アレハンドロ・ホドロフスキー監督作品関連レビュー一覧(旧ブログより)

これもまた“映画の奈落”!ホドロフスキーのDUNE事件!
『ホドロフスキーのDUNE』(2014/06/17)

まさにこれは 『映画の奈落 北陸代理戦争事件』 にも通ずる映画を生み出す上での“覚悟”についてのお話。
『北陸代理戦争』 という興行的には惨敗し、どころか実際のヤクザの抗争まで誘発した映画にまつわる話が、
しかし時を超えて今多くの人を感動させているように、『DUNE』 という壮大な映画を生み出さんと果敢に挑み、
失敗して一度は奈落に落ちたもののそれを「だからどうした?」と言いのけられる1人の孤高の作家の言葉は、
どんな映画よりも感動的で、人の心を揺すぶらずにはいられない。それは、『北陸~』 を書いた高田宏治にも、
『DUNE』 を創らんとしたホドロフスキーにも映画(もしくは芸術)のためなら奈落の底へ落ちても構わないという、
覚悟があったからだ。…まぁ2人とも実際に落ちるつもりはなかっただろうけど。なにしろ現在公開中の話題作、
『ホドロフスキーのDUNE』 には冗談抜きで勇気をもらえる。人生、下降気味という人は涙なしじゃ観られない!

もちろんカルト映画の極北と言われる 『エル・トポ』 のアレハンドロ・ホドロフスキー監督によって企画されるも、
けっきょく創られなかったSF大作 『DUNE』(デヴィッド・リンチの 『砂の惑星』 と同原作)にまつわる話の数々は、
未完成にもかかわらずその後のSF映画の歴史を変えてしまった奇蹟の物語として途轍もなく面白いんだけど、
それ以上に惹き込まれるのはやっぱり齢85にして事の顛末を身ぶり手ぶり交えながら怒涛の勢いで喋り倒す、
ホドロフスキー監督自身の圧倒的な人間力。カルト映画の神が、SF映画の神でもあったって事実にも驚くけど、
もっと畏れ多い人物だと思っていた(そしてとっくに故人だと思っていた)『エル・トポ』 や 『ホーリー・マウンテン』、
そして 『サンタ・サングレ/聖なる血』 の監督がこんな愉快な爺だったという驚きは何にも替え難き映画的魅力。
本作を観れば誰もが老いなどものともしないホドロフスキー監督の豊かなバイタリティに心を奪われるハズだ!

語る言葉はどこまでも壮大なのに、『砂の惑星』 のあまりのヒドさに(うんまぁ確かに)手を叩きよろこんだという、
要は他人の失敗を素直によろこぶその姿は途轍もなくチャーミング。だけど、あれほど命を懸けた作品なのに、
ひと通り語り終えて膨大な絵コンテを繰りながら「私が死んだら誰かが創ればいい。アニメでもいいじゃないか」
とつまり“芸術とは全人類で共有するべきもの”とサラっと言えるその懐深さに感動しボクはそこで涙腺が破裂。
とはいえ 『DUNE』 を創るための“魂の戦士”としてスカウトしたピンク・フロイドがハンバーガーを食すのを見て、
「魂の戦士がビックマックなんて食いやがって!」と憤ったという件には爆笑必至。とにかく、このじいさん最高!
1本の未完のSF映画を通じ、70年代がいかに芸術的に優れた時代だったかに驚きつつ1人の作家の魂に迫る、
珠玉の人間ドキュメント! ホント高田宏治といいホドロフスキーといい映画にはイカしたじいさんがいっぱいだ!!

jodorowskys-dune

この人ならマジで300歳まで生きれそうに思える。

『ホドロフスキーのDUNE』(2013年・アメリカ/カラー/16:9/DCP/90分)
【監督】フランク・パヴィッチ
【出演】アレハンドロ・ホドロフスキー、ミシェル・セドゥー、H.R.ギーガー、ニコラス・ウィンディング・レフン
【配給】アップリンク/パルコ
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】アップリンクX(渋谷)
【鑑賞料金】1,500円(劇場鑑賞券)

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R18を超えたEO18版でホドロフスキーの魂の“聖水”を浴びよ!
『リアリティのダンス』(2014/07/17)

そりゃボクとて映画好きの端くれなので言わずと知れたアレハンドロ・ホドロフスキー監督の代表的な3本、
『エル・トポ』 と 『ホーリー・マウンテン』 と 『サンタ・サングレ/聖なる血』 ぐらいはみんな観ているし(全部VHS)、
それらが映画史に燦然と輝くカルト映画であることも当然わかっているつもりなんだけど、
しかしじゃあだからって鑑賞した当時心から3本を“愉しめたか”というと…正直ちょっと自信がなかったりもする。
なにせ3本とも内容が意味不明というかブッ飛んでいるためそのブッ飛びぶりを「凄ぇ…」とは思いながらも、
どこかTV画面の前に置き去りにされたような気分になったこともまた確かだからだ。
なので、そんな映画を撮った人が実は愛嬌溢れまくりのよく喋る好人物だったという驚きとよろこびも含めて、
『ホドロフスキーのDUNE』 には大変感動したもののではそれが23年ぶりの新作となると今度はどうだろうかと。

やっぱり内容がブッ飛びすぎていてうまくついていけなかったら寂しいし、
それならまだしも単にツマラないじじぃの尿漏れみたいな映画だったらそれもまた寂しいと思っていたんだけど、
そんなのはまったくの杞憂だった…『リアリティのダンス』 はめちゃくちゃ面白い映画だった!
もちろん、内容はこれまでの映画と寸分違わぬ感じでブッ飛びまくっていながらも、
どこかそれを越えて観る者の胸にスッと入り込んでくるような叙情味を本作が携えているのは、
監督の年齢や監督自身が時に画面に現れ優しく話しかけてくるという構成によるところも大きいと思うんだが、
なんにせよ、こんな映画は観たことがないしとりあえずは“笑える”場面が満載なので、
本作に対しいろいろ先入観を抱いている人はそんなもの取っ払ってまずは気楽に観に行けばいいんだと思う。

で、この映画の内容をひと言で集約するのは難しいしボクにそんな優れたボキャブラリーはないんだけど、
それでもどうにかひと言で表すとしたら本作は監督の幼少期を題材にした“森崎東的”怒涛の人間愛の物語。
森崎東というのはちょっとイメージで引き合いにしただけだけどとにかくこれはホドロフスキー監督の家族の話。
1920年代に、軍事政権下だった南米はチリのトコピージャという村で、
権威的で暴力的な共産主義者の父親と息子を自分の父親の生まれ変わりだと信じている母親の元に育った、
ホドロフスキー監督の幼少時代がそれはもう観なければわからない超独特の色彩と、
フェリーニ的というより個人的には江戸川乱歩の 『パノラマ島奇談』 や、
夢野久作の 『ドグラ・マグラ』 を彷彿とさせる絢爛豪華な“悪趣味人間サーカス”によって自由に描かれてゆく。

『エル・トポ』 にも出ている監督の長男ブロンティスが演じる、
常にテンションがマックスのフレディ・マーキュリーみたいな父親像にもド肝を抜かれ終始大笑いなんだけど、
台詞をすべてオペラ調で歌う(しかも即興らしい)爆乳お母さんの存在感にはさらにびっくりで最初腰が抜ける!
それ以外にもなにしろフリーキーな人たちが次々と現れまさしくその様子は人間サーカスもしくは人間博覧会。
アップリンクでしかやっていない無修正の“EO18版”というヤツで観たんだが(エンジョイ・オーバー18って!)
フレディはチ○コをバンバン出すし(しかも外人のクセに意外と大したことない)、
お母さんも脱ぎまくるどころか病気に罹ったフレディをよもやオシッコで治すシーンには目が点!(まさに“聖水”)
徹頭徹尾そんな人々とそんな場面のオンパレードだから冒頭からしばらくは退屈している暇なんてない。

“しばらく”と書いたのは個人的にちょっぴりウトウトとしてしまうような落ち着いた場面が後半にあるからで、
それは、聖水を機に主人公が少年(ホドロフスキー自身)から父親にシフトして以降のパートのことなんだけど、
おそらくそれは監督の父親の内面に入り込みその実像を描くという作業が大人の感覚だからじゃないかと思う。
要は監督のかつて自分を苦しめた家族を“許す”という想いがあまりに優しく心地好いオーラを放っているのだ。
とはいえ、そんな父親が主人公のパートとて一見は意味不明なエピソードの連続なんだけど、
しかしそんなホドロフスキー監督の家族に対する穏やかで優しいアプローチの方法は、
たとえば遺作に至るまで家族の断崖絶壁を呵責なく描き続けたイングマール・ベルイマンとはえらい違い……。
それぞれの魂の旅路の果てに家族が一つになるラストは実に詩情豊かで静謐な気分に包まれることだろう。

人間、大人になるとツマラなくなるというがホドロフスキー監督が齢80歳をとうに越えてもこんなに面白いのは、
劇中で彼自身がかつての彼に語っている通り「辛い年月の重さに耐えても心の中にはまだ少年がいる」からだ。
しかもこんな話を家族総出で創ってしまうだなんてこの時代に凄まじい家族の絆だとしか言いようがない。
ダリオ・アルジェントは娘アーシアの美しい裸体を自身の最高の芸術作品としてフィルムに収めたが、
これほど自分の目前で息子(それもけっこう立派な年齢の)にチ○コ(それも意外と大したことない)を露出させ、
それどころか爆乳熟女の聖水をガチで浴びさせる父親もいないんじゃないか?(つーか絶対ホドロフスキーだけ)
芸術は深い。というワケで本作を観るならぜひ完全無修正のEO18版をおススメする!
早くも新作を創っているというしまだまだしばらくホドロフスキー・フィーバーはつづきそうだ!

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父親に鳥の羽で体をくすぐられるシーンも最高!

『リアリティのダンス』(2013年・チリ=フランス/カラー/1:1.85/130分)
【監督】アレハンドロ・ホドロフスキー( 『エル・トポ』 『ホーリー・マウンテン』 『サンタ・サングレ/聖なる血』 )
【出演】ブロンティス・ホドロフスキー、パメラ・フローレス、イェレミアス・ハースコヴィッツ
【配給】】アップリンク/パルコ
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】アップリンク・ファクトリー(渋谷)
【鑑賞料金】1,500円(劇場鑑賞券)