言うことなかれ。
間違いなく今年のベスト10選出は確実の傑作。ボクはこんな映画に出逢いたくて日本映画を観続けているのだ。

yume-no-hito

幻想、戦争、また幻想… 『エヴォリューション』&『ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち』&『はるねこ』

『エヴォリューション』

これは面白い。てっきり『エコール』の少年版みたいな映画かと思っていたら
エイリアンや宇宙船が出てこないだけでひたすらおぞましいSFホラーだった。
「意味がわからない“のが”面白い」なんて頭デッカチな通気どり映画は大嫌い。
でもこういう「意味がわからない“のに”面白い」映画は映画にもよるが大好物。
少年と女性しか住んではいない、いずことも知れぬ謎の島で母親と暮らす少年。
しかし、そこは夜ごと彼らが人体実験のモルモットにされる異形の島だった…。
まるで原作ものみたく話は暗喩的で過去のSF映画の名作を彷彿とさせるけど、
通底する世界観はやはり『ミミ』『エコール』と同じで、この監督オリジナル。

個人的にこういう話は成長期には特有の、だんだん変容してゆく自分の肉体や
世界に対する漠然とした不安心理のメタファーなのかと思ったりするんだけど
そんな深読みをせずともなにしろヌメリ気のある映像が不気味ながらも美しく
ゾクゾクするように雰囲気が淫靡だから粗筋が「?」だらけでも全然厭きない。
そして併映の同監督の短篇『ネクター』は上映する回とない回があるようだが
これがまた意味不明なのにやたらエロ面白くてびっくり!(むしろ好みはコッチ)
ボクも女王様に塗りたくったあの蜂蜜舐め(よしなさい)ってぐらい美味しそう。
まさにネクター(甘い)な映画。ボクは女王様と中年だけのそんな島に住みたい!

evolution

旦那(ギャスパー・ノエ)の映画は嫌いだが
奥さんの映画は性に合うのかフシギと好き。

『エヴォリューション』(2015年・フランス=スペイン=ベルギー/カラー/スコープサイズ/DCP/81分)
【監督】ルシール・アザリロヴィック(『ミミ』『エコール』)
【出演】マックス・ブラバン、ロクサーヌ・デュラン、ジュリー=マリー・パルマンティエ
【配給】アップリンク
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】アップリンクX
【鑑賞料金】1,000円(会員)

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『ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち』

第二次世界大戦前夜のチェコスロバキアから海外の安全な場所に里親を見つけ
その地に子供たちを疎開させる「キンダートランスポート」と呼ばれる活動で
669人のユダヤ人の子供たちをナチスの迫害から救い出したイギリス人実業家、
ニコラス・ウィントンの偉業と、生き延びたかつての子供たちを追った感動作。
前から楽しみにしていた作品だけど、しかし今この瞬間にもシリアの子供らを
世界が見殺しにしている状況を考えると、なんともいたたまれず逆に辛かった。
とはいえウィントン氏のことは初めて知ったし、“日本のシンドラー”と呼ばれる
杉原千畝を心から尊敬する身としてはやはり襟を正して観るべき1本であった。

感動的なのは氏が救った子供たちよりもむしろ救えなかった子供たちに対する
辛い贖罪の気持から、この事実をずっと妻にさえ言えなかったというところ…。
杉原も戦後、自分の偉業をずっと黙っていたというが真に偉大な人はみな同じ。
どうしたらこういう人たちの爪の垢を世界の指導者たちに呑ませられるのか?
不必要な再現ドラマやウィー・アー・ザ・ワールドみたいなクライマックスが
言っちゃあなんだが24時間TVっぽくてちょっぴり鼻白む部分もあるんだけど、
自分には何ができるか?を考えさせてくれる、いいドキュメンタリーだと思う。
今、この時にもシリアの子供を助けている人々の作品もいつか創られてほしい。

nickys-family

ただみんな状況やケースが違うのに
誰も彼も“どこそこのシンドラー”と
ひと括りにするのがどうにも違和感。

『ニコラス・ウィントンと669人の子供たち』(2011年・チェコ=スロヴァキア/カラー&BW/1:1.85ビスタ/101分)
【監督】マテイ・ミナーチュ
【出演】ニコラス・ウィントン、ジョー・シュレシンジャー、ヴェラ・ギッシング、ベン・アベレス、ダライ・ラマ14世、エリ・ヴィーゼル、クラーラ・イソヴァー、ミハル・スラニー
【配給】エデンポニーキャニオン
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】YEBISU GARDEN CINEMA
【鑑賞料金】1,000円(会員・2ポイント使用)

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『はるねこ』

いやぁ~いい具合にワケのわけらない映画だった。こんな映画久しぶりに観た。
粗筋を読んでもなんの話かサッパリだし、観ても人にどんな映画か説明できん。
喩えるなら町田康を片手に足立正生と七里圭の映画を同時に観たような気分?
もっと“アピチャッポン”風にスヤスヤしちゃう睡眠導入映画かと思っていたら
絶妙なところに歌やユーモアがぶっ込まれて賑やかだし音響設計も実に見事で
難解ながらに作者の思想も随所に感じる、いろんな意味で頼もしい映画だった。
今ドキこんなアナクロな映画を20代の若い監督が撮るというのがうれしいし、
それに胸を貸す田中泯やりりィや川瀬陽太といった、名優たちの存在感も素敵。
このテの映画にケチをつける時よく「オ○ニー映画」なんて言ったりするけど、
しかしこう“つながり”だの“絆”だのがチヤホヤされる糞気持悪い社会になると、
こんな映画こそ愛しいというか、人間の孤独を感じさせてくれて貴重に思える。
実際、本作はそこらの映画よりちゃんと社会や世界に目を向けている…と思う。
流行の“わかりやすい”に対抗して無残に負ける、こういう映画も時には好きだ!

haruneko

しかし何の話かよくわからなかった。

『はるねこ』(2016年・日本/カラー/85分)
【監督】甫木元空
【出演】山本圭祐、岩田龍門、赤塚実奈子、高橋洋、川瀬陽太、川合ロン、りりィ、田中泯、福本剛士
【配給】Miner League
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース
【鑑賞料金】1,200円(会員)

ペドロ・アルモドバル監督作品レビュー一覧(旧ブログより)

新宿2丁目原理主義!
『バッド・エデュケーション』(2005/04/16)

画像観る者を心地好く酔わせる絶妙のストーリーテリングと、
映画としての完成度の高さは充分に理解できるものの、
どうしても肝心の主人公ベニグノに感情移入できなかったため
個人的にはもうひとつの印象だった前作『トーク・トゥ・ハー』。
もともと濃厚変態テイストとキッチュな色彩バクハツの作風で、
スペインのイロモノ監督と目されていたペドロ・アルモドバル監督だが、
『私の秘密の花』(1995)あたりから
奇抜な映像よりも琴線に触れるドラマ性に重点を置くようになり、
『オール・アバウト・マイ・マザー』と『トーク・トゥ・ハー』、
そして“同胞”おすぎの涙の大絶賛で見事良識派映画ファンの支持を獲得した。
ボク個人としてはやはり、かなり昔の 『バチ当たり修道院の最期』(1983)や、
欲望剥き出しの三角、四角、五角関係が笑えて面白い 『欲望の法則』(1987)、
あと足フェチ・マニア御用達の 『ハイヒール』(1991)なんかが好みなんだけれど、
もとよりこの監督の作品は、映像の奇抜さだけで映画自体は退屈なものも意外と多い。
それが最近になってドラマを中心に物語を語り出したらこれが思いのほか巧くて、
あれよあれよという間に世界の誰もが認める大作家になってしまった。
そんなアルモドバル監督待望の最新作『バッド・エデュケーション』を、
新宿高島屋にあるテアトルタイムズスクエアで。
名前のとおりここも東京テアトル系なので、水曜は入場料金一律1,000円だ。大いに利用しよう。
この劇場は、単館としては都内随一のスクリーンの大きさを誇るいい映画館なんだけど、
ただ一点座席の前後の間隔が若干キツくて、
肘掛けのカップホルダーの位置がやけに手前すぎるのが難点と言えば難点。
(また映画館にケチをつけてしまった。でもホントだもん)

映画監督エンリケのもとに、初恋の男性イグナシオが16年ぶりに現れる。
俳優と自称するイグナシオは、ふたりの寄宿学校時代の体験をもとにした脚本を持参していた。
しかし、その脚本を読み進めるうちイグナシオの素性に疑問を抱き始めたエンリケは、
脚本に隠された悲劇と衝撃の真実を知ることになる…。
今回のこの映画の一番の見どころは、なんと言ってもミステリーとしての面白さ。
話を辿ればなんのことはない2時間ドラマや昼の連ドラのような物語が、
観る者をグイグイとスクリーンに引き込む緻密でしかもわかりやすい構成と、
監督の、彼自身の自伝的要素がかなり濃い脚本に対する強い思い入れ、そして、
あまりの濃厚さに思わず吹き出しそうになるほど分厚く描かれる男同士の愛の描写によって、
感情移入できるかどうかはともかく観応え充分の愛にまつわるミステリーとして仕上がっている。
書いたとおり、登場人物の心情に共感できるかできないかは観る人それぞれだと思うけど、
熟練の域に達したドラマ運びの妙は彼の作品群のなかでも随一だとボクは思う。
原点回帰とばかりに監督面目躍如の変態テイストも随所に炸裂していて面白い。観て損はない。
やはり、男たるもの下着は真っ白なブリーフで左斜め上が基本である!(ボクはトランクス派ですが)

主演は、
主演作が次々と公開されるわりには日本での人気はコリン・ファレル級にイマイチな
ガエル・ガルシア・ベルナル。そんな、
役者魂を懸けてガンバっている彼の“ゲイ達者”ぶり(うまい!)を楽しみながら観るのも一興だ。

bad-education

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 オカンとワタシと、全然、オトン
『ボルベール〈帰郷〉』(2007/07/12)

今は帰省先が名古屋の方なので、
奥飛騨の生家に足を向けることはないんだけど、
(家自体は残してあって軒先を人に貸している。“ガラクタ屋”)
数年前まで盆暮れのたびに飛騨の方へ帰っていた頃は、
やっぱり、他界してから何年が経過しても家の中に、
親父が“いる”ような気がしたモンだった……。

何かの拍子に天井がミシッと鳴ったりすると(古い家なので)、
酒呑んで上の部屋で寝ていた親父が起きる時のような感覚がしたし、
実際、死んでしばらくの間は、お袋の元を親父は何度か“訪れて”いたらしい。
それはまぁ姿を“見た”とかじゃなく気配を感じたってだけの話なんだけど、
朝、お袋が御手洗の方で顔を洗っていると、そうそう忘れるワケはない、
自分の亭主の酒&オヤジ臭い“匂い”がかなり強く漂っていたという。
言えばそれだけの話とは言え、しかし当のお袋は無性に腹が立ったらしく、
部屋に戻ると、「散々苦労させておいて、今度は化けて出るつもりか!」
と仏壇に向かってそれこそ散々、悪態をついたそうだ(仏様、大迷惑)。
その話を聞いた兄貴は「ヘンな話するな」と少々ビビッっていたけど、
ボクはなんか「それ、いい話だな」とじ~んとしたことを憶えている。

だけど、今、もしも本当に死んだ親父がボクの元を訪ねてきたら、
ボクはいったい、親父に向かってどんな話がしたいだろうか?
何か親父に聞いてほしいような胸の内ってあるだろうか?
何を考えながら、毎日毎日、あれだけの量の酒を呑んでいたのか?
まぁそれ以前に照れ臭すぎて話しかけることさえできない気がするけど(親父はシャイだった)、
30代半ばになり、最近、酒呑んでる時くらいしか人生楽しいと思えなくなってきたボクに、
先人(?)として親父は何か、適切なアドバイスでもしてくれたりするんだろうか…?

『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』『バッド・エデュケーション』で知られる、
スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督の最新作、『ボルベール〈帰郷〉』を観ていて、
ボクは母親じゃなくて(生きてるし)、けっきょく大人の男同士の会話もすることなく、
20歳の時に死んでしまった親父のことをほんの少しだけ想い出した……。
ま、上に書いた話は本篇とは関係ないと言えばまったく関係ない話なんだけど?

10代の頃、母親を火事で失くしたライムンダ(ペネロペ・クルス)は故郷を離れ、
失業中の夫と15歳の娘パウラ(ヨアンナ・コバ)のために毎日忙しく働いていた。
ところがある日、肉体関係を迫ってきた父親をパウラが誤って刺し殺してしまう。
ライムンダは死体の処理に奔走するが、
同じ頃、近所に暮らす姉のもとには、火事で死んだはずの母親が現れて……。

働けど働けど日々の暮らしは一向に楽にはならず、
かつて熱烈に愛し合った男も今やダメ亭主になり下がり、
挙句、年頃になった娘の体をいやらしい目で見るようになって、
果ては本気で手を出そうとし抵抗した娘に刺されて死んでしまうという、
そんなどんより気が滅入りそうなエピソードで始まる三代の母娘の物語を、
スペインの名匠は決して湿気っぽくは描かず、燦々と降るラテンの陽光の下、
時にユーモアさえ散りばめながらいつものようになめらかな語り口で描いてゆく。

ほとんど観ているワリにそれほどフェイバリットというワケじゃないんだけど、
やはりアルモドバルの映画はどこかミディアムな楽しさでついつい観てしまう。
基本、楽しいから臭くないし嫌じゃないし切なさもわかって時には胸にグッとくる。
なんでも最初から泣かせればいいと狙っている一部の日本映画とはえらい違いだ。

そんな、よどみのない演出、キャストの人間味、鮮やかな色彩設計、心くすぐる音楽と、
鉄板のアルモドバル・テイストで掴み出される大地に生きる女たちの生き様で、
今回も監督はモノの見事に女性客のハートをグイグイ捉えて離さない。
だけど、映画がたくましく生きる女性の歓びや悲しみを巧く描けば描くほど、
独りで観ているコチラ、男としてはそのウチなんだか申し訳ない気になってきて、
すべての女性に対し土下座して謝りたいような気にさえなってくる(謝らないけど♪)。
けっきょくみんな男が悪い。郵便ポストが赤いのも電信柱が長いのもみんな男のせいなんだ。
ボクもいつの間にか親父と中身がソックリになってきたし、恋した女を泣かせるのは嫌だから、
ボクはまだまだ結婚できないし結婚したいなんて思わないんだ(ウソ。まだまだ遊びたいだけ)

あたかも上質なミステリーのように小気味好いドラマの果てで、
やがて目の前に現れた母が愛する娘に明かす“女の秘密”とは…?
クッキングペーパーに血がジュワ~と滲んでゆく様子を捉えるあたりなど、
悪趣味をアートに見せるワクワクするようなショットもいくつかあるものの、
かつての変態性はすっかりなりを潜めアルモドバルもマトモになってしまったが、
とにかく手堅く楽しめる、本作はペドロ・アルモドバル版“独占!女の120分”的な佳作。

ただ、下世話な男目線としては物語そのものよりなによりも、
大きくて真っ黒な瞳に思わず吸いつきたくなるようなエッチな唇、
そしてお願いだから埋もれてそのまま窒息死したいほど豊かな胸元も露わに色気全開の、
ペネロペ・クルスのセクシーさにウットリするだけでも入場料を払う価値はゼッタイに大アリだ!

volver

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O型の血に響くラテン映画二本立!
『抱擁のかけら』(2010/02/27)

よくA型は農耕民族の血、B型は遊牧民の血、そしてO型は確か戦士の血だなんて風に言われ(AB型は何?)、
日本人にイチバン多いのがA型というのは知られた話なんだけど、たかが血液型で…という意見も確かながら、
しかし日本人にA型が多いというのはなんか納得できる話だし、B型が遊牧民というのも実にいい喩えだと思う。
で、なぜ○○民から急に戦士なのかはともかく、Oが戦士というのは要は“血の気が多い”という意かと思われ、
そこでボクはO型なんだけど、一見穏やかそうな人間に見られながらその実確かに、ボクは元々血の気が多い。
まぁそれは裏を返せば単純て意味なんだろうけどなるほどボクは単純だしそれは映画の嗜好を見ても明らかで、
そして単純だから、たとえばA型の人と話していると「そんな細けぇコトどーでもいいじゃんよ」と思うことは多いし、
逆にBの人は考え方が広くて(ツッコミやすいけど)面白ぇな、と思うことが多い。そらAとBは合わんて言われるワ。

で、次にO型男性から血液型で異性を見ると…って話で、まぁ性格が云々なんて話は面白くないからいいとして、
ボクはここ何年ずっとカノジョもいないから独り身の侘しさを紛らわすためにタマ~にエッチなお店にイク時があり、
なかなか人に理解はされないものの、ボクはそんな遊びだって映画や音楽と同じ基本はライヴと思っているから、
コチラが“コール&レスポンス”の精神で臨めばいかな相手でも楽しめる、楽しみ合えるものだと思ってるんだけど、
しかしそういう一期一会の相手でも、時々いやァ~このコは打てば響くな、今日はホントに“いい試合”だった!と、
握手さえしたくなるような人に当たる時がありそしてそんなコに限って訊くとフシギなほどO型だったりする(ホント)。
前に何かで、O型は割り切り上手なら、エッチをスポーツ感覚で捉える傾向があるなんて読んだことあるんだけど、
確かに腑に落ちるところがあり、まぁ割り切り上手は…だけどエッチなんて基本はスポーツみたいなモンだと思う。

…と、冒頭から16行も費やしてけっきょく何が言いたいかといえば、O型女性とはエッチの相性がいいという話で、
だからこんなA型の多い日本より、イッソO型ばかりの南米に生まれれば楽しい人生だったかもしれないなぁ~と、
もちろんそんなこと本気で思っているワケはないんだけど、独り身が長くて毎日毎日があんまり寂しいモンだから、
O型の多いラテン圏の映画をつづけて観たついでにこんな切り口でその寂しさを嘆いてみたかったっていうしだい。
だけど、その内の1本、スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督の『抱擁のかけら』(なんだこの邦題?)を観たら、
開巻いきなり盲目の男性が大~きなオッパイのブロンド美女とラテン系の情熱的なエッチをするという場面があり、
どんな関係なんだろ…?と思っていれば、道案内をしてもらったついでにソッチの案内もしてもらったという話らしく、
そんな簡単に事が運ぶのか!?と、やっぱラテンだよなぁ~と憧れてしまった(でもスペインはA型が最も多いんだと)。

というワケで『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール』のアルモドバル監督最新作は、
上にも書いた通り盲目の男性が主人公のドラマなんだけど、ハリー・ケインという名で脚本家をしている彼の元に、
ある日、記憶から消したハズの人物の息子が現れたモンだから、彼は一度は封印した過去と向き合うことになる。
14年前、彼は、マテオっていう本名で映画監督として活躍していたんだが、新作映画のオーディションで出逢った、
ペネロペ演じる女優志願のレナと激しい恋に落ち、ところがレナには70を過ぎて嫉妬深い上に超が付く絶倫という、
じじぃのパトロンがいたために散々恋路を邪魔されて、挙句2人の愛は、悲劇的な結末を迎えていたのだった……。
かつて、視力とともに大きな愛を失った1人の映画人が、その苦しみや過去から解き放たれるまでを描いた物語で、
正直、話はどーでもよかったんだけど、そこがこの監督の名匠たる由で、見せ方が巧いからソツなく楽しめてしまう。

マドリードを舞台にした2008年と1994年、それぞれのドラマを巧く絡ませながら映画はあたかもサスペンスの体で、
監督自身が今までに手掛けてきた女性映画を思わせる劇中劇をラストでまんまと活かして絶妙な余韻を残すなど、
ガッツリ腹持のする愛憎劇と映画にまつわるアレコレが1本で同時に楽しめてしまう本作は映画と愛に関する寓話。
その、ラテンチックで密度の濃ぃ~愛憎劇は滑稽でもあり、とくに、絶倫じじぃのレナに対する執着ぶりは奇々怪々、
読唇術の件は笑わせようとしているとしか思えずだけどそのコミカルとシリアスのメリハリが相変わらず抜群だから、
コチラには縁のなさそうなどーでもいい話でもつい乗せられるし、フツーに、「いい映画を観たなぁ~」と思えてしまう。
冒頭のブロンド美女も素晴らしいけどペネロペのまさに垂れを知らぬ美乳はもう国宝級で、彼女を観に行くだけでも、
充分に元は取れるし、隅から隅まで行き届いたその映画的サービス精神こそまさにラテンの真髄。監督何型かな?

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アルモドバル×イグレシアで今年はグラシアス!
『私が、生きる肌』@「第8回 ラテンビート映画祭」!(2011/09/20)

去年の「ラテンビート映画祭」に行った時のブログを読み返したら「来年からも行こう!」とか書いてあったワリには、
直前までまるで行く気はなかったんだけど(ど~にもバルト9が苦手で…)、気なしに、スケジュールをチェックしたら、
ワリと都合のよい日時に「オォ、これは観たい!」と思う映画の上映が組まれていたため急遽、観に行くことにした、
今年の「第8回 ラテンビート映画祭」。2作品観て1本目はティーチイン付きだったから大いに賑わっていたんだけど、
ツブラな瞳の映画祭ディレクター、アルベルトさんをまたまた見られてよかったよかった。映画配給ワークショップの、
ゲスト講師として氏の話を聞いたことが本映画祭に興味を持つキッカケだったんだが、彼の独特のキャラクターこそ、
ボクは映画祭の色としてもっとフィーチャーされるべきではないかと思う。そしてキャラといえば↑の絵の女のコこそ、
おなじみ映画祭のマスコット“ドニータ”で、今年は日本の復興を祈り美空ひばりを意識したんだという(わからねー)。

というワケで初日に観た1本目が、これまたワークショップでアップリンクの浅井さんが今年のカンヌで観たっていう、
そして権利を買おうか迷うほど面白かったよと言っていた、日本でも根強い人気を誇るスペインの世界的映画作家、
ペドロ・アルモドバル監督の新作『THE SKIN I LIVE IN』(英題)。確か浅井さんがぜ~んぶネタバレしたハズだけど、
ほとんど憶えてなかったのでガッツリ楽しむことができた。ネタバレに過敏な人いるけど人の記憶などそんなモンよ。
ただ、そんなモンとはいえさすがに一般公開もまだ先だし、確かにこれは要の部分をネタバレしちゃうとマズいんで、
細かいストーリーについてはいっさい触れない。ただ本作は公開されたら賛否両論も必至の問題作にはなると思う。
個人的にはズバリ、面白かった。予告篇だけでもその片鱗がわかる通り本作の内容を簡単に言うとしたら、これは、
殺人、凌辱、監禁、皮膚移植に性転換とあらゆる過激な要素をギッチギチに詰め込んだアートな変態怪作スリラー。

アントニオ・バンデラスが久々のアルモドバル作品出演というのも話題だけど(『アタメ 私をしばって!』以来か?)、
それよりもここ最近ずっと“女性映画の巨匠”として女性の映画ファンから絶大な支持を受けていたアルモドバルが、
まさしく原点回帰とばかりに“バチ当たり”なバッド・テイストのオンパレードを披露してくれているのが実にうれしい!
近頃のスペイン映画はなんといってもホラーが元気だし、アルモドバルもようやっとそうしたエクストリームな方向に、
今後は舵を切ってゆくということなんだろうか? もちろん、そんなエクストリームな中にも絶妙なるユーモアがあるし、
ユーモアというよりも感動すればいいのか笑えばいいのか日本人的には少々戸惑うようなラストもかなりブラックで、
とにかく、いつもみたいなドラマ的感動を期待すると大ヤケドしかねない映画だけどその分観る価値は大きいと思う。

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まさに賛否を蛇行のキノドライヴ!
『アイム・ソー・エキサイテッド!』(2014/01/30)

ひたすらマジメな映画を撮り続けた巨匠の遺作の後に超不マジメで下品なコメディを観るというのもアレなんだけど、
お次はまだまだこれからのスペインが誇る巨匠ペドロ・アルモドバル監督最新作『アイム・ソー・エキサイテッド!』。
ただ印象から今回はさすがに観なくてもいいかなぁ…と思いつつ、でもやっぱりこの監督の映画もずっと観ているし、
なにより前作の『私が、生きる肌』がかなりいい感じに頭オカしかったのでこれも印象より凄ぇ映画かもしれないと、
気を取り直して観に行ったんだけど…まぁ結果的には、やっぱりわざわざ劇場で観るほどじゃなかなったかなぁ、と。
そりゃまぁ確かにおネエの客室乗務員とキ○ガイ客らがこぞって繰り広げる飛行機コメディはかなり頭狂っているし、
それをアルモドバルの原点回帰と言おうと思えば言えなくもないんだけど、しかし反面これもやはり小手先というか、
巨匠の軽いお遊びくらいにしか思えずそれこそ飛行機に乗った時に小さいモニターで観れば充分ってな感じだった。

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でもブランカ・スアレスは好き!

エブリバディがウォンツ・サムしたらアメリカがトランプの手の中に!? 『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』短評

自分の好きな手合のバカで陽気なアメリカ人がたくさん出てくる映画だった!
そしてこの映画の登場人物のほとんどが今は貧乏でトランプを支持してそう!
(なんて観ながら思っていたら本当にトランプが大統領に当選しちゃったよ…)
名門大学野球部に所属する若者たちの新学期目前の3日間を描く青春ドラマ。
後半ちょっと長く感じられたので2日間ぐらいでちょうどよかったと思うけど
大したことはなんにも起きないのに巧く見せちゃうのがこの監督の面目躍如!

元々文系だし入学当時は童貞だったのでこんな陽性な青春とはまるで違ったが
それでも大学1年の時は学生寮に住んでいたので当時のことをいろいろと…。
寮の先輩に体育会系風の人が多かったから自分より彼らのことを想い出して。
当時は1コ上でも大人に見えるそんな先輩たちの会話が面白くて好きだった。
一緒に風呂に入っていたある先輩が湯船に浸かりながら「ナースはいいぞォ~
なんでもしてくれるぞォ~」なんて言っていたのをなぜか今もよく憶えてる。

きっと多くのアメリカ人はこの映画のような時代に戻りたいんじゃないかな?
別に裕福じゃなくても酒とHのことだけ考えてバカやってりゃよかった頃に。
だけどトランプがそんな時代にアメリカを戻してくれるとはとても思えない。
外見から言動から彼はいかにも80年代で思考が止まってるような感じだけど
日本も同じであんな時代に戻れるほど世界は単純じゃなくなっているのに…。
そういえば主人公の彼女だけはヒラリー派だっただろうな。今頃絶望してる?

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本作にそんな懐古趣味はないけども。

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(2016年・アメリカ/カラー/アメリカンビスタサイズ/117分)
【監督】リチャード・リンクレイター(『バッド・チューニング』『恋人までの距離〈ディスタンス〉』『ウェイキング・ライフ』『テープ』『スクール・オブ・ロック』『ビフォア・サンセット』『がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン』『スキャナー・ダークリー』『ファーストフード・ネイション』『6才のボクが、大人になるまで。』)
【出演】ブレイク・ジェナー、ゾーイ・ドゥイッチ、グレン・パウエル、ワイアット・ラッセル
【配給】ファントム・フィルム
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ヒューマントラストシネマ渋谷
【鑑賞料金】1,000円(TCG会員ハッピーチューズデー)