2017年2月鑑賞映画メモ(新作8作品)

①『グリーンルーム』(2/11)

ひたすら真面目な『フロム・ダスク・ティル・ドーン』チックな映画だな…と
ちょっとだけ思った。途中まではもの凄くドキドキしながら観ていたんだけど、
敵のネオナチの数がやたら多い上に頭悪すぎなもんだから(だからネオナチ?)
後半の展開は一転安心しながら観てしまい、けっきょくカタルシスは今一つ…。
最近の自分の傾向なんだけどこういうテイストであまりに人がポコポコ死ぬと
逆にリアリティを感じず遠目になってしまうんだよな。グロにも厭きてきたし。
映像が凝ってるワリには悪夢感も稀薄で自分ももう歳なんだろうか?(歳です)
愉しみにしていただけに少し残念。そしてアントン・イェルチンは本当に無念。


ホント残酷映画にも厭きてきました。

『グリーンルーム』(2015年・アメリカ/カラー/シネスコ/DCP/95分)
【監督】ジェレミー・ソルニエ(『ブルー・リベンジ』)
【出演】アントン・イェルチン、イモージェン・プーツ、パトリック・スチュワート、カラム・ターナー、メイコン・ブレア、ジョー・コール、アリア・ショウカット
【配給】トランスフォーマー
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】新宿シネマカリテ
【鑑賞料金】1,500円(クーポン割引)

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②『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』(2/12)

距離的にはチュニジアよりもイタリアに近く移民や難民の玄関口となっている
小さな島を舞台にした昨年のベルリン国際映画祭、最高賞のドキュメンタリー。
難民たちの苦境と島民の平穏な暮らしという一見相容れない二極を描きながら
それを異世界同士の対峙とはしない作風に世界の“境目”について考えさせられ、
差別や分断を煽る声に社会が押し流されがちな今、本作の何をも声高に叫ばぬ
落ち着き払った姿勢には、そんな風潮への静かな抵抗を感じて頼もしいばかり。
社会派色より叙情性が胸を打つ完璧な構図や吸い込まれるような映像美も凄い
まさしく今観るべき傑作! 寝不足だったけど観ている内にどんどん覚醒した。


残酷映画より世界はもっと残酷だ…。

『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』(2016年・イタリア=フランス/カラー/114分)
【監督】ジャンフランコ・ロージ(『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』)
【配給】ビターズ・エンド
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ル・シネマ(渋谷)
【鑑賞料金】1,100円(日曜日最終回割引)

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③『サバイバルファミリー』(2/16)

酷いなこれは。前作が快作だっただけに矢口史靖復活かと思い期待したけど…。
あの未曾有の震災からもうすぐ6年という時期にこんな呑気な映画が創られる、
この国の情けなさ。「諷刺はなしの最後は家族愛で!」と釘でも刺されたのか、
話はひたすらつまらず適当にゴミを散らかし適当なサバイバルネタを散りばめ
後はなんの装備もなくキャンプに出かけた家族が農家体験してハイ、おしまい。
もう何が赦せないといってコメディを逃げ道にしているところがホント最悪!
最初はこの設定でゾンビや未知のウィルスに頼らないのがいいと思ってたけど
こんなならゾンビが出てきて一家が喰われてハイ終わりの方が面白かったよ!


今こういうネタで映画を創るのなら
何かもっと訴えることがあるだろ!

『サバイバルファミリー』(2017年・日本/カラー/117分)
【監督】矢口史靖(『裸足のピクニック』『ひみつの花園』『アドレナリン・ドライブ』『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』『歌謡曲だよ、人生は』『ハッピーフライト』『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』)
【出演】小日向文世、泉澤祐希、葵わかな、深津絵里、時任三郎、藤原紀香、大野拓朗、志尊淳、渡辺えり、宅麻伸、柄本明、大地康雄、菅原大吉、徳井優、桂雀々、森下能幸、田中要次、有福正志、左時枝、ミッキー・カーチス
【配給】東宝
【5段階評価】★☆☆☆☆
【鑑賞劇場】ユナイテッド・シネマとしまえん(豊島園)
【鑑賞料金】ポイント鑑賞

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④『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フランメンコ~』(2/18)

ショーアップされたステレオタイプなフラメンコのイメージがガラリと変わり
カルロス・サウラよりトニー・ガトリフが観たくなる秀作ドキュメンタリー!
スペインはアンダルシア地方のサクロモンテがフラメンコの聖地であるという
事実のほか、その成立にイスラームの文化が影響しているなんて初めて知った。
老若男女関係ないロマの生活や人生観に根差した歌詞の数々も面白く、中でも、
「信仰さえも君への愛のために質に入れた」という一節には心からシビレた!
こんな敬虔さと愛と生活苦を同時に感じさせる歌詞は今まで聴いたことない!
世界は広く、歴史は深く、文化は豊かであると実感できる旅に出たくなる1本だ


一つ部屋に集いし人々が順に踊る構成も◎。

『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フラメンコ』(2014年・スペイン/カラー/16:9/ステレオ/94分)
【監督】チュス・グティエレス
【出演】クーロ・アルバイシン、ラ・モナ、ライムンド・エレディア、ラ・ポロナ、マノレーテ、ペペ・アビチュエラ、マリキージャ、クキ、ハイメ・エル・パロン、フアン・アンドレス・マジャ、チョンチ・エレディア
【配給】アップリンク
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】有楽町スバル座
【鑑賞料金】1,400円(劇場鑑賞券)

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⑤『SYNCHRONIZER』(2/19)

偉い!何が偉いって最後キレイなおっぱい出してたあの若い女優さんが偉い!
いやぁー面白いといったら予測不能かつ大胆な展開で充分面白かったんだけど
それ以上にそこはかとない低予算映画の悲しみというか、こういう映画はもう、
自主製作でしか創られえないという日本映画の現実(?)に胸をしめつけられた。
むしろ監督がもっと若くて借金してでもこういう映画が撮りたかった!という
情熱でも感じられたなら印象もまた違ったんだろうけどそういうワケではなく
無難に隅々まで巧いから逆に物足りないという…。いや充分面白かったけど!
だからいっそ共同脚本だけでなく、『みちていく』の監督に撮ってほしかった。


頑張ってるけど如何せん安っぽいというか。

『SYNCHRONIZER』(2015年・日本/カラー/アメリカン・ビスタ/83分)
【監督】万田邦敏(『Unloved』『ありがとう』『接吻』)
【出演】万田祐介、宮本なつ、古川博巳、中原翔子、大塚怜央奈、美谷和枝
【配給】SYNCHRONIZER
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,200円(会員)

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⑥『エリザのために』(2/21)

ルーマニアの絶望感が凄い…。少し前にTVで、ルーマニアが五輪で輝いていた
ナディア・コマネチの時代を目指そうにも優秀なコーチがみないい給料を求め
海外に出て行ってしまうという話をやっていたが、本作でそれがよくわかった。
でも…好きなんだよな。ルーマニアや隣のブルガリアのどんよりした雰囲気が。
解説を読んでいろいろとスッキリしない苦手なタイプの映画かと思っていたら
緻密な構成の会話劇と仄かなサスペンスの風味で、ラストまで面白く観られた。
娘のためなら不正も厭わぬお父さんの愛人役のマリナ・マノヴィッチが素敵!
彼の国の暗部とともに人間心理の“グラデーション(英題)”部分を描いた傑作だ。


モヤモヤさせつつラストには微かな希望も。

『エリザのために』(2016年・ルーマニア=フランス=ベルギー/カラー/128分)
【監督】クリスティアン・ムンジウ(『4ヶ月、3週と2日』『汚れなき祈り』)
【出演】アドリアン・ティティエニ、マリア・ドラグシ、リア・ブグナル、マリナ・マノヴィッチ、ヴラド・イヴァノフ
【配給】ファインフィルムズ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】新宿シネマカリテ
【鑑賞料金】1,500円(クーポン割引)

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⑦『百日告別』(2/25)

素晴らしい。やられた。と言っても別にどんでん返しな展開があるワケじゃなく
ともに最愛の人を交通事故で亡くしたある男女の心の機微を丁寧に描いてゆく
ただそれだけの話なんだけど、それが法要本来の意味とともに語られ実に巧い。
当然だが、法要も形だけでは無意味という戒めがドラマに説得力を与えている。
とは言っても別に宗教行事を大切にしましょうなんて説教じみた映画ではなく
これはきっと“死は生に内包されている”というアジア的な死生観に基づく物語。
だいたい2人が出逢って恋をするとかいうありがちな話じゃないところが素敵。
台湾、そして台湾映画は本当に“大人”だとあらためて感じさせてくれる秀作だ。


まるで油断していたため最後は涙ポロポロ。

『百日告別』(2015年・台湾/カラー/95分)
【監督】トム・リン(『九月に降る風』)
【出演】カリーナ・ラム、シー・チンハン、チャン・シューハオ、リー・チエンナ、ツァイ・ガンユエン、アリス・クー、マー・ジーシアン
【配給】パンドラ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,200円(会員)

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⑧『トリプルX:再起動』(2/26)

す、凄い…。なんか勢いだけでめちゃくちゃだけどめちゃくちゃ面白かった!!
それにドニー・イェンが出ているといってもどれほどのものかと思っていたら
まるでヴィン・ディーゼルとのバディ・ムービーみたくなっているじゃない!
トニー・ジャーもいっぱい出てくるし『オーム・シャンティ・オーム』の美女
ディーピカー・パードゥコーンは華と色気ムンムンだしアジア色濃厚で最高!
ちょっと味が濃すぎ&猥雑すぎてワイスピのような人気とはならないだろうが、
個人的にはコッチの方が好き! こんな再起動なら大歓迎! ぜひ、新作創って!
とにかく、これだけ面白ければいい加減な脚本も演出も全然問題なし!満足!


こんなハリウッド映画を観る日が来るとは。

『トリプルX:再起動』(2017年・アメリカ/カラー/107分)
【監督】D・J・カルーソー(『テイキング・ライブス』『ディスタービア』『イーグル・アイ』)
【出演】ヴィン・ディーゼル、ドニー・イェン、ディーピカー・パードゥコーン、クリス・ウー、ルビー・ローズ、トニー・ジャー、ニーナ・ドブレフ、ロリー・マッキャン、トニ・コレット、サミュエル・L・ジャクソン、ネイマール
【配給】東和ピクチャーズ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ユナイテッド・シネマとしまえん(豊島園)
【鑑賞料金】1,300円(レイトショー割引)

邦題にいい意味で裏切られる男社会に戦いを挑んだ女性たちの武闘派映画! 『未来を花束にして』

びっくり…そして燃えた!もっとふんわりした印象の女性ドラマかと思ったら
1910年代のイギリスで参政権を求め立ち上がった女性たちの熱い実話を描く、
爆破アリ拷問アリですわ東映か!?と見紛うゴリッゴリの社会闘争映画だった!
そら批判も致し方なしと思うほど邦題と内容の乖離甚だしく、その乖離ぶりは、
故・松方弘樹の大名作『強盗放火殺人囚』並み!(つまり逆・岡田茂的な邦題!)
でも、これは本当に“今”にも通じる映画で100年前の話なのに日本にしたら例の
五輪のゴルフ会場の女性正会員の件を出すまでもなくイマココってなもんだし
生活保護や過労自殺といった社会問題のみならずテロの問題にも通底するなど
議論の基になる内容なのに、それが邦題が批判されるばかりなのは実に残念…。
メイン級かと思ったら出番少しなのに重鎮感全開のM・ストリープもさすがで
彼女演じる活動家の演説場面なんか先のゴールデングローブ賞の時そのまま!
とにかく世界が再び後退しつつある今だからこそ観るべき力作。まずは必見だ。


とりあえず邦題に“未来”使うの禁止!

『未来を花束にして』(2015年・イギリス/カラー/シネマスコープ/5.1ch/106分)
【監督】サラ・ガヴロン
【出演】キャリー・マリガン、ヘレナ・ボナム=カーター、ブレンダン・グリーソン、アンヌ=マリー・ダフ、ベン・ウィショー、メリル・ストリープ
【配給】ロングタイド
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズシャンテ(日比谷)
【鑑賞料金】1,400円(シネマイレージデイ)

なりゆきな人生、なりゆきでつながっている世界… 『なりゆきな魂、』&『ホームレス ニューヨークと寝た男』&『変魚路』

『なりゆきな魂、』

これめちゃくちゃ面白いじゃん! もっとシュール一辺倒な話かと思っていて、
そら確かにつげ忠男が原作だから基本的にはドが付くほどシュールなんだけど
しかし、バス事故のエピソードを加えたことにより『ヘヴンズ ストーリー』と
同じテーマが『ヘヴンズ~』の何倍も巧く映画という表現の中に脈打っていて
これはもしかすると瀬々監督、近年出色の仕事ぶりでは?と思うほどの面白さ。
ピンク時代の片鱗が久々に顔を覗かせとても『64』と同じ監督とは思えない!
有名無名取り混ぜた役者もみんな巧かったし(足立正生監督のたたずまいよ!)、
とにかくこれはシュールでアナーキーだが裏『ヘヴンズ~』とも言える傑作!


これなら『菊とギロチン』も愉しみ。

『なりゆきな魂、』(2016年・日本/カラー/DCP/107分)
【監督】瀬々敬久(『黒い下着の女 雷魚』『冷血の罠』『アナーキー・インじゃぱんすけ 見られてイク女』『HYSTERIC』『ユダ』『肌の隙間』『サンクチュアリ』『刺青 堕ちた女郎蜘蛛』『泪壺』『フライング☆ラビッツ』『感染列島』『ヘヴンズ ストーリー』『愛するとき、愛されるとき』『64-ロクヨン-』)
【出演】佐野史郎、足立正生、柄本明、山田真歩、栁俊太郎、中田絢千、三浦誠己、町田マリー、石川真希、川瀬陽太、吉岡睦雄、後藤剛範、飯田芳、國元なつき、坂上嘉世、管勇毅、増田健一、蟹瀬令奈、葵來沙、安野恭太、小田哲也
【製作】ワイズ出版
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,200円(会員)

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『ホームレス ニューヨークと寝た男』

これもまた面白かった! もう3年前の映画だから今もこのマーク・レイさんが
屋上暮らしをつづけているのかが知りたいし、トランプをどう思っているのか
一度じっくり訊いてみたい。それによって映画の印象もまた変わったりしそう。
ニューヨークで何年もホームレスをしている、52歳のフォトグラファーのお話。
予想したような“何も持たない生活が真の幸せ”みたいな胡散臭い啓蒙はないし、
かと言ってかつては順風満帆だったイケメンの落伍ぶりを愉しむ映画でもなく
ましてや社会派よろしく世相を斬る映画でもなくレイ氏をある種の“鏡”にして、
観客それぞれが自分の人生を振り返らざるをえない、そんな映画なのが面白い。

打たれ強く楽天的なようでいてある日フッと死んでしまいそうな雰囲気もある
レイ氏の人柄も憎めないし(だいたいこんな人腹立ったりしそうなもんだけど)、
なにより彼の友だちでもある監督が自分と彼との境遇の違いはなんなのか…と
人生の別れ道を見つめる眼差しに愛があって、それが映画を優しく包んでいる。
一度落ちぶれたら這い上がるのが大変そうな、それでいて彼みたいな人生でも
それなりに愉しくやっていけそうなニューヨークという街の懐深さも感じられ
今のアメリカを鑑みながら観るのにぴったり。こんな映画は東京じゃ創れない。
明日は我が身と震えつつ人生なんとかなるさと元気も出る風変わりな人物伝だ


てっきりアップリンクの配給かと…。

『ホームレス ニューヨークと寝た男』(2014年・オーストリア=アメリカ/カラー/83分)
【監督】トーマス・ヴィンテルゾーン
【出演】マーク・レイ
【配給】ミモザフィルムズ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ヒューマントラストシネマ渋谷
【鑑賞料金】1,000円(会員更新特典)

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『変魚路』

凄い…。『なりゆきな魂、』がわかりやすい絵本だったかと思うほど意味不明!
かつて同監督の『ウンタマギルー』や『夢幻琉球・つるヘンリー』を観た時も
相当のけぞったけど、この18年ぶりの最新作はそんな生易しいレベルじゃない。
しかも、観た後の自分は今どこへ行っていたのか…という得も言われぬ覚醒感。
合理性が第一の今の時代にこういう映画を創るのも偉いし配給するのも偉いし
スクリーンにかけるのも偉いし観るのも偉い! ほんとワケわからんかった…。
でも、その反面沖縄のしなやかさというかタフな風土を感じる映画でもあった。
この週末は『なりゆきな魂、』に驚き『ホームレス ニューヨークと寝た男』に
人生をしみじみ考え『変魚路』に脳ミソをモミモミされた。映画は奥深いなぁ。
そしてボクの人生も本当に“なりゆき”だ。なぜこんなところまで来たんだろう?
子供の頃から“こうなりたい”みたいな人生の理想図がなかったからだろうな…。
でもそれでよかった。今にホームレスになっても自分は意外と平気な気がする。


ウソ! せめて屋根の下で死にたい!

『変魚路』(2016年・日本/カラー/81分)
【監督】高嶺剛(『パラダイスビュー』『ウンタマギルー』『夢幻琉球・つるヘンリー』)
【出演】平良進、北村三郎、大城美佐子、川満勝弘、糸数育美、河野知美、山城芽、西村綾乃、親泊仲眞、内田周作、花井玲子、石川竜一
【配給】シネマトリックス
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】シアター・イメージフォーラム(渋谷)
【鑑賞料金】1,100円(会員)

2017年1月鑑賞映画メモ(13作品)

①『フィッシュマンの涙』(1/1)

新年1発目。お正月らしく奇抜で賑やかそうな映画を…と思って選んだんだけど
意外としんみりしちゃったし、オフビートなテイストゆえ賑やかでもなかった。
製薬会社の治験仕事の副作用で半魚人と化してしまった青年をめぐる騒動から
日本にも通じる韓国社会の歪みが浮かび上がる、不条理系ブラック・コメディ。
ビジュアルは映画らしく奇抜でもさすが製作総指揮イ・チャンドン監督だから
テーマは極めて社会派でフザケた感じはなく、作品自体の好感度はかなり高め。
でも、韓国映画にしてはサッパリしすぎな感もあり正直喰い足りなさは否めず。
どことなく『pk』とカブる印象もあったかな。いずれ韓国映画には今年も期待!

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シネマスコーレの元旦恒例(?)サービスで
お汁粉をいただきました!美味しかった!

『フィッシュマンの涙』(2015年・韓国/カラー/シネスコ/92分)
【監督】クォン・オグァン
【出演】イ・グァンス、パク・ボヨン、イ・チョニ
【配給】シンカ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】シネマスコーレ(名駅)
【鑑賞料金】1,000円(映画サービスデー)

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②『疾風スプリンター』(1/7)

もう満腹…。役者もスタッフも命懸け。それに較べたら自分にできることなんて
熱き彼ら映画人たちをリスペクトして2時間オシッコを我慢することぐらいだ!
自転車ロードレースの世界を舞台に若きプロ選手たちの栄光と挫折を活写した
ダンテ・ラム監督作らしく感動と昂奮おかわり無料の特盛スポ根青春ドラマ!
もうヒロインのワン・ルオダンが可愛すぎ!彼女の自転車をアシストしたい!
それがダメなら生まれ変わって彼女の自転車のサドルになりたい!(やめなさい)
年齢的に『激戦』の方が好きではあるけどレース・シーンはド迫力の一語だし
ドラマも恋と友情がテンコ盛りで気恥ずかしくも爽やかなカタルシスが満載!


東京での劇場鑑賞皮切りに相応しい
実に心が洗われる快作でありました。

『疾風スプリンター』(2015年・香港=中国/カラー/シネマスコープ/DCP/125分)
【監督】ダンテ・ラム(『ビースト・ストーカー/証人』『スナイパー:』『密告・者』『コンシェンス/裏切りの炎』『ブラッド・ウェポン』『激戦 ハート・オブ・ファイト』『クリミナル・アフェア 魔警』)
【出演】エディ・ポン、チェ・シウォン、ショーン・ドウ、ワン・ルオダン
【配給】エスパース・サロウ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】新宿武蔵野館
【鑑賞料金】1,500円(クーポン使用)

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③『人魚姫』(1/8)

リン・ユンかーわーいーいー。キティ・チャンえーろーいー。もう女優が完璧!
凄い…凄すぎる…めちゃくちゃ愉しかった!チャウ・シンチーにハズレなし!
よくも毎度毎度ここまでバカバカしい、だけど、最っ高の映画が創れるもんだ!
お腹いっぱい。七草粥でせっかく休めた胃もまるで元通りな(喰ってないけど)
笑いと涙の波状攻撃でこれ以上ムリってほど満腹必至な中華娯楽おせち映画!
もうオープニングの選曲からしてやりたい放題! 笑えるしキモイし可愛いし、
エロいしクライマックスはいきなり残酷だしだけどラストはマジで泣けるしで
なにしろあらゆる感情を心地好くくすぐられる内に94分なんてアッという間!

環境破壊や共存共栄など喜劇だからこそマジメなテーマを謳うところも好き!
中国マネーを湯水の如く使い中国を揶揄するなんてシンチーにしかできない!
まだ観ていないけどきっと話題沸騰の『ラ・ラ・ランド』を観ても自分は絶対
コッチの方が好きだって言うと思うな。それぐらい2人が歌う場面もよかった!
新春早々こんな景気のいい映画が観られるとは、こいつぁ春から縁起がいいや。
てかシンチーとダンテ・ラムとジョニー・トーの最新作がまとめていっぺんに
しかも全部新宿でやっているってよく考えたらスゲぇ景気のいい話だなオイ!
とにかく面白かった!可愛くてエロかった!早く『西遊記』の続篇が観たい!


シンチーの女優審美眼は相変わらず。

『人魚姫』(2016年・中国=香港/カラー/94分)
【監督】チャウ・シンチー(『0061/北京より愛をこめて!?』『008(ゼロ・ゼロ・パー)皇帝ミッション』『食神』『喜劇王』『少林サッカー』『カンフーハッスル』『ミラクル7号』『西遊記 ~はじまりのはじまり~』)
【出演】ダン・チャオ、リン・ユン、キティ・チャン、ショウ・ルオ
【配給】ツイン
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】シネマート新宿
【鑑賞料金】1,300円(TCG会員)

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④『壊れた心』(1/10)

主演が浅野忠信で撮影がクリストファー・ドイルでMVみたいな映像ってそれ、
90年代ミニシアター・ブーム全盛期のレイトショーか! みたいな映画でした。


浅野忠信はすっかり再全盛期ですね。

『壊れた心』(2014年・フィリピン=ドイツ/カラー/73分)
【監督】ケヴィン・デ・ラ・クルス
【出演】浅野忠信、ナタリア・アセベド、エレナ・カザン、アンドレ・プエルトラノ、ケヴィン、ヴィム・ナデラ
【配給】Tokyo New Cinema
【5段階評価】★★☆☆☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,200円(会員)

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⑤『ホワイト・バレット』(1/12)

病院という生と死が交錯する静謐な場所だからこそサスペンスが冴えまくる!
クライマックスは『エグザイル/絆』をも超え、映画史に残る銃撃戦! 大傑作!


こんな傑作がレイトショーだなんて。

『ホワイト・バレット』(2016年・香港=中国/カラー/88分)
【監督】ジョニー・トー(『過ぎゆく時の中で』『ファイヤーライン』『ザ・ミッション 非情の掟』『暗戦 デッドエンド』『フルタイム・キラー』『ターンレフト・ターンライト』『PTU』『マッスルモンク』『柔道龍虎房』『ブレイキング・ニュース』『イエスタデイ、ワンスモア』『エレクション』『エレクション 死の報復』『エグザイル/絆』『強奪のトライアングル』『MAD探偵 7人の容疑者』『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』『奪命金』『ドラッグ・ウォー 毒戦』『名探偵ゴッド・アイ』『華麗上班族』)
【出演】ルイス・クー、ヴィッキー・チャオ、ウォレス・チョン
【配給】ハーク
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】新宿武蔵野館
【鑑賞料金】1,500円(クーポン使用)

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⑥『トッド・ソロンズの子犬物語』(1/24)

トッド・ソロンズ好きにはだいたいどんな話かタイトルだけでちゃんと伝わり
知らない人は可愛い動物ものかと思わせまんまと騙す、なかなか技アリの邦題。


それにしてもいよいよアメリカもソロンズ
の映画そのまんまの救いようのない国に…。

『トッド・ソロンズの子犬物語』(2015年・アメリカ/カラー/アメリカンビスタサイズ/88分)
【監督】トッド・ソロンズ(『ウェルカム・ドールハウス』『ハピネス』『ストーリーテリング』『おわらない物語 アビバの場合』『ダークホース ~リア獣エイブの恋~』)
【出演】ダニー・デヴィート、エレン・バースティン、ジュリー・デルピー、グレタ・ガーウィグ、キーラン・カルキン
【配給】ファントム・フィルム
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】ヒューマントラストシネマ渋谷
【鑑賞料金】1,000円(TCG会員ハッピーチューズデー)

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⑦『ブラインド・マッサージ』(1/24)

五感の一つが閉ざされているがゆえに、感情がヒリヒリと剥き出しの愛の世界。
ちょいと映像が凝りすぎでムダに血生臭すぎるけど、ロウ・イエらしい野心作。


この映画を観ている内に高熱が出ました…。

『ブラインド・マッサージ』(2014年・中国=フランス/カラー/1:1.85/DCP/115分)
【監督】ロウ・イエ(『ふたりの人魚』『パープル・バタフライ』『天安門、恋人たち』『スプリング・フィーバー』『パリ、ただよう花』『二重生活』)
【出演】ホアン・シュエン、チン・ハオ、グオ・シャオトン、メイ・ティン、ホアン・ルー、チャン・レイ
【配給】アップリンク
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】アップリンクX(渋谷)
【鑑賞料金】ポイント鑑賞

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⑧『ドラゴン×マッハ!』(1/28)

凄い…凄すぎる。ラスト・バトルの尋常ならざるカタルシスもさることながら
いわゆるアクション映画の文法をいっさい無視してひたすらダークな画作りと
歪なロマンチシズムにこだわるソイ・チェンの暴走暗黒演出にお腹いっぱい!
クライマックスはマジであまりの凄さに、引きつり笑いをしながら涙が出た…。
せっかく熱が下がったのにこんなの観たら違う意味でまた熱が出ちゃったよ!


なんて邦題!ちゃんとSPL2と謳え!

『ドラゴン×マッハ!』(2015年・香港=中国/カラー/120分)
【監督】ソイ・チェン(『ドッグ・バイト・ドッグ』『軍鶏 Shamo』『アクシデント』『モーターウェイ』『モンキー・マジック 孫悟空誕生』)
【出演】トニー・ジャー、ウー・ジン、サイモン・ヤム、ルイス・クー、マックス・チャン
【配給】ツイン
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】シネマート新宿
【鑑賞料金】1,300円(TCG会員)

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⑨『アンチポルノ』(1/28)

個々の作品デンデンはともかく今さら名前も地位もあるオジン監督ばかり揃え
女性監督や無名の若手監督の1人もいない今回の“ロマンポルノ・リブート”を、
全然支持する気にはなれないんだけどそれでも本作を観に行ったのはもちろん
2016年の“人妻・オブ・ザ・イヤー”筒井真理子さんが脱いでおられるからだ!
で、今年もブレそうにない己の熟女好きをあらためて確認できたのはともかく
映画的には案の定観なくてもよかったかなと思いつつ途中まで観ていたものの
しかし、ロマンポルノといったら70年代の作品ばかりがモテ囃されがちな中で、
おそらく1人気を吐くように80年代風の狂騒的作品を撮っている園子温監督は、
実はこの企画を最も理解しているようにも思われ官能だの繊細な心理描写だの
んなもん知るか!と言わんばかりの傍若無人なやりたい放題ぶりに最後はもう
「わかったわかった降参!」という感じで、拍手したい気持になってしまった。
まぁ、基本的にはこの監督らしく露悪的かつ幼稚な内容でつまんなかったけど。
真理子さんも素晴らしかったが主演の子もい~体をしていらっしゃいました♪


美魔女なんて安っぽい言葉もフッ飛びます。

『アンチポルノ』(2016年・日本/カラー/5.1CH/ビスタ/78分)
【監督】園子温(『俺は園子温だ!』『自転車吐息』『性戯の達人 女体壺さぐり』『自殺サークル』『Strange Circus 奇妙なサーカス』『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』『恋の罪』『地獄でなぜ悪い』)
【出演】冨手麻妙、筒井真理子、不二子、小谷早弥花、吉牟田眞奈、麻美、下村愛、福田愛美、貴山侑哉
【配給】日活
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】新宿武蔵野館
【鑑賞料金】1,500円(クーポン使用)

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⑩『沈黙-サイレンス-』(1/29)

もうぐったり。キリスト教の話なのに描かれるのは無間地獄とはこれいかに?
真の信仰やそれに基づく愛とは何か? 人間や社会っていったいなんだ…?と、
深々考えさせられるとともにお上の徹底したキリシタン弾圧の用意周到ぶりと
残酷絵巻にド肝を抜かれるスコセッシ監督面目躍如の拷問映画の金字塔にして
これぞホントの「日本スゴイ」映画!? 2時間半ひたすら地獄だった…。疲れた。


俳優・塚本晋也ここに極まれりの感。

『沈黙-サイレンス-』(2016年・アメリカ/カラー/162分)
【監督】マーティン・スコセッシ(『アリスの恋』『タクシードライバー』『ラスト・ワルツ』『レイジング・ブル』『グッドフェローズ』『ケープ・フィアー』『カジノ』『クンドゥン』『救命士』『ギャング・オブ・ニューヨーク』『アビエイター』『ディパーテッド』『シャッター アイランド』『ヒューゴの不思議な発明』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』)
【出演】アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライヴァー、浅野忠信、窪塚洋介、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ、リーアム・ニーソン
【配給】KADOKAWA
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】TOHOシネマズスカラ座(日比谷)
【鑑賞料金】ポイント鑑賞

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⑪『感じるつちんこ ヤリ放題!』(1/31)

小袋良男です! 誰だよあの役演じた新劇の役者みたいな人? あー面白かった!
『ロブスター』や『マジカル・ガール』よりよほどシュールで人を喰っていて
ロジャー・コーマンよりチープなキテレツ珍獣艶笑喜劇。(どんなジャンルだ?)
予測も深読みもいっさい拒否して、観る者を心地好く諦めの境地に誘う怪快作。
ヘタな作家風情が撮ればそれこそシュールでしょ?みたいな狙いが透けて見え
イライラしそうなところをまんまとスリ抜ける、これぞいまおか演出の真骨頂。
涼川絢音の浮世離れした雰囲気も作品の世界観とマッチしていて配役の勝利!
テーマなんてきっと何もないけど窮屈な世を生き抜くヒントが本作にはある!?


今やピンク映画に必要不可欠です。

『感じるつちんこ ヤリ放題!』(2016年・日本/カラー/70分)
【監督】いまおかしんじ(『たまもの』(原題:熟女・発情 タマしゃぶり)『かえるのうた』(原題:援助交際物語 したがるオンナたち)『おじさん天国』(原題:絶倫絶女)『白日夢』『ゴーストキス』『若きロッテちゃんの悩み』『UNDERWATER LOVE おんなの河童』『川下さんは何度もやってくる』『つぐない 新宿ゴールデン街の女』『妻が恋した夏』『帰れない三人 快感は終わらない』)
【出演】涼川絢音、安野由美、月本愛、伊藤清美、櫻井拓也、二ノ宮隆太郎、守屋文雄、松永祐樹、松原正隆、岡田智宏、川瀬陽太、佐藤宏、内藤忠司
【配給】OP映画
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】上野オークラ劇場
【鑑賞料金】1,600円(3本勃)

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⑫『いくつになってもやりたい男と女』(1/31)

これは、ポレポレ東中野で2008年に『たそがれ』の題で観て以来。泣けたぁ~。
ロマンポルノ・リブートもいいけれどやっぱりボクは今やメインストリームの
ロマポより“この映画の世界の片隅に”細々と咲くピンク映画のペーソスが好き。
この味わいが、リブートには感じられないピンク映画独特の世界観なんだよな。
昨年の『夢の女』にも並ぶ老いらくの恋を絶妙なユーモアと粋で描いた傑作!
主人公のフナやんが「お○こ触って」という病床の奥さんの最期の女の望みを、
唇を噛みながら叶えてあげるシーンに涙々…。最近はこういうのにホント弱い。
これこそ上野オークラ劇場のお客さんたちにぴったりのピンク映画だと思う!


ピンク版『人生フルーツ』!(ウソ)

『いくつになってもやりたい男と女』(2007年・日本/カラー/64分)
【監督】いまおかしんじ
【出演】多賀勝一、並木橋靖子、速水今日子、吉岡研治、小谷可南子、福田善晴、高見国一
【配給】新東宝映画
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】同上
【鑑賞料金】同上

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⑬『昼下がりの教室 教壇に立つ女(原題:高校牝教師-汚された性-)』(1/31)

突飛な設定やユーモアがまるでない分、監督の基本的な巧さがよくわかる佳作。
というワケで今回のいまおかしんじ監督特集は実に見事な3本勃でありました。


こういう女優さん今は何してるんだろう?

『昼下がりの教室 教壇に立つ女』(2001年・日本/カラー/60分)
【監督】今岡信治
【出演】仲西さやか、鈴木敦子、武田まこ、河合誠、田島英治、藤木誠人、伊藤猛
【配給】エクセス
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】同上
【鑑賞料金】同上

極私的・2016年鑑賞映画ベスト10

『インサイダーズ/内部者たち』

す、すごい…面白すぎる!!! ビョン様最高! いや、これからは敬意を込め“ビョン兄貴”と呼ばせてください!
昨年末に 『ベテラン』 を観て以来今年は年初から三隅研次にかまけ久しく韓国映画のことなど忘れていたけど、
2016年も世界でいちばん熱く燃え滾るような面白い娯楽映画を見せてくれるのはやっぱり隣の国かもしれない!
方やなり上がり、方や復讐を狙うドン底の検事とヤクザが手を組み巨悪に立ち向かうなんてなんと最高な物語!
最後の最後までハラハラする精度の高い脚本、顔の脂汗がコチラへ飛んできそうなほどギラギラした登場人物、
そして、過激ながらも抑制の利いたバイオレンスと突然炸裂するユーモアと生唾を呑むお色気の絶妙な匙加減。
ウ・ミンホなんて監督今回初めて聞いたけど、この緩急自在かつ腰の据わった天才的語り口はただ者じゃない!
イ・ビョンホン(いや!ビョン兄貴!)が名優なのはわかっていたがここまで彼の芝居に惚れ惚れしたのは初めて。
現実的にはどうにもならない歪んだ社会に対する熱い怒りを胸のスカッとするエンタメに昇華する、これゾ映画!
ついに現れた今年のベスト10候補! なにしろ傑作! 『生き残るための3つの取引』 『新しき世界』 の次はこれ!
あのヘドが出るなんて生易しいレベルじゃない権力者ドモの“チ○コ酒ゴルフ”は園子温監督が絶対マネしそう?
でも、ちょっとやってみたい。(よしなさい!) はぁ~ホント面白かったぁ~。(虚脱感…) 韓国映画はやっぱいいゼ。

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『ソング・オブ・ラホール』

もう最高! ボクがその昔、インドはシク教の聖地アムリトサルからワガ・ボーダーを越えラホールを訪れた時は、
とにかく、あの街は旅行者を狙った泥棒が多いらしいから気をつけろ!というのがバックパッカー間の約束事で、
しかし実際は決してそんなことはなかったんだけど、それよりもっと芸術の街だということを教えてほしかったな!
これはまさしくパキスタン版 『アンヴィル』! 伝統音楽に愛と人生を捧げてきた夢を諦め切れないおじさんたち!
本作は、“音楽は罪”と解釈する極端なイスラーム主義政権や、タリバンの影響で身の拠り所をなくしてしまった、
パキスタンの古典音楽の音楽家たちが、もはや瀕死寸前の伝統音楽を守るべくそれなら世界へ打って出ようと、
音楽的共通点の多いジャズに挑み奇蹟のNY公演を果たすまでの軌跡を追った音楽ドキュメンタリーの大傑作!
彼らがYouTubeに挙げたジャズの名曲「テイク・ファイブ」のカバーを聴いてしまったらもう、この映画の虜も同然。

それにインド、パキスタンを知る身としちゃシタールやタブラの音色を聴いただけでうれしくなってしまうんだけど、
どこを切ってもスーパーテクニシャンとは思えない“サッチャル・ジャズ・アンサンブル”の面々の味のある風貌と、
聴いた瞬間、目が点になる超絶的演奏とのギャップが最高でゆえにその不遇な音楽人生にも感情移入しまくり。
そしてそんな彼らがNYに往ったはいいもののビッグバンドとのリハが少しもうまくいかず(とてもシビアな舞台裏)、
さァどうなるのかと思ったら…もう“神が降りる”とはこんな時にいうんだとしか言いようのない、完璧な大団円…。
プロだねぇ~。さらには公演を大成功させ故郷へ帰ってからの彼らの姿がまた地味でいじらしくて涙ポロポロ…。
世界中が「分断」に向かいつつある今だからこそ、異なる音楽が愛し合い奏でるメロディには大きな意味がある。
とにかく必見! しかも9月にはサッチャルが初来日! 東京にいながらラホールへ往けるとはなんと贅沢なんだ。

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『歌声にのった少年』

ムリだ…堪えられなかった。劇場でこんなに泣いたのは久しぶり。お客さんが少なくてよかった。(よくねぇだろ!)
「世界は醜いけどあなたの声は美しい」 ホントに世界は醜いけどこういう映画を観ると希望はまだ棄てられない。
2013年にエジプトで人気の勝ち抜き歌番組で優勝し、アラブの希望の星となったパレスチナはガザ出身の歌手、
ムハンマド・アッサーフの実話を描いた、珠玉の子供映画にして胸が熱くなる青春ドラマにして最高の音楽映画。
これほど希望の星という言葉が似合う人もいないってぐらい、その物語はガザの現実が酷すぎるだけに感動的。
ハニ・アブ・アサド監督の奇をてらわない演出もストレートに胸を打ち、随所に彼の地の苦難を感じさせながらも、
そこをことさらには強めずそれだけはホントのアッサーフの歌声に平和への普遍的な願いを込めて説得力抜群。
クライマックスはわかっちゃいるものの当時の映像の効果も相まり実に比類なきカタルシスを体感させてくれる!
音楽で世界は変えられないかもしれないけどしかし文化は醜い現実と闘う最も強く美しい手段だと教えてくれる、
まさしく音楽つながりで 『ソング・オブ・ラホール』 と並ぶ本年ベスト入りの傑作! もう予告篇だけで涙が出る…。

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『淵に立つ』

凄い…凄すぎる。非の打ちどころがないだなんて容易に言うもんじゃないけどホントにないんだもの仕方がない。
こんな淡々としてるのに昂奮しすぎて息切れがしばらく止まらなくなるなんてとんでもない映画を観てしまった…。
ある平凡な家族の前に1人の男が現れたことでそれまでの日常が歪んでゆくというヘタをしたら退屈そうな話が、
こんなストレートに面白い超一級のサスペンスにして、胸を揺さぶられる超緻密な人間ドラマになってしまうとは。
今日びの赤裸々な映画よろしく過激な性愛描写や血がドバドバ流れるような暴力描写があるワケでもないのに、
一つ一つの場面に尋常ならざる緊張感が張り詰め、映画的磁力に溢れて一瞬たりとも目を離すことができない。
まるでカラーなんだけど昔の白黒の北欧映画や、『狩人の夜』 でも観たかと思うような後味悪くも抗い難い余韻。
今年の日本映画は確かに好調だけどここまでの映画的快感に酔える作品はまったく久しぶりという気がする…。

『クリーピー』 の香川照之さえ越える浅野忠信がなにしろ怪演で前半は彼の一挙手一投足に心を掴まれっ放し。
そして一気に時間が経つ後半も彼演じる八坂の“影”が物語を支配するかのような雰囲気で進むのがまた凄い。
ほかの役者も概ね好演ながら筒井真理子はとくによく彼女演じる章江は個人的に“人妻オブ・ザ・イヤー”決定!
とにかく、『クリーピー』 や 『葛城事件』 や 『ヒメアノ~ル』 以上にヘビーな話をある種の寓話性を漂わせながら、
赤裸々な場面をなしに描いて“何にすがればいいのかわからない”この社会の絶望感を表現しているのが偉い。
深田晃司監督の映画は初めて観たがこの人はきっと映画を徹底的に勉強した努力型の天才ではないかと思う。
ギャーギャー叫んでワンワン泣いてそれで“怒○”とか言ってるどこゾの邦画はこれを前に顔を赤らめるがよい!
単に面白い上に“業”について考えさせられるこれをベストに入れないなどもはや考えられないレベルの傑作だ。

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『この世界の片隅に』

よく大切な何かを表現する時に「かけがえのない」という言い方をするけれど
それをここまで真綿に水が沁み込むように感じさせてくれる映画は初めて…。
と言いつつ最近本作と同じ印象を得たのが山形ドキュメンタリー映画祭で観た
イラク戦争開戦前の市井の人々の素朴な日常を描いた『祖国―イラク零年』。
この映画でもかけがえのない日々が戦争に蝕まれてゆく過程が痛ましかった。
そんな風にドキュメンタリー映画を連想したのもそれだけ本作が普遍的な証。

とにかく戦争中の庶民の暮らしを肌理細かい丁寧なタッチで素晴らしく描いた
要は“それだけ”の映画かと思っていたら何もかもがそれ以上に面白くて驚き!
映画としてまずは存分に笑わせ驚かせながら日常が戦争に侵されてゆく感覚を
ここまでリアルに体感させるんだものもう本当に凄いとしか言いようがない。
のんの演技も完璧のひと言で苛酷な現実を生きる役柄との違和感が微塵もなく
もはやその声をずっと聴いていたいと思うほど映画を包み込んでいて圧倒的!

いろいろ悲しかったと思うけど、あの若さで早くもTVドラマと映画の双方に
後まで語り継がれる代表作を持っている女優なんて彼女以外に今誰がいよう?
何気ない日常の描写にこそ涙腺を刺激され、生きている実感をかみしめる…。
昨今の世界を取り巻く状況にまったく希望を感じられなくなっていたんだけど
ようやく自分にもまだできることがあるかもしれない…とそんな気になれた。
ありがとう。この歪んだ世界の片隅にこんな素晴らしい映画を届けてくれて。

しかし、昨年の『野火』も然りで、こういう映画がクラウドファンディングや
自主製作でしか創れず、またメジャーなメディアで紹介すらされないこの国が
この国の映画を取り巻く状況が悲しくて悲しくてボクはとてもやりきれない…

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『栄光のランナー 1936ベルリン』

何がオリンピック開催のメリットは国威発揚だそんな言葉今ドキ聞くとは思わなかったよオマエはナチスかボケ!
この映画でもオリンピック憲章が何を謳ってるかちゃんと言っとるだろうが豆腐の角で頭ぶつけて死んでしまえ!
もう腹立つ! …とまぁそんな気持もあったゆえかめちゃくちゃいい映画だった! 今年のベスト入り確実の傑作!
そして劇中にも登場するレニ・リーフェンシュタールのドキュメンタリー 『レニ』(これも大名作!)と一緒に観たい!
本作はナチス政権下で開かれた1936年のベルリンオリンピックで4つの金メダルを取るという偉業を成し遂げた、
アメリカ人陸上選手ジェシー・オーエンス(初めて知った)の雄姿を綴った今こそ観るべき胸アツ必至の伝記映画。
当時の緊張感漲る国際情勢と、レースの間だけは人種や地位から解放されるつまりは“10秒の自由”のために、
来る日も来る日も走り続けた彼の人生が見事相まった、まさに金メダル級のカタルシスを得られる人間ドラマだ。

映画はオーエンスと彼を支え続けた白人コーチとの友情を軸に進んでゆくんだけど、それ以上にグッとくるのが、
後半で描かれるナチズムに抵抗したがためのちに前線に送られたというドイツの走り幅跳びの選手との友情で、
そこじゃ最近話題となった“優生思想”もきちんと批判されているし、しかも最後もアメリカ万歳にはなっておらず、
80年前の話が差別や分断が当たり前と化しつつある“今”の世界の状況に向けて語られているのが素晴らしい。
正直「酷い!」っていうラストなんだけど少年との小さなやりとりがそれをわずかに救いもう涙腺は弛みっ放し…。
そして創り手が同じ映画作家としてレニに温かい共感を寄せているところも実によかった!(ぜひ 『レニ』 を観て)
そらスポーツだから1等賞目指してやるのは当然だけどそれ以上に大切なことがあるから4年に1回やるんだろ?
ホント、国威発揚なんてそんなもん掲げてやるくらいなら今からでも遅くはないオリンピックなんかやめてしまえ!

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『緑はよみがえる』

さ、寒そう…。いっそモノクロの方がよほど暖かみを感じられそうな、だけど、息を呑むほどに凄まじい映像美…。
第一次世界大戦下の北イタリア・アジアーゴ高原を舞台にイタリア軍兵士たちの苛酷な運命を描いた戦争映画。
その孤高の作家性においてまさに塚本晋也監督の 『野火』 と対をなす巨匠エルマンノ・オルミ監督の最新作だ。
直接的な戦闘シーンこそないが戦争の“地獄”とは本当にこういうものなのだろうと思わせる漆黒の静寂の中で、
ただいつ死ぬかわからない恐怖に怯える兵士たちの絶望だけが生々しく伝わってくるこんな映画は滅多にない。
先の見えない戦況に昂揚感などとっくに失せ、神も未来ももはや信じられず日に日に募るのは悔悟の念ばかり。
そして目の前の雄大な自然を見て人はようやく気づくのだ。自分たちはなんて愚かなことをやっているのか…と。

もちろん、彼らにそんな愚かなことをやらせているのは自分では決して戦場に行かない卑劣極まる権力者たち!
上映時間が76分と短めだからといって侮るなかれ。アンジェイ・ワイダと並ぶヨーロッパ最大の巨匠が醜い戦争、
そして過ちをすぐに忘れ去って同じことを繰り返す人間の愚かさに熱く静かな怒りを叩きつける途轍もない傑作。
最後に若き中尉が母への手紙にしたためる「人が人を赦せなければ人間とはなんなのでしょうか」という一文と、
監督がかつて出逢った羊飼いの「戦争とは休む事なく大地をさまよう醜い獣である―」という言葉が胸を打つ…。
本作を観た日はそのまま 『レヴェナント』 を観に行くつもりだったけどもう無理だった…。完全に打ちのめされた。
戦争に行かなくてもすむ時代に生まれて本当によかったと思う。そんな時代が決して終わらないように…。必見。

torneranno-i-prati

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『ソニータ』

ホント今年の音楽ものは傑作だらけだな。本作もまた 『ソング・オブ・ラホール』 や 『歌声にのった少年』 と並び、
音楽で世界は変えられないかもしれないけど、揺さぶることなら確実にできると心の底から思わせてくる大傑作。
ラッパーを夢見るイランに暮らすアフガニスタンの難民の少女が、女性が音楽を創ることに厳しい慣習を越えて、
自作の曲を世界に発信、ついにはアメリカへ渡るまでを追ったヘビーな話だけど希望に充ちたドキュメンタリー!
もはや生まれながらのラッパー顔に見えるその少女ソニータがスプーンをマイク代わりに自作のラップを披露し、
それに合わせてヒジャーブ姿の幼い女のコたちが愉しそうに踊るオープニングからもう心をつかまれること必定。
実はこの映画は8月の頭にNHKのBSで50分の短縮版が放送されているんだけど、そのカットされていた40分に、
世界の理不尽さや彼女がどれだけの困難と幸運を得て向こうにたどり着いたかが描かれ、何度も胸が熱くなる。

なにより本作がいいのはソニータのラップが純粋かつ抜群にカッコいいこと!(プロのアレンジを受けたとはいえ)
こんな世界の理不尽に対する怒りと祈りに充ちたラップを聴くのは初めて。(まぁ普段はラップに興味ないけど…)
ソニータの親兄弟や、イラン人の女性監督ほか彼女を支える周りの人たちとのドラマにもいろいろ考えさせられ、
排外主義が再び世界を覆いつつある今、いかにわかり合える者同士で手を取り合うことが大切かを教えられる。
ソニータの歌自体も泣けるけど、彼女の妹が姉の渡米期間が思いのほか長いと知って泣く件なんてもうムリだ!
ただ逆に彼女の存在がアフガニスタンにも知れ渡って家族が嫌がらせされないかとそれが少し心配にもなるが。
とにかく短縮版を観た時もめちゃくちゃ感動したけど全長版はもちろんそれ以上の感動! すごく勇気をもらえる。
ソニータが里帰りする件で映るアフガニスタンの風情も廃れているとはいえ旅情を煽られた。いつか旅がしたい。

sonita

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『エクス・マキナ』

90年代ミニシアター全盛期の頃だったら確実に今はなきシネマライズで半年はロングランしていたであろう映画。
いやぁーこれは面白いワ! 文句なしの傑作! どころか、久々に今年のベスト10に喰い込みそうな映画を観た!
もう、『スター・ウォーズ』 のようなタイプの作品に全然興味のないボクみたいな輩でも充分愉しめるSF映画だし、
知的だとか哲学的とかいうフレコミに身構えずとも難解さなどは皆無で“上品にいかがわしい”から絶対面白い!
ド派手な戦闘シーンもアクションもないただ人間とAIのカケヒキを描いただけの映画がこんなに面白いなんて…。
なにより、仄かな緊張感とともに全篇に漂う“エロチシズム”が素晴らしいし、スリラーとしての牽引力も確かなら、
人間の実存や感情の根源とは何か?という古典的なテーマも現代の重要な問題として深々と考えさせてくれる。
精緻な映像も無機質なものを美しく…というよりは産毛の1本1本までリアルに撮るような質感でしっとり艶かしく、
観客の安易な予想など裏切りつつも決して突き放すことなく様々な解釈を呼び起こすこういう終わり方も大好き。
娯楽性と芸術性をバランスよく併せ持った真に見事なSF映画としか表現のしようがない。本当に面白かった…!
あーボクも人里離れた山の中でエッチな体したAIと暮らしたい!(どちらかといえば痴女っぽいキョウコさん指名)
そして触んないけど“表情より下心を読み取ってもらってそれを言葉に出してもらうプレイ”を毎日したい!(変態)

exmachina

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『夢の女 ユメノヒト』

40年間、精神病院に入院していたものの震災で避難している内にとっくに完治していたことがわかった男・永野。
浦島太郎状態の彼はしかしただ1人忘れずにいた“初めての女性”に逢うため彼女の避難先の東京に向かう…。
『バット・オンリー・ラヴ』 で奇蹟の監督復帰を遂げた佐野和宏監督、もう1本の作品は大人の官能ラ“ヴ”ロマン。
もう大当たり…。『乃梨子の場合』 の監督なのである程度信頼はしていたけどよもやこれほど素晴らしいとは…。
なんとロマンチックで、人生の侘しさ、やるせなさに充ち、しかし切なく胸の温まる珠玉のラヴストーリーだろう…。
原発事故云々がストーリーに込められているのでそこがネックかと思っていたがそんなのはまったく杞憂だった。
むしろ、震災以降のこの国に漂うどこかオカしな空気をこんなに巧く物語に託した映画は稀なんじゃなかろうか?

もうファースト・ショットから胸がキュンとしてヤバイと思っていたけど、永野と西山真来が彼の駅で別れるシーン、
そして、初めての女性と再会してからの故・伊藤猛が“特別出演”を果たすカラオケのシーンでもう涙ボロっボロ。
2人がラブホテルの1室で想い出を作り変えるシーンの長回しは、マジで邦画史に残る屈指の名場面だと思う…。
どこか諦めを湛えながらもそれでも「人生は悪くない」と静かにしめ括るラストにコチラこそ心から「ありがとう」だ。
なにしろ一つ一つのシーンが愛おしくてたまらない、これゾ映画に人生を懸けている(きた)者たちの“愛”の結晶。
くしくも今ネットで日本映画について話題だけどどうかこういう小品を観ずに邦画はレベル云々と言うことなかれ。
間違いなく今年のベスト10選出は確実の傑作。ボクはこんな映画に出逢いたくて日本映画を観続けているのだ。

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