幻想、戦争、また幻想… 『エヴォリューション』&『ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち』&『はるねこ』

『エヴォリューション』

これは面白い。てっきり『エコール』の少年版みたいな映画かと思っていたら
エイリアンや宇宙船が出てこないだけでひたすらおぞましいSFホラーだった。
「意味がわからない“のが”面白い」なんて頭デッカチな通気どり映画は大嫌い。
でもこういう「意味がわからない“のに”面白い」映画は映画にもよるが大好物。
少年と女性しか住んではいない、いずことも知れぬ謎の島で母親と暮らす少年。
しかし、そこは夜ごと彼らが人体実験のモルモットにされる異形の島だった…。
まるで原作ものみたく話は暗喩的で過去のSF映画の名作を彷彿とさせるけど、
通底する世界観はやはり『ミミ』『エコール』と同じで、この監督オリジナル。

個人的にこういう話は成長期には特有の、だんだん変容してゆく自分の肉体や
世界に対する漠然とした不安心理のメタファーなのかと思ったりするんだけど
そんな深読みをせずともなにしろヌメリ気のある映像が不気味ながらも美しく
ゾクゾクするように雰囲気が淫靡だから粗筋が「?」だらけでも全然厭きない。
そして併映の同監督の短篇『ネクター』は上映する回とない回があるようだが
これがまた意味不明なのにやたらエロ面白くてびっくり!(むしろ好みはコッチ)
ボクも女王様に塗りたくったあの蜂蜜舐め(よしなさい)ってぐらい美味しそう。
まさにネクター(甘い)な映画。ボクは女王様と中年だけのそんな島に住みたい!

evolution

旦那(ギャスパー・ノエ)の映画は嫌いだが
奥さんの映画は性に合うのかフシギと好き。

『エヴォリューション』(2015年・フランス=スペイン=ベルギー/カラー/スコープサイズ/DCP/81分)
【監督】ルシール・アザリロヴィック(『ミミ』『エコール』)
【出演】マックス・ブラバン、ロクサーヌ・デュラン、ジュリー=マリー・パルマンティエ
【配給】アップリンク
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】アップリンクX
【鑑賞料金】1,000円(会員)

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『ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち』

第二次世界大戦前夜のチェコスロバキアから海外の安全な場所に里親を見つけ
その地に子供たちを疎開させる「キンダートランスポート」と呼ばれる活動で
669人のユダヤ人の子供たちをナチスの迫害から救い出したイギリス人実業家、
ニコラス・ウィントンの偉業と、生き延びたかつての子供たちを追った感動作。
前から楽しみにしていた作品だけど、しかし今この瞬間にもシリアの子供らを
世界が見殺しにしている状況を考えると、なんともいたたまれず逆に辛かった。
とはいえウィントン氏のことは初めて知ったし、“日本のシンドラー”と呼ばれる
杉原千畝を心から尊敬する身としてはやはり襟を正して観るべき1本であった。

感動的なのは氏が救った子供たちよりもむしろ救えなかった子供たちに対する
辛い贖罪の気持から、この事実をずっと妻にさえ言えなかったというところ…。
杉原も戦後、自分の偉業をずっと黙っていたというが真に偉大な人はみな同じ。
どうしたらこういう人たちの爪の垢を世界の指導者たちに呑ませられるのか?
不必要な再現ドラマやウィー・アー・ザ・ワールドみたいなクライマックスが
言っちゃあなんだが24時間TVっぽくてちょっぴり鼻白む部分もあるんだけど、
自分には何ができるか?を考えさせてくれる、いいドキュメンタリーだと思う。
今、この時にもシリアの子供を助けている人々の作品もいつか創られてほしい。

nickys-family

ただみんな状況やケースが違うのに
誰も彼も“どこそこのシンドラー”と
ひと括りにするのがどうにも違和感。

『ニコラス・ウィントンと669人の子供たち』(2011年・チェコ=スロヴァキア/カラー&BW/1:1.85ビスタ/101分)
【監督】マテイ・ミナーチュ
【出演】ニコラス・ウィントン、ジョー・シュレシンジャー、ヴェラ・ギッシング、ベン・アベレス、ダライ・ラマ14世、エリ・ヴィーゼル、クラーラ・イソヴァー、ミハル・スラニー
【配給】エデンポニーキャニオン
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】YEBISU GARDEN CINEMA
【鑑賞料金】1,000円(会員・2ポイント使用)

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『はるねこ』

いやぁ~いい具合にワケのわけらない映画だった。こんな映画久しぶりに観た。
粗筋を読んでもなんの話かサッパリだし、観ても人にどんな映画か説明できん。
喩えるなら町田康を片手に足立正生と七里圭の映画を同時に観たような気分?
もっと“アピチャッポン”風にスヤスヤしちゃう睡眠導入映画かと思っていたら
絶妙なところに歌やユーモアがぶっ込まれて賑やかだし音響設計も実に見事で
難解ながらに作者の思想も随所に感じる、いろんな意味で頼もしい映画だった。
今ドキこんなアナクロな映画を20代の若い監督が撮るというのがうれしいし、
それに胸を貸す田中泯やりりィや川瀬陽太といった、名優たちの存在感も素敵。
このテの映画にケチをつける時よく「オ○ニー映画」なんて言ったりするけど、
しかしこう“つながり”だの“絆”だのがチヤホヤされる糞気持悪い社会になると、
こんな映画こそ愛しいというか、人間の孤独を感じさせてくれて貴重に思える。
実際、本作はそこらの映画よりちゃんと社会や世界に目を向けている…と思う。
流行の“わかりやすい”に対抗して無残に負ける、こういう映画も時には好きだ!

haruneko

しかし何の話かよくわからなかった。

『はるねこ』(2016年・日本/カラー/85分)
【監督】甫木元空
【出演】山本圭祐、岩田龍門、赤塚実奈子、高橋洋、川瀬陽太、川合ロン、りりィ、田中泯、福本剛士
【配給】Miner League
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース
【鑑賞料金】1,200円(会員)