「芹明香は芹明香である!」関連レビュー一覧(旧ブログより)

男と女にゃあれしかないよ、芹明香バンザイ!
『狂棲時代』(2014/05/01)

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映画評論家の町山智浩さんは、ミシェル・ロドリゲスをして「あたい」という一人称が最も似合う女と仰っていたけど、
日本でこの一人称が最もしっくり来る女優といったら(元から日本語だし)やっぱり彼女、芹明香じゃないかと思う―。
そして「男と女にゃあれしかないんよ」なんて明け透けな科白を呟いてカッコよく様になるのも芹明香ぐらいだと思う。
とはいえ彼女がどの作品かで自分のことを「あたい」と呼んでたかについては憶えてないし(呼んでたと思うけど…)、
だいたいボクはこの頃の女優といったらやはり彼女よりも片桐夕子とか山内絵美子が好きなら(要するに巨乳好き)、
なにより何を隠そうボクはつい最近まで彼女の名前を“めいか”ではなしに“あすか”だとばかり思ってたクチなので、
つまりそんなには個人的に思い入れのある女優じゃないんだけど、しかし彼女の出演作にロマンポルノを語る上で、
欠かせない傑作や名作が多いのは周知の事実。どうしてボクは彼女の名を“あすか”だと思い込んでいたのだろう。

それはともかく、久々に始まったラピュタのレイト企画「わたしたちの芹明香」は、チラシのアートワークが素晴らしく、
いつもより気合の入った見開きチラシということでボクも負けじとコチラの特集にも岸田森以上に足繁く通うつもり―。
というワケで1発目に観てきたのは『狂棲時代』。日々有り余る性欲に悶々としている風間杜夫扮する予備校生が、
山科ゆりという可愛いカノジョがいながら最後までうまくやれず、父親の愛人たる司美智子や、街で逆ナンしてきた、
絵沢萠子ら熟女にハマり(気持わかる)、それでも悶々が癒されずナンパした田舎娘を無理矢理青姦しちゃうって話。
傷つき傷つけながら、でも最後はゆりとうまく行くボクにしたら羨ましい青春性長物語。明香嬢が本作で演じるのは、
主人公の友だちの同棲相手。まだロマンポルノに出始めの頃だからか、初々しさがあり、キッチンに立つ姿が新鮮。
子供を産むと言い張る時の表情がいい。娼婦やソープ嬢やストリッパー役の彼女しか知らないから実に貴重な1本。

「わたしたちの芹明香」
[2014年4月19日(土)-7月11日(金)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
『狂棲時代』(1973年・日活/カラー/69分)
【監督】白鳥信一
【出演】風間杜夫、山科ゆり、司美智子、絵沢萠子、芹明香、長弘、堺美紀子
清水国雄、しまさより、加納愛子
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞料金】800円(会員)

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まさに特出し芹明香!
『濡れた欲情 特出し21人』(2014/05/14)

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渋谷、新宿、池袋。渋谷は駅からヴェーラやユーロに行く途中、池袋は同じく駅から文芸坐に行く途中、そして、
新宿は区役所通を1本入ったあずま通の中といった具合に東京にはいまだストリップ劇場がポチポチあるけど、
今ドキのストリップっていったいどんな感じなんだろう? やっぱりここだけは昔ながらといった感じなんだろうか。
ま、昔ながらといってもボク自身はストリップなんてそれこそこの映画にも出てくる浅草の創業60年以上の老舗、
“ロック座”へたった1度行ったことがあるくらいで、あとはやはり、映画の中でしかなじみのない世界なんだけど、
AV女優をやっている方のブログを読むと時々「先日新宿のニューアートで踊りましたー」なんて書いてあるから、
もしかすればストリップ界もキャスティングだなんだにいろいろ工夫を凝らして、永続を図っているのかもしれん。
夜勤明けに早朝割引使って行ってみたいんだけどな。けっきょくもっと即物的な快楽を得られる方に走っちゃう。

というワケで高田宏治特集につづきしはコチラも連夜大入りの芹明香特集で、名匠・神代辰巳監督のレアもの、
『濡れた欲情 特出し21人』を観てきた。大入りにケして嘘偽りあらず行ったその日は初日ということもあり満席。
客席を見渡したところ若い女性も多く、このテの特集じゃ今や見慣れた光景とはいえやっぱり少しフシギだった。
今回の明香嬢は、スケコマシにコマされて東北くんだりまでストリップをやりに行く女のコ。同じく男にコマされた、
片桐夕子りんとレズコンビを組んだりお芝居しなくちゃなんないのに本気で感じてお芝居できなくなっちゃったり。
とりたてて起伏はないし劇中の夕子りん同様オシッコがしたくなって途中から映画に集中できなかったんだけど、
やっぱりこういうストリップや廓(くるわ)を舞台にした話はそれだけで風情というか今にはない情緒があってよい。
あータマにはストリップ行ってOPP(おっぱいパブ)行ってシメに風俗行くっていう豪勢な遊びがしたいもんよのォ。

「わたしたちの芹明香」
[2016年4月19日(土)-7月11日(金)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
『濡れた欲情 特出し21人』(1974年・日活/カラー/77分)
【監督】神代辰巳
【出演】片桐夕子、芹明香、絵沢萠子、古川義範、外波山文明、高橋明、粟津
號、吉野あい、宝由加里、東八千代
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞料金】招待券

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男のイキ方(逝き方)入門…
『赤線玉の井 ぬけられます』@「官能の帝国 ロマンポルノ再入門」(2007/06/07)

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日本を代表する社会派ドキュメンタリーの巨匠、
羽田澄子監督の最新作『終りよければすべてよし』は、
観た人すべてに人間の“死に方”について考えさせてくれるけど、
それとはまた別に、ボクには10代、それこそ中学生の頃から、
秘かに憧れている“死に方”というのがあったりする……。

往年のTV時代劇シリーズ、『必殺!』シリーズの中でも、
「必殺仕置人」というかなり人気の高い名作中の名作があり、
それには名優、山崎努が演じる“念仏の鉄”という男が出てくる。
破戒僧のような身なりに、表の稼業は骨接ぎ師、要は今の接骨院。
その技術を活かし、悪人の背骨を外すというのが彼の必殺技で、
それをレントゲン写真を使って表現するという発想は今見ても斬新。
そんな殺し技も相まって、鉄はシリーズ屈指の名キャラクターだった。

だけど、そんな念仏の鉄も続篇でありこれまた屈指の名作、
「新・必殺仕置人」の最終回にてまさしく壮絶な最期を遂げる。
仕置人グループの壊滅を目論む暗殺者集団に捕えられた鉄は、
肝心の右手を青く燃え盛る炎で焼かれてしまうのだ。
(そんな敵役を演じたのがこれまた名脇役の佐藤慶!)
しかし、クライマックス、鉄はその焼け爛れた右手を使い、
腹に佐藤慶のドスを喰らいながらもその背骨を外して最後の仕置をすませる。

仕置をすませた鉄はひとり、右手を懐に隠し、
隠した手で傷口を覆いながらそのまま遊郭へと赴く。
(鉄は下半身の滅法強い遊び人というキャラクターだった…)
言葉もなく、左手だけで女郎とイチャつく鉄。
彼はシリーズ通して、女は女郎しか抱かなかった。
布団の上でイチャつく鉄と女郎をカメラは天井から捉える。
やがて鉄は女を懐に抱いたまま静かに絶命し、
異変に気づいた女が叫び飛び退くところで画面はストップ。
そして無音のまま、天井からの3段階アップで鉄の死に顔が映される。

そんな鉄の壮絶な絶命シーンを平日の真夜中に独り、
TVの前で口を半開きにして見入っていた14歳のボクは、
まるで天啓を授かるように涙を流しながらこう思ったのだ。
「こ、これだ……。これが男の“死に方”だ……」と。
当然その頃はまだ童貞だったし、チ○コの皮も剥けてなかった。

もしも一度だけタイムスリップができるとすれば、
ボクは絶対、江戸時代の“遊郭(ゆうかく)”に行ってみたい。
「チョイとそこのお兄さん、寄っていっておくれよ! 安くしとくからさ!」
の声とともに格子から伸びる女郎たちの手を払いながら通りをひやかして歩く、
あれを一度でいいからやってみたいのだ。それこそがボクにとっての男の“粋”である。

ボクがチョイチョイとそのテの夜の店に行きたがるのはスケベ根性以上に、
↑に書き連ねたような憧れが原点として今も胸の内にあるからだし、
だからボクはそのテの店には十中八九単身でしか行かない。
とは言えそのテの店に行くことを自分の中で否定していた時代も20代前半の頃にはあったし、
行き始めた当初も友人連れでというパターンが多く何かとハンパじゃあるんだけど、
やはりそのテの店は男が身ひとつで出かけてナンボというのが今は常。
“何者でもない”自分を抱え街の虚空にポッカリ空いた穴蔵に吸い込まれるように、
出迎えてくれる名前も知らない女と束の間肌と肌を合わせて一期一会の交感を楽しむ……。
何があるのかわからないからこそ闇の奥に憧れる気持は男なら絶対あるハズだし、
だからそんな場所に複数で出かけるなんざ男の美学として“粋”じゃない。
まぁいくら口角泡飛ばしてこんな話をおっぴろげたところで、
ロマンもねぇ無粋な男女や映画オタクになんざ理解できねぇ話でさぁ(べらんめぇ口調で)。

ということで、ボクは映画でも“遊郭”や“赤線”を舞台にした物語が好きで、
そんな世界に男の粋や弱さ、女の哀しみや強さを見て胸がウズウズ疼くんだけど、
だからと言って女目線でそのテの世界を描いた(多分)“さく○ん”にはまったく興味がない。
名匠・神代(くましろ)辰巳のロマンポルノ時代の1本、『赤線玉の井 ぬけられます』(’74)は、
昭和33年の売春防止法の施行により廃止直前の赤線、東京の“玉の井”(東向島)を舞台に、
タフな女たちの哀歓を独特のユーモアとペーソスで粋に心地好く描いた胸に沁み入る傑作だ。

とくにここ最近、都内の単館を中心にこのテの企画が催され、
まぁボクとてもともとはこうした一般劇場で往年のロマンポルノや、
現代のピンク映画の数々に触れるようになったクチではあるんだけど、
しかし、ワリと客入りのいいこのテの企画に足繁く通うなかで、
ふと劇場の片隅でヘンな違和感を覚える瞬間がある。
それをこうして言葉で説明するのはなかなかに難しいことなんだけれど、
要は自分と他の客人とでは、スクリーンに求める“何か”に差があるような気がするのだ。

けっきょくはボクにしても人のことは言えないワケだけど、
なんかこのテの特集に通う人の中には、ロマンポルノやピンクに、
過分に“映画的なる何か”や、カルト的たる要素、
そして、“通好みな笑い”を求めて来ているタイプがやたらと多い気がするってこと。
それを悪いとは決して言わないし否定する立場にもボクはないんだけど、
しかしそれはこうした映画が放つ独特の“匂い”の本質とは若干ズレがあるんじゃないのか?

ボクはやっぱり、“エロ”が目的でポルノやピンクを観る。
手頃に女を口説くテクもなくそう何度も女を抱きに行く余裕もなく、
だけどそりゃ10代ほどじゃないにせよ30歳過ぎても悶々とすることはあり、
そんな悶々を昇華したくて女の裸や男女のカラミを見て勃起したいからエロを観る。
悶々としてるところに映像だけ観たら余計、悶々とするじゃないかと思うかもしれないが、
そこではじめて悶々を“ヌく”のに巧く機能してくれるのが映画のカタルシスというヤツなのだ。
モンモンモンモンとしつこいけどそう考えればやっぱりポルノやピンクは、
ポルノやピンクの今後のためにも専門の成人館で観るべきなのかもしれない……。
(最初からそうすりゃいいのは自分自身重々わかっているつもりなんだけど、
けっきょくナンダカンダと“いいとこ取り”のこのテの企画に頼りたがる自分も否定できず、
それに今はAVなど、セックスが世に氾濫しまくっているから、
逆説的にポルノやピンクが“映画”として認識されるようになったという背景もあるんだけど)

冒頭とは話がかなり逸れてしまったけど、
とにかく今、強く思うのは、60年代やとくに70年代には、
男のイキ方(生き方、逝き方)を教えてくれる映画やドラマが多かった。

(今やもらえるのかもらえないのかわからない)年金を当てに、
勃つモノも勃たずヨボヨボと老衰してそれでもなお生きてゆくぐらいなら、
まだまだ勃つ間に名前も知らないだけどベラ棒にイイ女抱きながら死にたい……。

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風俗のフの字もわかっていない橋下氏にこそ観てほしい!
『赤線本牧 チャブヤの女』(2013/06/01)

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くしくも橋下徹氏による一連の発言を想起させるタイムリーな映画だった。でまぁ、思うことはイロイロあるんだけど、
とりあえず従軍慰安婦云々の件はここじゃあ置いといて、ボクが彼の発言に対し、いちばんカチンと頭に来たのは、
やはりその後の米兵に“風俗を活用してほしい”と進言した件。なんかまるで、性犯罪に走るぐらいなら金を払って、
好きなことしろと言わんばかりの風俗で働く女の人を見下すような発言だし(まぁ、そんなつもりじゃないだろうけど)、
だいたいそれじゃ風俗にイク男はみんな性欲を持て余した性犯罪者予備軍と言われているみたいでホント腹立つ!
アメリカになんか謝らなくてもいいんだよ! それより全国1千万の風俗嬢に土下座して謝れ!そしてオレにも謝れ!
それはボクが時々風俗へイクのは単にどスケベだからだけど、でもそれは性欲のハケ口を求めているというのとは、
同じなようでまったく違う。ボクはあの風俗独特の空間にしか薫らない男と女の“情緒”に惹かれて風俗へイクんだ。

その情緒について説明し出すとまた長くなるから割礼モトイ割愛するけど、とにかくそんな情緒もわからないクセに、
風俗を活用しろだぁ? 北方謙三先生! 橋下徹にいつもの科白、お願いします! 貴様こそ「ソープに行け!」
そして女を学んで来い! だからあんな正真正銘のくそビ○チに昔の話を週刊誌にバラされたりするんだよ! ボケ!
ふぅ。というワケでこの、『赤線本牧 チャブヤの女』は、まさにそんな男と女の独特の情緒に胸しめつけられる一篇。
チャブヤと呼ばれる、横浜・本牧の娼館を舞台に、そこに生き、そして消えていった女たちの哀しみを綴る群像劇だ。
貧しい田舎娘からしだいに床上手の売れっ子になってゆくヒロイン・アキを演じたひろみ麻耶が素晴らしい。(体も!)
心を通わせる女按摩の助手に言う、「おっぱい見たい?」という科白につい“いつもの習慣”で大きく頷いてしまった。
橋下くんにこの情緒がわかるかな? ま、情緒だナンダと、けっきょく目クソ鼻クソにしか思われないかもしれないが。

「戦争と六人の女」
[2013年5月11日(土)-6月28日(金)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
『赤線本牧 チャブヤの女』(1975年・日活/カラー/69分)
【監督】白鳥信一
【出演】ひろみ麻耶、片桐夕子、あべ聖、芹明香、山科ゆり、二條朱美、坂本長利、小泉郁之助、絵沢萠子
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞料金】800円(会員)

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自由でも不自由でも愛は牢獄…
『白子屋駒子』&『実録おんな鑑別所 性地獄』(2013/11/26)

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9.11が起き、タリバンといわゆるイスラム原理主義が掲げる女性差別的な考えが一般にも知られるようになった頃、
当時勤めていたバイト先の女のコがチョッピリ勘違いをして「私も女は家にいればいいと思う!」などと、あまつさえ、
タリバンを擁護するようなことを言い出したもんだから、「マリちゃん(実名)は自由恋愛を前提で言っているんだろ?」
というあたりから始め、恋愛はもとより女には教育の自由すら認めないというイスラム原理がいかに誤っているかを、
ちょっと歳上だと思って高飛車に諭したなんてことがあった。ま、そのマリちゃんは美人で巨乳で人気者だったので、
そんなコが古風な女性観を持っているということは一方じゃチョッピリうれしかったんだけど(書いてるオレが差別的)。
しかし自由恋愛とはよく申しますが、自由がすぎると今度は昨今みたく、やれデートDVだのリベンジポルノだなどと、
行きすぎた話も多くなってこと“色恋”ってヤツぁけっきょく自由、不自由関係なく厄介なもんだと思うワケであります。

ということでラピュタで新たに始まった昼企画、「千客万来 にっぽん暖簾物語」の1本目、『白子屋駒子』の舞台は、
まだまだ恋愛自由度など低く、不義密通(つまり浮気)なんて見つかりゃ即死罪だった封建的思想根強い江戸時代。
本作は、江戸いちばんの材木問屋の美しき箱入り娘と幼なじみの番頭との禁じられた恋を綴った悲恋物の大傑作。
当代一の美女と言われ引く手数多ながら自分の夫は番頭・忠八のほかにない決めている駒子と、身分をわきまえ、
駒子の猛烈アプローチを必死で我慢する忠八の相思相愛ぶりがとにかく白眉で、そんな2人が、ついに一つになる、
蚊帳の件はさすが名匠・三隅研次だけあり、上品なのにエロさ抜群! もう駒子の“濡れ”具合まで伝わるかのよう。
けっきょく、不運の連鎖で駒子と忠八は引き廻しの上獄門となってしまうんだけど、それでも自分の意志を貫き通し、
惚れた男と死ねるなら…と馬上で微笑む駒子に胸は張り裂けんばかり。自分もこんな恋がしたい!と思うこと必定。

ま、ボクだったらとりあえず駒子を連れて逃げられるところまで逃げるけど。とにかく、前のめるほどいい映画だった。
一方、コチラは長らくつづいたレイト企画のラストの1本、『実録おんな鑑別所 性地獄』も、まさしく大トリに相応しい、
愛を逃れられぬ“業”と捉えたという意味じゃ上記作にも引けを取らない(いや、引けは取るかも)珠玉の傑作だった!
男のため殺人を犯したにもかかわらず、裏切られて鑑別所送りとなった梢ひとみ。力で女たちをまとめちゃいるけど、
心には今も愛した男がいる純なひろみ麻耶。そして、ゴマを擂るのが巧くズルいんだけどなぜか憎めない芹明香と、
インの3人がなにしろ魅力。梢は脱走して男にキッチリ復讐を果たし、ひろみは復讐できず男と一緒に女に刺され、
芹は2人を売ってちゃっかりと鑑別所を出所、男と腕を組み去ってゆくという、それぞれのラストの描き分けも最高だ。
くに刺されても男と死ねて本望みたいな恍惚の表情を浮かべて死ぬひろみの最期は『白子屋~』の駒子と同じ。
男たるもの、一度ぐらいこれほど女に愛されてみたいもんですな。ふぅ。というワケで、ボクはその後そのバイト先で、
トンデモない被害妄想女と付き合いまさに牢獄につながれたかのような地獄の日々を体験することになるのである。
職場にも迷惑かけて、マリちゃんにも思いっくそ不潔な目で見られたなぁ。ホント恋愛って自由でも不自由でも厄介。

「Prisoner ♀(メス) 残酷!おんな刑務所」
[9月21日(土)-11月29日(金)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
『実録おんな鑑別所 性地獄』』(1975年・日活/カラー/72分)
【監督】小原宏裕
【出演】梢ひとみ、ひろみ麻耶、芹明香、青木真知子、水沢リエ、美鈴エミ、太田洋子、高橋明、八代康二、浜口竜哉
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞料金】800円(会員)

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女教師(日活)VS.ソープ嬢(東映)!
『女教師 甘い生活』『札幌・横浜・雄琴・博多 トルコ渡り鳥』(2014/07/01)

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んー…甲乙付け難い…。女教師とソープ嬢、どちらがお好みですか?なんて訊かれたら悩みすぎて吐きそう。
それほどにボクは人妻と同じぐらい女教師という響きに弱いし、ソープ嬢(風俗嬢)はプロレスラーと同じぐらい、
この世で最も尊敬されるべき職種の一つだとマジで思っている(裸一貫で人を愉しませるという意味において)。
というワケで女教師イメクラ73分コース(電マ付き)とソープ82分コース(マットプレイ込み)を贅沢にハシゴすべく、
信じられないような豪雨の余韻で雨がシャーシャーと降りしきる中、職場からエッチラオッチラ自転車にて40分、
途中あんな雨の中を傘もなく同じく自転車で走る女性のずぶ濡れスケスケTシャツに欲情しながら阿佐ヶ谷へ。
髪もぐしゃぐしゃになる頃ようやく劇場に着き、整理券を2本分取るとどちらも同じ番号。考えることはみな同じ?
やーネー男ってみんな頭ん中が同じで! 1本目はまさしくスケベな社長さんだらけの中での鑑賞であったとさ。

ただ、特集「白鳥あかねスクリプター人生」2本目の、『女教師 甘い生活』。残念ながら、そんな面白くなかった。
身持ちの堅い1人の女教師が教頭先生に迫られたりオ○ニー盛りな3バカ生徒にオモチャにされたりする内に、
封じ込めていた女の悦びを萌芽させてしまうという、その後AVに継承される典型的シチュエーションはともかく、
いったいどんな性根はエロい女教師が出てくるのかと思ってれば、主演の女優さんがあまりに好みとは違う上、
脱げばまるでアスリートみたいに引き締まった筋肉質ボディで、ポッチャリ巨乳好きとしてはまずそこでがっくり。
それでもそこは映画なので話が面白けりゃノるんだけどさすがの小沼勝監督の演出も最後までノらずじまいか、
完全に消化不良。途中、5人の男女が「わたしの彼は左きき」をバックにオ○ニー合戦をする件は面白かったし、
主演の市川亜矢子も最後の方じゃ魅力的に見えたけど…んーこれなら、50分コースでよかったかな、って感じ。

その代わり、レアもの観たさというだけで内容自体はそれほど期待していなかった芹明香特集個人的3本目の、
『札幌・横浜・雄琴・博多 トルコ渡り鳥』は、長い間観たいと思っていたものが観られた上に予想以上に秀逸な、
まさにこれこそ青天の霹靂と言うべき1本だった。内容は芹明香演ずるソープ嬢とそのヒモの腐れ縁カップルが、
各地の色街を転々とするドラマに実演映像や本物の嬢のインタビューを絡めるドキュ・ドラマ仕立てなんだけど、
もっとこう、ソープの(秘)テクニックを山城新伍が面白オカしく紹介してゆく軽いノリの映画なのかと思っていたら、
意外とドラマ部分が女の哀感をヘビーに描いていてびっくり。しかもそれ以上にびっくりなのが当の芹明香嬢で、
ハッキリいって本企画の中でも『(秘)色情めす市場』と並べていいんじゃないかってほどのさすがのハマりよう。
こんなにソープ嬢が様になる女もいないんじゃないというぐらい絵になっていてまさに彼女の面目躍如って感じ。

観てるみなが思ったに違いない、『津軽じょんがら節』みたいなシーンからラストの列車放尿シーンにかけては、
これぞ芹明香!と拍手したくなるほど素晴らしくホントに見事な女優映画となっている。さすがは関本郁夫監督。
正直、もうちょっぴりぐらいは昭和のソープの世界に関して彫り下げてくれてもよかったような気はするんだけど、
ああした世界に生きる、または生きざるをえない女性たちへの慈しみも感じられて、いやぁー本当に傑作だった。
ただ、チラシやサイトにはタイトルに“名古屋”も入っているんだけどどうやら何かの手違いだった模様。どうりで。
そういえば名古屋のソープなんて行ったことないなー。つーかソープ自体実は数えるほどしか行ったことがない。
池袋と吉原しか知らない。なんてことを書いていたら、ローションが恋しくなってきた。面白い映画とローションは、
嫌なことをすべて忘れさせてくれる!(これ真理) 泡とローションを駆使するすべての性の天使たちに幸多かれ!

「わたしたちの芹明香」
[2014年4月19日(土)-7月11日(金)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
『札幌・横浜・雄琴・博多 トルコ渡り鳥』(1975年・東映東京/カラー/82分)
【監督】関本郁夫
【出演】芹明香、東龍明、山城新伍(ナレーター)
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞料金】800円(会員)

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nudeになれる女優原理主義!
『喜劇 特出しヒモ天国』@「銀幕ストリップ☆かぶりつかNight」(2010/10/07)

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まだ名古屋でサラリーマンをやっていた若かりし頃、友人を頼って東京を訪れ、その時に浅草の老舗ストリップ、
「ロック座」へ遊びに行ったのがボクの人生初にして唯一のストリップ体験なんだけど、せっかく乏しい財布から、
小札6枚も出したんだからと、そこは恥ずかしがらず浅草は俺の庭みたいな風体のオッサンたちと仲良く並んで、
友人とほぼ最前列にて老舗らしい艶やかなショーをガッツリと堪能。ショーの細かい内容まで憶えちゃいないが、
踊り子さんと目が合うとニッコリ笑い返してくれるなど、事前に想像していたよりずっとライヴ感と親近感があって、
ひと括りに○○○とはいってもこうして観るとまさに“十人十色”ねと感心しながら心より楽しんだのを憶えている。
エロいはエロいけど基本はやっぱショーだから、観終わってモヤモヤするというよりはムシロ「面白かったァ~」と、
初めてだったし自分がチョッピリ大人になったような充実感があってその後は友人と1杯呑んで帰っただけだった。

で、話は飛んでつい先日まで、阿佐ヶ谷のラピュタでそんなストリップを題材にした映画の特集をやっていたから、
ボクは大トリだった森崎東監督の『喜劇 特出しヒモ天国』(’75)1本だけをなんとか駆け込みで観てきたんだけど、
そうしたらこれがストリップという特殊な世界に流れては消えてゆく男たち女たちの哀歓を実に見事に描いていて、
子供を作るためにストリップで稼ぎたいという聾唖夫婦の話は泣けるし、池玲子はカブりつきたいようなイイ女だし、
火事で死んだヒモじいさんの葬式の場面や芹明香のラストの表情には鳥肌が立つしで、ホント“粋な”映画だった。
ひょんな経緯から劇場の支配人になる山城新伍が後半、池玲子のヒモになるんだけど、ホテルで雪を眺めながら、
「寒いなぁ」(男)「ウん、寒いなぁ。あっためて」(女)と抱き合うシーンがことのほかよく、ホント、イイ女の裸が拝めて、
日陰に生きる男と女のアレやコレやが出てくる映画はいいよなぁ…と、あらためてウットリするような気分だった―。

ぼくたちの芹明香も芹明香である! 『赤線最後の日 昭和33年3月31日』ほか

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「芹明香は芹明香である!」
[2016年10月29日(土)-11月11日(金)]@シネマヴェーラ渋谷
【鑑賞料金】1,000円(2本立)

①『赤線最後の日 昭和33年3月31日』
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10月30日に行われたなんとご本人登場のトークショーに行けなかったので
せめてその残り香を嗅ぎに2日後の上映へ。いやぁ~これはいい映画だった!
タイトルそのまま、売春防止法施行前夜のいわゆる“赤線”最後の1日を舞台に
明日をも知れない娼婦たちの哀歓をしみじみと描いた切なく胸に沁みる好篇!
我らの明香嬢は最後の荒稼ぎとばかりに客を同時に3人取ったりするんだけど
男に抱かれながら「こんな私に誰がした」とサバサバ歌うその佇まいが最高!

血や本を売っては店に足繫く通う風間杜夫演じる学生の気持もよくわかるほど
宮下順子がまたい~女で杜夫が渡した連絡先を切なげに燃やす場面が泣ける。
そうそう、こういう場所で惚れた女とは決して二度と逢えないんだよ。(回想)
でもだからいいの…。久しぶりにこのジャンルでのめり込むように観た。(照)
ホントいい脚本だし演出もこういう世界のワビサビを見事に掬い取っている。
ただこんないい映画ならもっとちゃんとした素材で観たかった。ちょい残念!

『赤線最後の日 昭和33年3月31日』(1974年・日活/カラー/64分)
【監督】白鳥信一(『狂棲時代』『赤線本牧チャブヤの女』)
【出演】宮下順子、中島葵、芹明香、風間杜夫、吉井亜樹子、ひろみ摩耶、榎木兵衛、高山千草、島村謙次、坂本長利
【5段階評価】★★★★☆

②『下苅り半次郎 (秘)観音を探せ』
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頭悪いなぁ~ヴェーラじゃ散々やってんだろうけどこんなバカ映画久しぶり!
つーか芹明香特集なのに彼女全然出てこないじゃん!(しかも出番ちょっと…)
どうしても子がほしい将軍・家綱のために“ほと(女陰)喰いの半次郎”が呼ばれ
絶頂に達すとクリちゃんが光るという“み仏の子宮”を持つ女を探す旅に出る。

ひたすら女を見つけてク○ニしちゃあ「違う…」の繰り返し。もうバカすぎ!
下苅りとは要は剃毛で「シャボンなど要らん。俺の唾とお前の蜜で泡立てる」
伊吹吾郎もようやるワ。でも半次郎は己の欲は充たさずただ女を悦ばすだけ。
そんな究極のご奉仕でお金貰えるなんていい仕事かもしれん…と少し思った。

『下苅り半次郎 (秘)観音を探せ』(1975年・東映/カラー/83分)
【監督】原田隆司
【出演】伊吹吾郎、森崎由美、山城新伍、北村英三、潤ますみ、芹明香、叶優子、戸浦六宏、汐路章
【5段階評価】★★★☆☆

なんだかんだ頑張れTIFF! 「第29回東京国際映画祭」

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「第29回東京国際映画祭」
[2016年10月25日(火)‐11月3日(木・祝)]
TOHOシネマズ六本木ヒルズEXシアター六本木

①『ラブリー・マン』

今年の1本目はインドネシア映画―。小品らしくしみじみといい映画だった。
敬虔なムスリムの少女が4歳の時に別れた父親に逢うためジャカルタに行く。
でも、父親はヤクザのもと男娼として都会の混沌の中を孤独に生きていた…。
性的マイノリティやイスラームとジェンダーなどテーマ自体はかなりヘビー。
しかし映画は題材の内面には深く踏み込まず一風変わった父娘の一夜の物語を
ただ静かに見つめ続ける。ちょっと感傷的で口当たりがよすぎな気もするけど
ジャカルタの夜の風情が実に生々しく寂しげで、心優しい都会の童話みたいに
なっている。個人的にはドビュッシーよりアザーンの響きに心くすぐられた。

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『ラブリー・マン』(2011年・インドネシア/カラー/76分)
【監督】テディ・スリアアトマジャ
【出演】ドニー・ダマラ、ライハアヌン・スリアアトマジャ、ヤユ・アウ・ウンル
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ六本木ヒルズ3
【鑑賞料金】1,300円(前売一般)

②『舟の上、だれかの妻、だれかの夫』

2本目もインドネシア映画。でもコチラは『ラブリー・マン』とは少々異なり
やや作家映画的な短篇作品2本立。まずは海の美しいインドネシア東部の島に
1世紀前の不倫ドラマについて調べに来た女性とそこで出逢う青年との物語。
正直ただなんとなく観てるだけじゃ何を語っているのか全然よくわからない。
というより、ヒロイン役のマリアナ・レナタの黒ビキニの上にYシャツという
最強コンボが鬼のようにセクシーすぎて話がほとんど頭に入ってこなかった!
あれはズルい。何かのトラウマがあるワケじゃないけど監督は海が怖いらしく
そう言われるとストレートに自然の驚異を感じさせるそんな映画ではあった。

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『舟の上、だれかの妻、だれかの夫』(2013年・韓国=インドネシア/カラー/58分)
【監督】エドウィン
【出演】マリアナ・レナタ、ニコラス・サプトラ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】同上
【鑑賞料金】同上

③『ディアナを見つめて』

つづいては『鏡は嘘をつかない』(TIFFでも岩波ホールでも未見)の監督作。
そして『ラブリー・マン』では娘を演じていたライハアヌンが一児の母親役。
ある日突然夫が第二夫人を娶りたいと言い出して戸惑う女性の深い葛藤を描き
そんな慣習に真っ向から異を唱えた物静かだけど意思のくっきりとした作品。
でも第二夫人を娶るからには男は二つの家庭に100%責任を負わねばならず
最後はけっきょく喰い詰めグチばかり言うこの夫にそんな資格実はないワケで
そういう意味じゃラストは奥さんの方が実は上に立っているようにも思えた。
実物の彼女は大変美しくあんな人が妻だったらコッチこそ第二夫にされそう!

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『ディアナを見つめて』(2015年・インドネシア/カラー/42分)
【監督】カミラ・アンディニ
【出演】ライハアヌン、タンタ・ギンティン、パンジ・ラフェンダ・プトラ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】同上(上記作品と2本立)
【鑑賞料金】同上(上記作品と2本立)

④『ブルカの中の口紅』

『PK』のジャグーの妹がいつの間にやら大人の女性になっていてびっくり!
そしてコーンクナー・セーン・シャルマーがボクのいちばん好きなインド映画
『Mr.& Mrs.アイヤル』(2002)の頃とまるで変わらないことに二度びっくり!
基本的には艶笑コメディで語り口が軽快ゆえ時に吹き出しながら愉しめたけど
男としてはいたたまれない4人の女性の息苦しい日常を描くヘビーなドラマ。
タイトルに“ブルカ”と付くからにはもっとイスラーム的な話かと思っていたが
映画はより広く普遍的な女性の抑圧を描き、ブルカはその象徴的な意味合い。
タイプの違う4女性ということでレバノン映画の『キャラメル』も連想した。

なにしろ男がロクなもんじゃないんだけどかと言って男を貶めるワケではなく
4人がそれぞれ魅力的だから男でもしっかり感情移入できるのが素晴らしい!
彼女らの葛藤を自身の問題として捉える女性監督の視線はどこまでも誠実だ。
それぞれに苦難が降りかかるラストも一見重くいかにも救いがなさそうだけど
しかし“男で”幸せになったってそれを真の女性の解放とは言わないと思うので
ラストに4人集まって煙草をふかし笑い合い“何か”を共有するようなシーンは
この映画が誠の女性映画であることを示す切なくも力強い場面だったと思う。
ただインド全体の男尊女卑をブルカに集約してまた軋轢を生まないかが心配。

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『ブルカの中の口紅』(2016年・インド/カラー/117分)
【監督】アランクリター・シュリーワースタウ
【出演】ラトナー・パータク・シャー、コーンクナー・セーン・シャルマー、アハナー・クムラー
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ六本木ヒルズ9
【鑑賞料金】同上

⑤『ダイアモンド・アイランド』

これもいい映画だった。確かに全体的にはもう一歩!ってところはあるけれど
それでもついにこういう青春映画がカンボジアでも創られるようになったか…
という台湾や中国映画のニューウェーヴを観た時と同じうれしい驚きがある。
急激な経済発展の影で燻ぶるやり場なき、でも穏やかなカンボジア的青春像は
ホウ・シャオシェンやジャ・ジャンクーの初期作にも似たアジア的哀愁を醸し
元の撮影機材の問題か少し画質が悪いものの胸がキュンと鳴るよな場面満載で
リティ・パンの遺伝子を受け継ぎつつ新しい世代の息吹を感じさせてくれる。
女のコたちが妙に色っぽいのもよかった。またいつかカンボジアに往きたい!

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『ダイアモンド・アイランド』(2016年・カンボジア=フランス=ドイツ=タイ=カタール/カラー/104分)
【監督】デイヴィ・シュー
【出演】ヌオン・ソボン、ノウ・チェニック
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】同上
【鑑賞料金】1,500円(前売一般)

⑥『クラッシュ』

いわゆる“アラブの春”から2年後のカイロを舞台にした注目のエジプト映画。
2011年の革命でムバーラク政権を倒したのはいいけどイスラム主義を掲げる
次のモルシー大統領に反対する人々と支持派との軋轢で国は再び真っ二つに。
そんなデモの騒乱の中、双方の民衆が一台の護送車に次々と詰め込まれる…。
要は政治、宗教、男性、女性、様々な人が乗る護送車の中をエジプトの縮図に
その混沌をパワフルに描いた力作…ではあるんだけど正直ケレン味が強すぎて
自分たちはいつまでこんな不毛な対立をつづけるんだ!?という肝心のテーマが
少々置き去りにされていたような気がする。期待してただけにちょっと残念!

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『クラッシュ』(2016年・エジプト/カラー/98分)
【監督】モハメド・ディアーブ( 『Cairo 678』 )
【出演】ネリー・カリム、ハニ・アデル、タレク・アブデル・アジズ、アフマド・マレク、アフマド・ダッシュ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ六本木ヒルズ2
【鑑賞料金】同上

⑦『ヘヴン・ウィル・ウェイト』

素晴らしい!最後の最後にこんな傑作が観られて今年のTIFFはこれで大満足!
イスラム過激派組織の思想に“洗脳されていた”少女と“洗脳されていく”少女を
巧みに対比描きながら今やフランスのみならず世界が直面する問題を見据えた
日本も人ごとではなく今観るべき珠玉の社会派映画にして切ない青春ドラマ!
先のブルキニの話がいい例でフランスも頻発するテロを前にもはやなす術なく
結果、無意味な宗教弾圧に走るなどどんどん悪い方に傾いていっているけれど
映画は“問題はそこじゃない”と決して感情的になることなく極めて冷静沈着に
綿密なリサーチで得た少女らの体験を基にしながらその根幹を考察してゆく。

面白いのはそういう若者らの洗脳を解く活動を実際にしているムスリム女性が
本人役で出演しセラピーの過程を見せてくれること。それが実にスリリング!
そしてそこから見えるのは、問題を前にもはや無力な社会と大人たちの姿…。
最後の最後に全体像がわかるサスペンスフルな構成やゾッとする描写も見事!
社会性と娯楽性が同居していてこの監督は前の『奇跡の教室』も面白かったし
今フランスで最も注目すべき力ある作家と言ってもいいんじゃないだろうか?
こういう映画が創られる土壌がある分フランスはまだマシという気さえする。
あんな酷い政権をいまだ多くの人が盲信しているこの国の方がよっぽど心配!

というワケでチケット問題などいろいろあったが今年のTIFFは充実していた!

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『ヘヴン・ウィル・ウェイト』(2016年・フランス/カラー/105分)
【監督】マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール( 『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』 )
【出演】ノエミ・メルラン、ナオミ・アマルジェ、サンドリーヌ・ボネール、クローティルド・クロー、ジヌディーヌ・スアレム
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】TOHOシネマズ六本木ヒルズ7
【鑑賞料金】同上

そしてキアロスタミはつづく… 『シーリーン』&『10話』@「キアロスタミ全仕事」

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「キアロスタミ全仕事」

[2016年10月19日(水)‐27日(木)]@ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,000円(会員)

『シーリーン』
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いやもう案の定寝ちゃったけどそれは夜勤明けにつき寝ていなかったからで、
聞きしに勝るとんでもない映画だった。
“シーリーン”とは12世紀のイランの詩人ニザーミーによる悲恋ものの古典叙事詩らしく、
本作はなんとその映画化を客席で鑑賞している114人の女優の顔をひたすら映すだけという究極の実験映画。
とはいえいかにもみな確かに映画を観ている風だけどどう観てもそれはそういう態(てい)でつまりは全部お芝居。
泣きの場面らしいところじゃ誰もが涙するワリに聴こえてくる台詞や音はどうにも安っぽい。
でも、そんな女優の顔だけで90分を保たそうってんだからその発想には驚くばかりだし(しかも114人てキミ!)、
イラン映画にはお国柄いろんな“縛り”があるというのは周知の話だけど、
逆にそのオカゲでこんなブッ飛んだ前衛的作品を名のある巨匠が創っちゃうんだもの創作における自由とは果たしてなんなのかを心底考えさせられる。寝たけど。

『シーリーン』(2009年・イラン/カラー/92分)
【監督】アッバス・キアロスタミ( 『トラベラー』 『友だちのうちはどこ?』 『ホームワーク』 『クローズ・アップ』 )
【出演】ニキ・カリミ、ゴルシフテ・ファラハニ、ジュリエット・ビノシュ
【5段階評価】★★★☆☆

『10話』
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凄いなぁ。これがドキュメンタリーではなく“ドラマ”だなんてそれじゃ普段観ているドラマはいったいなんなのか?
DV撮影がもたらしたフットワークの軽さがキアロスタミ監督の作風にマッチするのは当然の理だと思うけど、
なによりその映像的趣向に引っ張られることなく語られるものこそがちゃんと面白いからつい見入ってしまう。
イランの首都テヘラン。1人の女性の運転する車に(タクシーかと思ったら違った)、
彼女の息子や妹や友だち、
見ず知らずの老婆や娼婦や結婚を間近に控えて悩む女性が次々と乗り込んできては様々な会話を繰り広げる。
設定だけなら今や誰でもマネできそうだけど、
それが映画として面白くなるか否かはやはりセンスと作家性。
饒舌な会話からちゃんと人物それぞれのドラマが浮かび上がりやがてそれがイランの今へと結びつくのだ。
真っ暗な車内で交わされる娼婦との会話はまるでサスペンスの雰囲気を醸し初めて見るイランの姿…。
逆に息子(役)アミンくんのエピソードは心から愉しくこれぞイラン映画の真骨頂!
ホントに面白かった。傑作。
追悼ということもあるだろうけど平日でも満席だったし、
本当にキアロスタミ監督は偉大でした。あらためて、合掌…。

『10話』(2002年・フランス=イラン/カラー/94分)
【監督】アッバス・キアロスタミ( 『そして人生はつづく』 『オリーブの林をぬけて』 『桜桃の味』 『風が吹くまま』 )
【出演】マニア・アクバリ、アミン・マヘル
【5段階評価】★★★★☆2